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2012年05月29日

霊使い達の宿題その7・光霊使いの場合(6)









 火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
 霊使い最後の一人、光霊使いライナの出番となっています。
 例によって作者個人のイメージによるキャラ付けとなっていますので、その所御了承願います。
 


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                            ―11―

 「エレメント・ドラゴンさん・・・。」
 呟くライナをチラリと横目で見ると、エレメント・ドラゴンは再びマインドオーガスに向かう。
 コォオオオオオッ
 息を吸い、喉の奥に溜める。
 薄紫だった首が紅く灼熱し、口の端から煙が立つ。
 ゴォッ
 次の瞬間、カッと開いた口から放たれた炎が、マインドオーガスを包んだ。
 しかし、マインドオーガスはそれを鬱陶しげに杖の一振りでかき消してしまう。
 「コノ雑魚、邪魔スンナ!!」
 怒りの声とともに爪が一閃し、エレメント・ドラゴンを叩き落した。
 「ドラゴンさん!!」
 地に落ちたドラゴンに駆け寄ると、ライナはその首をギュッと抱き締めた。
 「ありがとです・・・。後はライナに任せてです・・・。」
 そのライナの言葉を聞くと、エレメント・ドラゴンは分かったと言う様に尾を振った。
 「きゃっははははは!!何辛気臭イ茶番展開シテンノ!?ソンナ塵屑相手ニ!!」
 その言葉に、ライナの肩がピクリと震える。
 「・・・塵屑、ですか・・・?」
 「きゃは!!ダッテソウジャナイ!!ソイツハちぇいんニスラ勝テナイ。アタシニカスリ傷ノ一ツモ付ケラレナイ!!タダノ役立タズノ塵屑ヨ!!」
 キャラキャラとマインドオーガスは嘲笑う。
 「ホラァ、ソンナノッ放っトイテ、アタシト遊ビマショウヨ!!」
 その止め処のない加虐欲に従い、マインドオーガスは再びその爪を振るった。
 しかし―
 ガキィイイイン
 ライナの杖が、その爪を受け止めた。
 「エ・・・!?」
 「・・・やっぱり、貴女はエリアちゃんとは違うのですね・・・。」
 エレメント・ドラゴンの額に軽く口付けをすると、ライナは立ち上がりながら杖を振るった。
 ギキャアアアアアンッ
 硬質の音が鳴り響き、光の杖が闇の爪を弾き返した。
 「ナ・・・何!?」
 唖然とするマインドオーガスに向かって、ライナは言う。
 「貴女は言いましたね・・・。貴女達を否定したいなら、ライナ達の“力”でねじ伏せてみろと・・・。」
 喋る言葉は、先程までにはなかった力強さに満ち満ちている。
 「分かりました。その言葉通り、ライナ“達”の力、見せてあげるです!!」
 ヒュヒュヒュンッ
 ライナの手の中で杖が踊る。

 「我が願うは彼の誓い・・・」

 華麗に杖を舞わせながら、ライナは呪文を紡ぐ。

 「・・・君が御魂は我が御魂 君の導は我が導 其が契り 永久(とわ)に損なう事無き鎖 我ら其を剣(つるぎ)とし 真理を開く力と成さん!!」

 舞い踊る杖が、光の軌跡を描く。
 「ヌゥ!?」
 「マ・・・眩シ・・・!!」
 ソウルオーガとマインドオーガス。眩い光にたじろぐ二匹の前で、ライナを中心に広がる軌跡が彼女と仲間達を繋いでいく。
 ハッピー・ラヴァー、ハネクリボー、もけもけ、エンゼル・イヤーズ、モイスチャー星人、そして、エレメント・ドラゴン。
 彼らを繋いだ光は再びライナに集約し、その身を包む。
 そして―

