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2012年04月17日

霊使い達の宿題その6・闇霊使いの場合(後編)









 火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日です。
 
 それからちょっと報告。今まで毎週水曜日に掲載していた「学校の怪談」のSSをしばらくの間隔週掲載にしようと思います。
 はい。ついに力尽きました。
 読んでくださっている方には誠に申し訳ありませんが、どうぞご理解のほどお願いいたします。
  
 それではコメントレス


 お疲れさまです。
 今回は短編でしたが、懐かしい言葉が多く「アウト・オブ・眼中」など懐かしいと思っていました(笑)
 
  
 はい。ホントは先週でまとめたかったんですけど、字数制限に引っかかりまして・・・。
 だから字数制限などいらぬとあれほど(ry
 っていうか、あ、あれ・・・?「アウト・オブ・眼中」って死語だったの・・・(汗)


 いつでも気長に待っているので、がんばってください。 

 毎度お心遣い、ありがとうございます。半月SSも、ひょっとしたらまた充電期間を頂くようになるかもしれませんが、その時はどうぞよろしくお願いします。m(_ _)m


遊戯王 真紅眼の黒竜 ウルトラレア アニバーサリーパック

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                           ―3―

 ―黒竜の雛(こいつら)も、巣が襲われた時には雛の内の一匹が、自分を呼び水にして成体の真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)を呼び寄せるんだ―

 先刻、自分が言った言葉を、ダルクは悔しさとともに噛み締めていた。
 今彼らの前に立つのは、あの弱々しい雛とは全く別の姿。
 烏の濡れ羽の様な甲殻に覆われた巨体。天を覆わんばかりに広げられた、漆黒の翼。炎の様に、深い真紅に輝く瞳。

 ―真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)―

 かの「青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)」と対を成す存在として世にその名を轟かす、伝説の竜が一柱。
 その気高き竜が、何故卑小な人間一人を守らんとするのか。答えは一つ。
 それは、己が一族の雛の願いを叶うため。
 幼き雛が、己が命を賭して託した願いを叶うため。
 それだけのために、彼の竜はこの地へと降り立った。
 
 グォオオオオオオッ
 
 怒りに猛る竜の咆哮が、周囲に落ちる闇を振るわせた。

 『コレガ、真紅眼(レッドアイズ・・・)。』
 目の前の竜を見上げながら、D・ナポレオンが呆然と呟く。
 「ああ・・・。」
 自失した様な声で、ダルクが呟く。
 しかし、D・ナポレオンの驚きは、直ぐに焦燥へと変わる。
 『ダ、駄目デスヨ!!ますたー!!闇ヨリ出デシ絶望ノ攻撃力ハ、確カ真紅眼(レッドアイズ)ヨリ上ノ筈デス!!』
 「・・・ああ・・・。」
 けれどそんな相方の叫びにも、ダルクは変わらないトーンでそう返すだけだった。

 実際、闇より出でし絶望は焦ってはいなかった。
 確かに、突然現れた竜には驚いたが、その力が自分に及ばない事は即座に本能で分かった。
 ただ、嬲る獲物が増えただけ。
 そう結論にいたり、絶望はゲラゲラと余裕の哄笑を上げた。

 D(ディー)は知らない。
 自分の主人が、まったく焦りの色を見せないその理由を。
 絶望は気付かない。
 自分のその余裕が、言葉を変えれば油断という、戦場において最も持ってはならない感情の一つだという事を。

 周囲の闇がまたうねる。
 そこから伸びた無数の手が、獲物を引き裂こうと牙をむく。
 しかし、その爪が黒い甲殻にかかる直前、真紅眼(レッドアイズ)がカッと口を開いた。
 大きく開かれた口。
 鋭い歯牙が並ぶその奥で、炎が滾っていた。
 それは紅い、紅い、黒いまでに紅い炎。
 それは瞬く間に渦を巻き、巨大な火球となって真紅眼(レッドアイズ)の口から放たれる。
 周囲に満ちていた闇はその輝きに散らされ、それに触れた絶望の腕が、瞬時に蒸散する。
 “いかな光でも、いかな攻撃でも呑み込む”筈の、闇の腕が。
 絶望は驚愕したが、時はすでに遅かった。
 
 ズガァアアアアアッ
 
 ギャアアアアアアアアアッ
 
 つんざく様な炸裂音と、絶望の悲鳴が交錯する。
 身体のど真ん中に大穴を開けられ、絶望は為す術なく崩れ落ちた。
 『ナ・・・何デ・・・!?』
 周囲の闇が薄らぎ、月明かりが戻る中で、D・ナポレオンが唖然と呟く。
 「黒炎弾・・・。」
 まるで全てを察していたかの様に落ち着いた声で、ダルクが言う。
 「真紅眼(レッドアイズ)の固有能力(パーソナル・エフェクト)だよ。どんな物理法則も概念法則も無視して、自身の攻撃力を直接相手に叩き込む。これには、攻撃力の差なんて意味を持たない。」(※1)
 言いながら、ダルクは真紅眼(レッドアイズ)の足元を潜り、“それ”の元へ向かった。
 闇より出でし絶望は、その力の大半を黒炎弾によってこそぎ取られ、地べたでピチピチと無様にもがいていた。
 ダルクは“それ”を冷ややかな目で見下ろすと、手の杖を振り上げた。
 「・・・消えろ!!」
 ただの残滓と成り果てていた絶望は、ダルクの一撃であっさりと霧散した。


                          ―4―

 役目を果たした真紅眼(レッドアイズ)は、その翼を広げ、夜空の果てへと去っていった。
 残されたダルクは、それを見送ると近場のガラクタ山に背を持たれ、そのまま座り込んでしまった。
 『シ、シッカリシテクダサイ!!ますたー!!』
 D・ナポレオンは慌てて近寄ると、肩の傷を引き裂いたローブでしっかりと結んだ。
 『コレデ血ハ止マルト思イマスケド、モットチャントシタ手当テヲシナイト・・・。早ク寮ニ戻リマショウ。』
 けれど、そんな相方に、ダルクは笑って答える。
 「ああ、戻るさ。用が済んだらね。」
 『エ・・・?』
 「雛(あいつ)だよ。能力(エフェクト)を使ったんだ。また墓地(ここ)のどっかで死にかけてるに決まってる。」
 『ア・・・』
 傷口をもう一度強く締めると、ダルクはよっこらせ、と立ち上がる。
 「疲れたろ?お前は先に戻ってろよ?」
 D・ナポレオンはしかし、首(?)を振って拒絶する。
 『御側ニ・・・』
 予想済みのその言葉に、それでもダルクは苦笑する。
 「全くお前、物好きだなぁ。」
 言いながら、ダルクは墓地(セメタリー)の奥に向かって歩き出す。
 それに、ピッタリと付き従うD・ナポレオン。
 「ああ、それにしても、この身でまた死者転生(あれ)をやらなきゃいけないのか。全く、ついてないよ。」
 『マァ、ソウ言ワズニ・・・』
 いつもの調子に戻った会話を交わしながら、二つの影は薄闇の向こうへと消えていく。
 ・・・夜はまだ、長かった。


                                                           終り

 (※1):本来なら魔法カードですが、その性質上、真紅眼の効果扱いにしました。今回の場合、絶望は2800のATKに2400のダメージを食らってATK400まで弱体化させられた訳です。
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