火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
霊使い最後の一人、光霊使いライナの出番となっています。
例によって作者個人のイメージによるキャラ付けとなっていますので、その所御了承願います。
遊戯王カード 【 イビリチュア・ソウルオーガ 】 DT10-JP035-SI 《デュエルターミナル−インヴェルズの侵略》 新品価格 |
―13―
「・・・何を・・言ってる、ですか・・・?」
ライナの問いに、ソウルオーガはほくそ笑む。
「先ニモ言ッタガ、ワシラハ少数勢力デナ、常日頃カラ人材不足ニハ悩マサレテオル。現ニ、今モ四人失ッタバカリジャ。」
太い指が、愛撫する様にライナの顎を撫でる。
氷の様に冷たいその感触が、ライナの背筋に怖気を走らせた。
「オ主ノ様ナ術者ナラ不足ハナイ。精進スレバ後ノ幹部候補モアリエヨウ。」
「・・・・・・。」
返事をしないライナに、ソウルオーガは胸の儀水鏡を指し示す。
「コノ儀水鏡ノ力、見タデアロウ?オ主ガソレホドノ代償ヲ払って得タノト同等の“力”ヲ、何ノ苦痛モナク手ニスル事ガ出来ル。」
「・・・何の、苦痛もなく・・・?」
痛みに引きつる喉を無理やりに歪ませ、ライナは皮肉めいた声を出す。
「・・・仲間や・・・罪もない命を代価に使う術の・・・何が、“苦痛もなく”ですか・・・!!」
「ヤレヤレ、マタソレカ・・・。」
そう言って、ソウルオーガは大げさに溜息をつく。
「分カラヌ娘ジャ。弱者ガ強者ノ糧ニナルハ世ノ理。万物全テノ事象ニハ、ソレニ応ジタ対価ガ必要。オ主ノ術トテ、ソウデハナイカ?」
「・・・!?」
「対価ニスルガ、他者ノ命カ己ノ命カ、ソノ違イダケ。ソウデアロ?」
「・・・・・・。」
無言のライナの頬を、鋭い爪がツツ、となぞる。
「受ケ入レヨ。ドンナ綺麗事ヲホザコウト、ソレガ我等術者ノ真理。ナレバツマラヌ戯言ナド捨テ、共ニ真理ノ追究ニ興ジヨウデハナイカ。“力”トイウ真理ノナ。」
「・・・・・・。」
ライナは何も言わない。ただ杖を握る手にギュッと力がこもっていく。
「・・・例え・・・」
「ウン?」
「例えそれが真理でも、ライナは御免です!!」
叫びと共に、杖をソウルオーガの儀水鏡へ向かって突き出す。
眩い光に包まれる杖。最後の力を凝縮した、正真正銘、最後の一撃。
しかし―
ルォンッ
杖と儀水鏡の間の空間が、波紋の様に揺らぐ。
―反衝魂―
パキィンッ
「キャアッ!!」
反射した自身の力を受け、ライナは大きく弾け飛んだ。
「ソレガ答エカ・・・。」
ソウルオーガがゆっくりと立ち上がる。
「ナレバ仕方ナイ。汝モ我ガ力ノ糧トナルガイイ・・・。」
太い腕が、倒れ伏すライナにゆっくりと伸びる。
「愚カナ娘ヨ・・・。己ガ不明ヲ呪エ・・・。」
猛禽のそれの様に開いた爪が、ライナにかかろうとしたその時―
『ライナ!!』
その腕に、ハッピー・ラヴァーが飛びかかる。同時に他の面々も攻撃を仕掛けるが、尽く歪む空間に弾き返され、ライナ同様に地に転がる。
「グポポポポ。涙グマシイノォ。オ主ラトテ、ソノ小娘二巻キ込マレ、利用サレタ口デアロウ二。」
満身創痍になりながら、それでも齧りついてくるラヴァー達をカトンボの様に叩き落しながら、ソウルオーガは嘲る。
『違う!!』
ライナを守る様に、ボロボロの翼をいっぱいに広げながらハッピー・ラヴァーが叫ぶ。
『ボク達は仲間だ!!友達だ!!使役されたからここにいるんじゃない!!皆、自分の意思でここにいるんだ!!リチュア(お前達)なんかと一緒にするな!!』
ラヴァーの言葉に呼応するかの様に、他の皆が集まりライナの周りにスクラムを組む。
「ラヴ君・・・みんな・・・」
「・・・フン。全ク持ッテ鬱陶シイ連中ジャ。マァ良イ。ナラバソノ望ミ通リ、仲良ク一緒二、我ガ糧ニナルガ良イワ。」
ソウルオーガの胸の儀水鏡が、ライナ達の姿を映す。
「コレデ、終リジャ。」