 「団結の力(フォース・オブ・コネクト)!!」

 光を纏ったライナが、凛と言葉を結んだ。
 「・・・団結ノ力(ふぉーす・おぶ・こねくと)ダト!?」
 その意味を知るソウルオーガが、驚愕の声を漏らす。
 「ナ、何ヨ!!ソンナコケオドシ・・・!!」
 「待テ!!」
 ソウルオーガの制止を無視し、我が身に走る本能の戦慄を振り払うかの様に、マインドオーガスはライナに襲い掛かる。
 しかし―
 バキィッ
 「―ナッ!?」
 振り下ろした爪が、杖の一撃で粉砕される。
 「コッ、コノがきぃいいい!!」
 逆上し、次々とその爪を突き立てるものの、ライナの杖はそれを尽く打ち砕いていく。
 「ソ、ソンナ―」
 馬鹿な、と言いかけた瞬間、ライナの姿が視界から消える。
 気がついた時には、ライナはマインドオーガスの本体―エリアルへと肉迫していた。
 「速・・・」
 ガキャアアッ
 凄まじい衝撃が、エリアルを貫く。
 横殴りに振るわれた杖の一撃が、エリアルの身体の直ぐ下―マインドオーガスの米神へと叩き込まれていた。
 「きゃああああああっ!?」
 成す術なく弾き飛ばされたマインドオーガスの巨体が、地に転がる。
 「ゲ・・・ゲホ・・・ナ・・・何ナノ・・・!?コイツ、急二・・・!?」
 身体の芯を貫いた衝撃にえずきながら、地にのたうつ。
 相手の力の、あまりにも強大な変貌に戸惑いを隠せない。
 全ての爪を打ち砕かれ、もはやその身を支える事すらままならないマインドオーガスを、光を纏ったライナが見下ろす。
 「どうですか・・・?これがライナの、ライナ“達”の力です!!」
 ―装備魔法(クロス・スペル)「団結の力(フォース・オブ・コネクト)」―
 それは装備魔法(クロス・スペル)の中でも最上位に位置するもの。
 己とその心を通わせた仲間の間でのみ、発動可能となる術式。
 その効果は術者自身の力と、その仲間達の力を束ね、一つとする。
 そして今、五体の仲間と一体の竜の力を束ねたライナの力は、確かにマインドオーガスのそれを凌駕していた。
 「さぁ、勝負はついたです!!もう一度言うです!!あきらめて大人しく帰るです!!」
 「ク・・・。」
 エリアルの目が憎々しげに見上げるが、ライナの瞳は揺るがない。
 「・・・見下シテンジャネェヨ!!」
 そう喚いて、エリアルが手にした儀水鏡をライナに向けた。
 魔性の鏡がライナを映す。
 鏡の中の怨念集合体が蠢き、獲物を引きずり込もうと溢れ出した。
 「あははははっ!!食ワレッチマエ!!」
 会心の哄笑を上げるエリアル。しかし―
 「えっ!?」
 エリアルの前に、もう一つの鏡が突きつけられていた。
 それは、ライナの杖にはめ込まれていた鏡。
 それが、目にも眩い光を放つ。
 「鏡は何も、リチュア(あなた達)の専売特許じゃないです!!」
 鏡を中心に、朱い魔法陣が展開する。
 ―罠魔法(トラップ・スペル)の発動―
 「暗闇を吸い込むマジック・ミラー!!」
 ライナの鏡が、全ての“闇”を飲み込む神鏡(かみがね)と化す。
 オ オ オ オ オ オ オ オ!!
 光に照らされた死霊達が、一斉に声を上げた。
 それは、光に食われる苦痛の声か。
 それとも、闇の呪縛から開放される歓喜の声か。
 ライナの鏡が、エリアルの儀水鏡から無数の死霊達を吸い出していく。
 「ア、アタシノ“力”ガ!!儀水鏡ガ!!」
 悲鳴を上げるエリアル。
 しかし、ライナの鏡は容赦なく死霊達を吸い出し、飲み込んでいく。
 必死で鏡を背けようとするが、闇を捕らえる光の呪縛がそれを許さない。
 「タ・・・助ケ・・・」
 エリアルの目が、助けを求めて宙を泳ぐ。
 その視線が、数歩距離を開けた所で傍観していたソウルオーガを映した。
 しかし、ソウルオーガはその顔に薄笑みを浮かべたまま、動かない。
 「―!!」
 絶望の表情を浮かべるエリアル。その前で、ライナの鏡が儀水鏡の最後の闇を呑み尽くす。
 ピシィッ
 それと同時に、儀水鏡にヒビが走る。そして、
 パリィイイイイインッ
 力の根源を失った儀水鏡が、粉々に砕け散った。
 「ア・・・・・・」
 力なく倒れ伏す、エリアル。
 マインドオーガスの身体は崩壊を始め、見る見る塵となって散っていく。
 やがて全てが消えた時、そこには気を失ったエリアルが元の姿のままで倒れ伏していた。

                       
                           ―12―

 「ハァ・・・ハァ、ハァ」
 「ぐぽぽぽぽ。随分ト、辛ソウジャナ・・・。」
 荒い息をつくライナを、暗い影が覆う。
 見上げると、ソウルオーガの四つの目が、暗い光を灯してライナを見下ろしていた。
 「大シタモノジャ。ソノ年端デ「団結ノ力(フォース・オブ・コネクト)」ノミナラズ、「暗闇ヲ吸イ込ムまじっく・みらー」マデ使エルトハナ・・・。余程良イ師に師事シテイルト見エル。」
 「・・・・・・。」
 「ジャガ、ソレ程ノ高位魔法。何時マデモモツモノデモアルマイ。ドウジャ?今ノ戦イデ、粗方使イ果タシタノデハナイカ?」
 その言葉の通り、ライナを包んでいた光は薄れ、消えつつあった。
 「あなた・・・わざと・・・!!」
 ライナの言葉に、ソウルオーガはグポポと笑い声を上げる。それはそのまま、問いへの肯定。
 「戦時二オイテ、敵ノ有リ弾ガ尽キルノヲ待ツハ、常套手段ヨ。」
 「彼女は・・・あの娘は仲間ではなかったのですか!?」
 「仲間?ソウジャナ。中々良イ弾避ケニナッテクレタ。イイ“道具(なかま)”ジャッタヨ。“アレ”ハ。」
 その嘲りの篭った言い様に、ライナは嫌悪と怒りの眼差しを向ける。
 「何ジャ?マサカコノ期二及ンデ、りちゅあ(わしら)ガ“友情”等ト言ウオタメゴカシヲ謳ウトデモ思ッタカ?ぐぽぽ、コノ世ハ所詮、食ウカ食ワレルカヨ。ソレ以外ノ事柄ナド、全テ弱者ノ言イ訳二過ギン。」
 言いながら、ズシリと重い足音を立ててライナへと近づく。
 「く・・・つっ・・っ!?」
 構えをとろうとしたライナだが、途端、凄まじい激痛が全身を走る。崩れ落ちそうになる身体を辛うじて杖で支えるが、最早それが精一杯。
 それを見たソウルオーガは、さらに嘲笑の笑みを深くする。
 「ドウヤラ、術ノ“反動”ノ様ジャナ。ソモソモ自力ノ何倍モノ膂力ヲ宿ラセル術。無理モアルマイ。」
 笑いながら、ググッとライナに向かって屈み込む。そしてもはや動く事もままならないライナの顎を、人差し指でクイッと上げた。
 ライナとソウルオーガの視線が絡み合う。
 「ドウジャ、娘。『りちゅあ』二入ランカ?」
 「――!?」
 驚くライナを、ソウルオーガの儀水鏡が愛しげに映し出していた。

                                                           続く
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