火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
《採点編》、本格始動です。(そんな大仰なもんでもないかw)
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―1―
「おぅ、帰ったぜー。」
「ただいま。」
「ただいまです〜。」
「ただいま・・・。」
「・・・・・・。」
「やっふ〜。皆、遅かったね。」
宿題を終え、次々と寮に戻ってきた霊使い達を、一足早く帰って来ていたウィンが、笑顔で出迎えた。
「『遅かったね』じゃねーよ。こちとら、死ぬ思いだったんだぜ?」
言いながら、ベッドにゴロンと大の字に寝っ転がるヒータ。
「そう言う君こそ、随分と早く戻って来てた様だね。」
そう言って、大きな旅行バッグからお土産(古の森駅銘菓・パンプキング饅頭)を出してウィンに渡すアウス。
ウィンは「わー、ありがとう。」などと言いながら、さっそくビリビリと包装紙を破って箱を開けると、中身をパクつく。
「んむ、ふぁふぁふい、ふぁふぃとふぃふぁふふぁったはら・・・」
「・・・もの食いながら、喋んじゃねーよ。」
ヒータに注意され、ウィンは急いで口の中の物を飲み込む。
「プハッ!!うん。わたし、意外と近場だったから。四日目くらいには帰って来てお昼寝してた。」
それを聞いたアウスが、ハハッと笑う。
「君は実に馬鹿だなぁ。せっかく先生公認で長期の休みがとれたのに、それを昼寝なんかで潰すなんて。人生は有限なんだよ?もっと有意義に使うべきだと思うけどね?」
「んな余裕あったの、オメーだけだよ・・・。」
ベッドに埋まりながら、ボソリともらすヒータ。
「んー、でも、一生の間に出来るお昼寝の数もきっと限られてるし、それはそれで、有意義なんじゃないかなー?」
ウィンはそう言って、また一つ饅頭をほうばる。
それを見て、アウスは苦笑する。
「全く。ブレないね。君は。まぁ、らしいと言えばらしいかな?」
そう言われ、ウィンはカボチャ餡のついた顔でニパリと笑った。
―と、
「ダルクー!!いっしょにいこうっていったのにー!!おいていくとはどういうりょーけんですか〜!?」
「・・・ああ、もう。朝っぱらからからむなよ・・・。・・・お前の声は甲高いんだ・・・。・・・中耳炎にでもなったら、どうしてくれる・・・。」
突然の声に、皆の視線がそちらに向かう。
見れば、鬱陶しげに顔を逸らすダルクに、眉を吊り上げたライナが(文字通り)絡み付いている。
「・・・離れろって・・・!!」
「いやです〜!!」
「何だようるせーな。こちとら夜通し歩いて来てクタクタなんだよ。少し静かにできねーのか?」
言いながら、ベッドから起き上がったヒータが二人に近づき、ダルクからライナをベリッと引き剥がす。
「姉弟ゲンカなんざ、オレの相方も食わねーぞ。一体、どうしたってんだよ?」
「ああ、ヒータちゃん!!」
瞳をグルグル回したライナが、ズズイッと迫る。
ヒータ、ちょっと引く。
「きいてくださいよー。ダルクったらいっしょにいくってやくそくしたのにー。ライナのことおいてひとりだけでいっちゃったのです!!ひどいとおもいませんかー?」
「・・・お前、あそこで断わったら、OKするまで張りついてきただろ・・・?ウザい事この上ないから、適当に茶を濁したんだよ・・・。」
はぁ、と溜息をつくダルク。本気で嫌そうな顔である。
「な、なんですとー!?つまりはなっからだますきでしたか!?かくしんはんですかー!?おかげでライナたちがどんなめにあったとー!!」
グルグル回る目。ついでにアホ毛も回る。
「・・・やっぱり、何かトラブルに巻き込まれてたのか・・・。」
ますます嫌な顔をするダルク。
「うそつきはじゅうざいですよー!!そんなわるいこはさうざんど・にーどるまるのみのけいですー!!」
「・・・お前が黙ってくれるなら、針二千本(ツーサウザンド・ニードル)でも針三千本(スリーサウザンド・ニードル)でも呑んでやるよ・・・。・・・この電波式トラブルメーカー・・・。」
「そのいいよう、はんせいしてないですねー・・・しかたないです。こうなったら"あれ"をするしかないようです。」
「・・・え゛・・・!?」
その言葉を聞いた途端、ダルクの顔が青ざめる。
「ちょ、ちょっと待て!!"あれ"って、"あれ"か!?」
「ほかになにかありますか?"あれ"といったら、"あれ"にきまってますー。」
「ま、待て待て待て!!分かった、謝る!!謝るから、"あれ"だけは止めろ!!」
しかし、ライナはその言葉を無視し、ジリジリとダルクに迫る。
「だめですー!!おねえさんをだますようなおとうとに、きょひけんはありませーん!!」
「いや、双子だし!!姉とか弟とか関係ないから・・・って、ちょ、おm・・・ 勘弁してくれ!!」
