なつかしの映画

中里介山の超長編小説「大菩薩峠」は戦前戦後と何度も映画化されているが、今回のは片岡知恵蔵主演の

１９５７年版の作品である。

時代は幕末、場所は甲州の大菩薩峠で旅姿の二人連れがいた。年老いた男とその孫娘お松である。

ひと時祠に老人が手を合わせているとと背後から何物かが刀を振り下ろした。いきなり切りつけられた老人は

一瞬で絶命した。何の罪もない男を殺したのは、剣術使いの机竜之介（片岡知恵蔵）であった。

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机は人殺しをなんとも思わないニヒルな男だったのだ。一人残されたお松を哀れに思った通りがかりの盗賊

七兵衛はお松を引き取り面倒を見ることになる。

そして机のもとを一人の女が訪ねてきた。女の正体は明日机と奉納試合をする予定の宇津木文之丞の妻

お浜であった。お浜はとても夫は机に勝負で勝てないので手加減してくれと言うのだ。

机がそんな頼みを聞くはずもなくあくる日決闘を迎えるが、一撃で文之丞を倒してあの世に送ってしまった。

しかし文之丞を失ったお浜は、机の愛人となり一子郁太郎を儲けていたのである。

旅から旅へと彷徨う机についてきたお浜だったが、机の冷酷さに我慢ならず寝込みを襲うが失敗し


逆に殺されてしまった。

一方そのころ文之丞の弟兵馬は（中村錦之助）兄の仇を討つため、剣豪島田虎之助（大河内伝次郎）のもとで

腕を磨いていた。


兵馬は机を探して甲州から江戸へ流れるが、偶然お松と知り合い好意を抱くようになる。

だが兵馬は憎い仇机を討ち取ることが先決なのだ。

そして机はその腕を買われて新選組から天誅組へに参加して、紀州竜神にたどり着くのだった・・・


とにかくこの映画は面白い、次から次へと登場人物が繰り広げる人間模様や歴史的エピソードをからめながら

物語が展開してあきさせない。また主演の知恵蔵の妖魔のような不気味さや錦之助の若武者ぶりや大河内伝次郎

の重厚さなど大御所の演技が凄いのだ。内田吐夢の演出もさえていて飢餓海峡のように業が深い人物を描くと天下一

品である。

東映時代劇の全盛期の作品で、時代劇ファンなら一度はみておきたい映画である。