儀水鏡が妖しい光を放つ。そして―
「―“終わるのは、お前の方だ”―」
「ヌ?」
『ライナ・・・!?』
その場の全員の視線が、その少女に集まる。
「―“ここは聖域”―」
「―“命を奪う事は、許されぬ場所”―」
「―“お前達は、それを破った”―」
「―“報いを、受ける事になる”―」
「・・・何ヲ言ッテオル・・・?」
訝しげに問うソウルオーガに、ライナは答える。
「・・・ライナの言葉じゃありません。“彼”の言葉です。」
そう言って示す方向にいたのは―
『エレメント・ドラゴン・・・?』
ポカンとする皆の前で、件の竜はゆっくりと頷いた。
『ライナ・・・アイツの言葉が・・・』
「はい。分かります。分かる様に、なりました。」
そう言って、ライナは微笑むと改めてソウルオーガに向き直る。
「いいんですか?あなた、ここにいると何か怖い目に会うみたいですよ?」
「何ヲ訳ノ分カラヌ事ヲ・・・!?」
ライナの忠告を鼻で笑ったソウルオーガの背筋が凍った。
不意に襲いかかってきたのは、それまで感じた事もない、強烈なプレッシャー。
“誰か”が見ている。
何か、とてつもない“存在”が。
慌てて振り返ったその視界に映ったのは、己を見つめる七頭のモンスターの姿。
七頭、それぞれの身体には、美しく輝く宝玉が光っている。
「宝玉獣さん達・・・?」
ライナが驚いた様に呟く。ここにいたモンスター達は、捕まった者以外、全て逃げてしまったものと思っていたのに。
「ナ・・・何ジャ。驚カセオッテ・・・。」
ソウルオーガが、上ずった声で言う。
「己等ノ様ナ雑魚ニ用ハナイ。サッサト去ネ!!」
言いながら、彼は気付いていた。あれほど“資源”にこだわっていた自分が、目の前のモンスター達にはその食指が全く動かない事に。それどころか、この自分より遥かに矮小な筈のモンスター達に、強烈な忌避感を覚えている事に。
「去ネト言ウテオル!!」
ギョォオオオオオオオッ
吼える。精一杯の威嚇の意を込めて。
しかし、“彼ら”は微塵とも動じない。
ただジッと、彼を見つめるだけ。
「ウ・・・ウゥ・・・!?」
そのプレッシャーに、彼が思わず後ずさったその時―
『汝は、禁を侵した。』
胸に藍色の宝玉を持った白豹が言った。
人間の、高き智あるものの言葉だった。
『この地は聖域。』
甲羅を緑色の宝石で飾った亀が言った。
『全ての命が、変わらぬ庇護を得るべき場所。』
額に橙色の宝珠を頂いた象が言った。
『その地で、汝らは命を奪った。』
翼に、蒼色の宝玉を輝かせる天馬が言った。
『それは、罪である。』
首に、黄色の宝珠を持った白虎が言った。
『確かなる、罪である。』
翼と胸に、紺色の宝石を飾った鷲が言った。
そして―
『罪は、贖われるべきである。』
尾に朱色の宝玉を頂いた小獣が言った。
「ウ・・・ウォオオオオッ!!」
圧し掛かるプレッシャーに耐えかね、ソウルオーガは宝玉獣達に襲い掛かる。
しかし―
カッ
宝玉獣達の姿が光を放つ。
「ぬぁっ!?」
「キャアッ!!」
先のライナが放ったものより、何倍も眩い光が煌く。
その光の中で、ライナは見た。
宝玉獣達の姿が、光の柱となっていく。
藍色。
緑色。
橙色。
蒼色。
黄色。
紺色。
そして、朱色。
七色の光の柱は一つとなり、虹色の竜巻となって天をうねる。
荒れ狂う、光の嵐。地に這う者、全てがなす術なく翻弄される。
天に踊る、白銀の帯。舞い散る、純白の翼。
クゥオオオオオオオオン
遥か彼方まで轟くのは、遠雷かそれとも咆哮か。
ゴオッ
稲妻の如く落ちる、虹色の光。
それを阻まんと、展開する反衝魂。
しかし、七色の奔流はそれすら飲み込み、その全てを押し潰す。
「―――ッ!!!」
響き渡る、絶望の叫び。
・・・眩い光の中で、魔性の鏡が砕けて散った。
続く
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