ダルクは助けを求めてヒータを見やるが、今しがたまでそこにいた筈のヒータの姿がない。見れば、いつの間にか安全圏(ウィンやアウスの隣)まで退避したヒータが、苦笑いを浮かべてこっちを見ていた。
「・・・ま、身から出た錆ってやつだな。今日の処はあきらめな。」
「・・・う、裏切り者・・・!!」
「にゃはははは、ひごろのおこないがものをいうです!!さぁ、かくごするです!!」
手をワキワキと動かしながら、ライナが迫る。
無邪気な笑顔であった。
不気味なほどに。
そして―
ゴネッゴネゴネゴネッ
メケケッメケメケメケッ
ゴニョルゴニョルッゴニョッ
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!」
怪音とともに、響き渡る悲鳴。
「うわー。相変わらず凄いね。ライちゃんの“あれ”は。」
「実に、天性の才能を感じるね。ぜひ一度、御教授承りたいものだけど。」
「・・・アウス(お前)は止めとけ・・・。」
などと言いつつ、事の次第を見守る三人なのであった。
しばし後―
「ふぃ〜。こんかいはこのくらいにしといてやるです。」
清々しい笑顔を浮かべたライナが、額の汗を拭いながら、床にうつ伏せに転がったダルクにそう言った。
ダルク、無言。
時々、ピクピクと痙攣する様が嫌な不安をさそう。
「やっぱり、“あれ”はいいですね〜。たましいがあらわれます。・・・ん?たましいといえば・・・」
ライナは何かを思い出したかの様に、キョロキョロと周囲を見回す。
「どうしたの?ライナちゃん。」
饅頭をくわえたまま、ウィンが尋ねる。
「エリアちゃんはどこでしょう?おはなししたいことがあるんですが・・・。」
「あれ?そういやあいつ、どこ行った?確かいっしょに帰って来てたよな?」
ヒータもそう言って、辺りを見回す。
「エリア女史なら、そこにいるよ。」
「え?」
「はい?」
「ん?」
アウスに示された方向を、全員(ダルク除く)が見る。
途端―
ずぅ〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・
重く、暗い空気が全員を圧倒した。
見れば、エリアが部屋の隅で両膝を抱えて小さくなっている。
「エ・・・エリア?」
「ど・・・どうしたですか?」
「も、もしもし?もしも〜し?」
皆の呼びかけにも、エリアはまんじりとも反応しない。
完全に、自分の世界に埋没しているらしい。
「ど・・・どうしたんだろう?」
「あのエーちゃんが・・・」
「何か、よっぽど気にかかる事があるみたいだね。」
「・・・気にかかる事ってなんだよ?」
「そうだね。例えば・・・」
ヒータの問いに、アウスは少し考えて、
「“宿題”を完遂出来なかったとか・・・」
「―――――っ!!?」
その言葉に反応した様に、エリアがビョンと跳ね起きた。
びびる一同(アウス除く)。
「な、ななななな、何言って、言ってんの!?そ、そそ、そんな訳、なな、ないじゃない!!」
「おや、違うのかい?」
「あ、あああ、当たり前でしょでしょ!!こ、ここ、このあたしに限って、そそ、そんなこと・・・つ、つつ、捕まえたわよ!!ド、ドラゴン!!そ、そりゃーもう、す、すす、凄いのを!!凄いんだ、だから!!も、もう、皆、見たら、(ピー)を(ピー)しちゃうんだから!!」
呂律の回らない舌で、怒涛の様にまくし立てるエリア。
一同、唖然。
そんな中、アウスは一人、薄笑みを浮かべる。
「へぇ、それは楽しみだ。」
「そ、そうよ!!期待してて、ちょうだい!!」
「だよね。先生の“おしおき”の怖さは周知のことだし。宿題出来ませんでしたなんて言ったら、それこそどんな目に合うか・・・。」
その言葉に、青ざめるエリア。
「どうしたんだい?顔色が悪いよ?大物捕まえて、疲れたのかい?」
クスクス笑いながらそう言うアウスに、エリアはブンブンと頷いた。
と、その時―
コンコン
部屋に響く、ノックの音。
あからさまにビクッとするエリア。
「はい。どーぞー。」
ウィンが、戸の方に向かって答える。
部屋の戸がキィ、と開く。
顔を出したのは、プチリュウ始めとする各使い魔たち。
皆の帰還報告をしに、ドリアードの所に行っていたのだ。
『皆、広場に集合だって。さっそく採点を始めるみたいだよ。』
皆の間に、走る緊張(一部除く)。
各々が準備をし、使い魔達をつれて部屋を出る。(ちなみにダルクは伸びたまま、ライナにズルズルと引きずられていたりする)。
皆がそれぞれの思いに浸りながら歩く中で、アウスはチラリとエリアを見る。
ローブから除く足が、ガクガクと震えていた。
それを見て、アウスはポソッと呟いた。
「本当に、楽しみだよ・・・。」
・・・運命の時が、近づいていた。
続く
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