月曜日。半分の月がのぼる空二次創作の日です。
詳しく知りたい方は例の如くリンクのWikiへ。
それではコメントレス
秋かなさん
この時期はいろいろな用事が重なって、2週間に1度ぐらいのペースになってしまっています。
前回と今回では原作でも目立った里香のデレの部分があり、ストーリーも日常的だけどそこがまたいい感じになっていました。
後編がんばってください。
お忙しい中、読んでいただいてありがとうございます。作者冥利に尽きます。
どうぞ今後もよしなに。
・・・デレた里香って可愛いですよね。
zaru-guさん
≪イビリチュア・ハイドレイス≫ (儀式効果モンスター)
☆6 水 水 ATK2500 DEF1800
効果:「リチュア」と名のついた儀式魔法カードにより降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、相手モンスターを任意の枚数選択する。
このカードは1度のバトルフェイズで、選択した全てのモンスターに1度ずつ攻撃することができる。
このカードが選択したモンスターを戦闘によって破壊する場合、墓地には送られず持ち主のデッキに戻す。
テキスト、キタ━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━!!!!
これで後はイラストに色つければ完成だー!!(喜)
例の如く、ニコ静にうpしますぜい♪
他のカードとの折り合いに苦労しました(笑)
イビリチュアは効果が一つだけというのが通例なようで、絞り込むのに時間がかかりました。レベルは最後まで迷いましたが、マインドオーガスと同じにして共演しやすくしました。
カード名のセンスになかなかスキが無い事に感心。「ヒュドラレイス」とは迷わなかった?
どうもご苦労さまです&ありがとうございます。
名前はこれを使うときに、女邪神としても有名な「ハイドラ」の方を使おうと決めていたので、あんまり悩みませんでしたね。言葉の組み合わせは「ガストクラーケ」や「リヴァイアニマ」に習って組みました。
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―6―
おばさんが帰ってきたのは、夜の8時も半ばを過ぎ、もう9時も近くなるという頃合いだった。
おばさんは、まず僕にお礼を言い、そして帰りが遅くなったことを詫びた。
話を聞くと、どうやら、頑張って仕事を明日の分まで片付けてきたらしい。
お陰で、上司は明日おばさんが休みを取ることを許してくれたそうだ。
つまり、明日里香は僕がいなくても一人にはならないという事だ。
それを聞いてホッとする僕と、安らかに寝息を立てている里香を見て、おばさんは「すっかり甘えちゃって・・・」とか言いながら、どこか嬉しそうだった。
その後、帰ろうとすると、おばさんに夕食を食べていくようにと引きとめられた。
遠慮しようとした途端、グウと腹が鳴ってしまった。本日二度目。おばさんが笑っている。全くもって、締まらない事この上ない。
結局、僕が夕食をごちそうになっていると、その間におばさんは僕の家に電話をして、事の次第を説明してくれた。
お陰で、僕は家に帰ってもお目玉を食わずにすむことになった訳だ。
電話の向こうの僕の母親に、「本当にお世話になりまして」などと頭を下げるおばさんを見て、勝手に押し込んできた身としては非常に恐縮だった。
夕食を食べ終わって、今度こそ僕が帰ろうとした時、里香が起きてきた。
「起きてきて、大丈夫なのか?」
「うん。寝たら、少し楽になった。」
そう言う里香の顔色は、確かに少し良くなっているように見えた。
「裕一、帰るんだ。」
「ああ、明日も学校だし。流石に、二日続けてサボる訳にはいかないからな。」
「・・・だよね。」
そう呟くと、里香は寂しげに顔を伏せてしまった。
思いがけない反応に、僕の方が焦ってしまう。
「何だ?ひょっとして寂しいのか?」
照れ隠しにそんな事を言うと、今度は里香の方が焦ったらしい。
「そ、そんな訳ないでしょ!!」
「うはは、いいぞ。照れなくても。そーかそーか。オレがいないと寂しいか。」
「うるさい!!調子にのるな!!バカ裕一!!」
顔を真っ赤にして喚き散らす里香。この調子なら、明日一日休めば完全回復だろう。
「分かった分かった。それじゃ、帰るから。」
「・・・うん。」
