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2015年11月05日

「武士道残酷物語」今井正 中村錦之助

今井正監督、中村錦之助主演のオムニバス時代劇「武士道残酷物語」は、武士道の持つ欺瞞性や虚構を

嫌というほど暴いた傑作である。

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主人公の平凡なサラリーマン飯倉進(中村錦之助)は、婚約者の杏子(三田佳子)が自殺を図り病院に収容されたことでとまどいうろたえた。

飯倉はそのとき、先祖代々つたわる日記のことを思い出していた。

時はさかのぼり島原の乱、主君に代わり切腹して果てた飯倉次郎左衛門が進の先祖だったのだ。

次郎左衛門は、忠誠心を評価されてその息子佐治右衛門は、近習に取り立てられたが、ささいなことで

主君の換気に触れ食い扶持を取り上げられる。


しかしその息子久太郎は、学問に励み将来を期待されたが、美童ぶりが主君の男色趣味の目にとまり

稚児として慰みものになる。主君には正妻がいたが相手にされず、同情した久太郎と密通するように

なる。嫉妬した主君は、久太郎を刑にして正妻を久太郎に下げ渡す。


時は流れ天明の飢饉の時代、久太郎の子孫飯倉修造は、目隠しをしても相手を斬ることのできる秘術を

取得して主君の前で披露していた。おりしも飢饉で苦しむ藩の農民が幕府の役人に直訴した。


幕府は怒り.藩のとりつぶしを計画したが藩主は、修造の娘が美人なのを目をつけて幕府に差し出して

怒りを鎮めようとしていたのだ・・・

現代から慶長年間まで全7話のオムニバス形式で、飯倉家の過酷な歴史を錦之助がひとりで演じる時代劇

である。

この映画を見ると武士道というものがまやかしで、封建領主の支配のための方便だったことがわかる。

サムライと言っても自分の意思など通るはずもなく奴隷以下の存在だったのだ。

それを考えるとやはり現代に生まれてよかったと思える。今井正の批判精神は凄まじく武士道の裏にある

偽善性や矛盾を激しく糾弾する作品である。だがブラック企業が幅を利かす現代も支配者の洗脳の罠が

仕掛けられているのを見抜かないといけないのだ。それにしても錦之助の七変化ともいうべき役柄の使いわけ

には舌を巻く。原作は南條範夫。

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posted by ハヤテ at 14:25| 時代劇
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