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2015年03月24日

溝口健二市川雷蔵「新平家物語」


完璧主義で知られる溝口健二監督が、市川雷蔵を平清盛役で撮ったのが、吉川英治原作の「新平家物語」である。


溝口といえば芸術映画のイメージがあるが、この作品は小難しいところはなく、若き日の清盛の苦闘を焦点に時代の移り変わり


と武家の台頭を描いている。

平安時代末期、栄華を極めた藤原一族にも陰りが見え始めて、武家の力を借りなければ権勢を維持するのが


難しくなっていた。

そのころ平忠盛は、西国の海賊征伐より凱旋していたが、藤原家からは何の恩賞もなかった。

忠盛の子、清盛(市川雷蔵)は、公家のために命をかけ自ら血を流した武士たちがなんら報いられることのないことに不満で

爆発しそうであった。

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そんな藤原家にあっても藤原時信(石黒達也)だけは、なにかと忠信をかばったが恩賞のことで藤原家と対立し隠居させられた。


時信を心配して父忠盛の命で屋敷を訪れた清盛は娘の時子(久我美子)に心を惹かれた。


しかし、街の噂で清盛は自分のほんとうの父は白川上皇で母は白拍子であったと聞き驚愕し


思い悩んだ。


一方、忠盛は延暦寺と朝廷の争いを解決し殿上人として遇されることになった。



だが身分の低い武士の昇格に公家たちはこころよく思わず昇殿したときに忠盛を亡きもののしようと


闇討ちを計画、しかしことを知った清盛は事前に待ち伏せして公家の野望を阻止した。


公家の計画は失敗したが報復に時信は藤原一族を追放される。


しかし、清盛は時子を嫁に迎え時信一家は平氏となる。穏やかな日々が続くと思われたとき、義弟の時忠が



神社の境内で叡山の荒法師ともみ合いここに叡山と平氏の前面激突が始まった・・・


この映画を見ると日本史において、鎌倉、室町、安土桃山、江戸と日本の支配者であった武士もこのころは身分が低く、


公家や寺社から奴隷のように扱われていたことがよくわかる。


なかでも公家の武家に対する差別意識は凄まじい。又、仏に使えるべき僧たちが武装化し、政治に容喙し


無法の限りをつくしていたことも描かれている。


後に信長に焼き討ちされたのもやむを得なかったのではないか。

主演の雷蔵は映画に転向して間もないころであり初々しい演技が見られる。ゲジゲジのつけ眉毛が違和感が


ありすぎだが。


時子を演じる久我美子もいかにも貴族らしい気品がある。

美術やセットも溝口らしい凝り方で絢爛豪華であり、モブシーンも今では撮れない迫力で、長回しのカメラワークが

抜きん出ている。

作品は大映のシリーズもので三部作であるが、DVD化されているのはこの作品だけである。
タグ:溝口健二
posted by ハヤテ at 14:30| 時代劇
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