「ちゃんと、夕飯食べるんだぞ?」
「分かった。」
「しっかり寝ろよ。」
「うん。」
「オレがいなくても、泣くんじゃないぞ?」
「もう、うるさいから!!さっさと帰れ!!」
僕はうはは、と笑いながら、苦笑いしているおばさんに挨拶すると玄関の戸を開け、外に出た。
外に出ると、梅雨の合間か空は晴れ、たくさんの星と大きな半月が浮かんでいた。
そんな空の下、のんびりと自転車を流していた僕はふとさっきの里香の態度を思い出した。
今まで、例えば学校の帰りなんかで僕と別れる時には、あんな顔をした事はない。
それが、今日はいったいどうした事だったのだろう。
まあそれに限らず、今日一日の里香はずっとそんな調子だったのだけれど。
午前中の、あのまどろみの間に見た夢の後から、里香はまるで入院していた時に戻った様だった。
随分と戸惑わせられたものだけど、考えてみればそれは僕も同じだったかもしれない。
今日、里香に"あの頃"の様に散々わがままを言われて辟易しながらも、僕は心の何処かで嬉しかった。
それこそ、さっきおばさんに明日は来なくて大丈夫と告げられた時、ホッとした反面、どこか残念な気持ちを覚えるくらいに。
振り返ってみれば、僕らが退院して以来、こんな形で二人きりの時間を過ごすのは初めてだった。
僕らの気持ちの何処かに、"あの頃"を懐かしむ気持ちがあったのかもしれない。
確かに、"あの頃"は毎日が恐怖に近い不安の連続だったし、戻りたいかと訊かれれば、正直御免だ。
里香だって、そうだろう。
だけど、こんな事言うと不謹慎かもしれないけれど、“あの頃”の僕達は今とは違った意味で一つだった。
学校や、家などに隔てられる事なく、一つの空間の中で一緒に過ごしていた、あの時間。いつ訪れるかも知れない破滅に怯えながら、それでも世俗から切り離された時間の中で、里香は子供の様に僕に甘え、僕はただ、彼女の事だけを考えていた。
・・・甘かった。
そう。確かに、あの時間は甘かったのだ。
それこそ、今日里香が微熱に浮かされながら見たという、あの夢の様に。
微熱という不安定に浮つく世界の中で、まどろみながら見る夢。
あの時間は、そういう時間だったのだ。
僕がそう思った瞬間、
ポツリ
額に冷たい感覚が走った。
まるで夢から引き戻されるかの様に、僕は我に返る。
見れば、さっきまで大きな半月が浮かんでいた筈の空は、いつしか厚い雲に覆われ、そこから大粒の雨が落ち始めていた。
ポツリ ポツリ ポツリ
まるで、愚考を抱いた僕を殴りつけるかの様に、雨は見る見るその強さを増してくる。
ザァアアアアアアー
「うひぃいっ!!」
瞬く間に滝の様になった雨の中、僕は慌てて自転車を漕いだ。
―7―
「―で、こうなった訳?」
「え、あ、まぁ・・・」
布団に横になった僕の傍らにすわりながら、制服姿の里香は呆れた様に溜息をついた。
「だから、早く帰れっていったのに。本当、馬鹿なんだから。裕一は。」
「あ、あのなぁ・・・。そういう言い様はないだろ?そもそもオレはお前のために・・・ッゲホッゲホゲホッ!!」
そこまで言った所で、僕は盛大に咳き込んだ。
「ああ、ほら。大人しく寝てなさいよ。馬鹿裕一。」
そう言いながら、里香が僕の背中をさする。
ピピッピピッピピッ
脇の下から響く電子音。挟んでいた体温計を取り出してみると・・・
8度7分。
微熱どころじゃない。立派な高熱だった。
里香の方はあれから順調に熱が下がり、三日間の休みの後には、普通に通学出来るまでに回復していた。
その代わりと言ってはなんだけど、それと交代する様に今度は僕が熱を出してぶっ倒れた。
原因は里香にうつされたのか、それとも雨の中ずぶ濡れで帰ったせいなのかは定かではない。
ただ、僕の方は里香のそれよりも重症で、8度台の高熱が続いていた。
ううむ。これはあの時不謹慎な事を考えた罰かもしれない。
熱で煮立った頭でそんな事を考えていると、不意に額が冷たい感触に包まれた。
「うわ、あっつい。」
僕の額に手を当てた里香が、そんな声を上げた。
「薬、飲んだの?」
「さっき、飲んだ。」
「じゃあ、寝なよ。寝れば、そのうちに薬が効いて楽になるから。」
汗ばんだ額を撫でながら、里香が言う。
「熱っぽくて、寝れないんだよ・・・。」
僕が情けない声を出すと、里香がはぁ、と溜息をついた。
「仕方ないわね。じゃあ、子守唄歌ってあげるから。」
はい?
ポカンとする僕に、里香が言う。
「子守唄。歌ってあげるって言ってるの。」
「え?あ、い、いいって!!そんなの!!」
「何で?」
「何でって、その・・・何かかっこわりぃし・・・」
「そんな事、言ってる場合じゃないでしょ。」
そんな言葉とともに、視界が暗く閉ざされる。
里香の手が、アイマスクの様に僕の目を覆っていた。
火照った身体に染みる、彼女の体温。
それを冷たく、心地よく感じるのは僕の体温が高いからだろうか。
「ほら、大人しくしてなさい。」
暗く閉ざされた視界の中で、里香の声が聞こえた。
そして、その声がゆっくりと歌を紡ぎ出す。
「♪・・・ゆりかごの歌を カナリヤが歌うよ・・・♪」
暗い視界の中に響くその声は、気のせいかいつもよりも透き通って聞こえた。
「♪ねんねこ ねんねこ ねんねこよ・・・♪」
涼やかな歌声が、熱に茹だった頭を癒していく。
「♪ゆりかごの上を びわの実が揺れるよ・・・♪」
やがて、それまで苦痛でしかなかった熱感が、心地よい陶酔へと変わり始める。
甘い、この上もなく甘い陶酔だ。
それは、里香の歌のせいなのか。
それとも、薬のせいなのか。
「♪ねんねこ ねんねこ ねんねこよ・・・♪」
・・・いつしか、僕の意識は白いベッドの上に横たわっていた。
里香と“あの頃”を過ごした、若葉病院のベッドだ。
「♪ゆりかごの綱を きねずみが揺するよ・・・♪」
ベッドの上でまどろむ僕の傍らには、椅子に座った里香がいる。
まるで、“あの時”の様に。
「♪ねんねこ ねんねこ ねんねこよ・・・♪」
他に誰もいない、僕達だけの空間。
優しく響く、子守唄。
意識が、その声へと溶け始める。
甘い、甘い陶酔。
・・・この時を、愛しく思う事は罪だろうか。
「♪ゆりかごの夢に 黄色い月がかかるよ・・・♪」
許される事ではないかもしれない。
けれど、今この時だけは、この甘さにおぼれさせてほしい。
眠りに落ちる瞬間、僕は薄っすらとそんな事を考えた。
・・・場所は戎崎家。戎崎裕一の部屋。
その真ん中に敷かれた布団の中で、戎崎裕一は静かな寝息を立てていた。
「♪・・ねんねこ・・ねんねこ・・ねんねこよ・・・♪」
その寝息に寄り添う様に響くのは、涼やかで優しい歌声。
昏々と眠る戎崎裕一の頭を撫でながら、秋庭里香は子守唄を歌っていた。
誰も聞く者がいなくなった部屋の中。
それでも、秋庭里香は歌い続けた。
まるで、それを止めれば彼の夢が覚めてしまうとでも言うかの様に。
秋庭里香は歌い続けた。
いつまでもいつまでも、歌い続けた。
終り
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