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2019年08月31日

スラビア・プラハ十二年ぶりに(八月廿九日)



 スラビアがチャンピオンズリーグ本選の出場を決めた。前回出場したのは2007/08年のシーズンなので、12年前のことである。あのときは、予選二回戦から出場し、スロバキアのジリナを二試合0−0で引き分けたあとのPKで破り、三回戦ではアヤックスと対戦した。下馬評では圧倒的に不利だったのだが、キーパーのバニアクの大活躍で、オランダでは1-0、プラハでは2-1で勝利して本選出場を決めたのだった。アヤックスの選手たちがシュートを打つたびに頭を抱えていたのを今でも思い出す。

 今回は、予選のプレーオフ、もしくは4回戦から優勝チーム部門に出場し、ルーマニアのクルージュを二試合とも1−0で破って本選出場を決めた。これで去年のプルゼニュに続いて二年連続チェコチームの本戦出場である。国別ランキング用のポイントも、予選の勝利で1、本戦出場で4獲得したから、万歳なのだけど、ここで負けて、ヨーロッパリーグに行ったほうが最終的なポイントは多くなるかもしれない。バルセロナ、ドルトムント、インテルという3位に入ってヨーロッパリーグ行きという目標さえ非現実的に見える組み合わせである。
 予選の四回戦の組み合わせが決まったときは、まだ三回戦の結果が出ておらず、スラビアではセルティクと対戦する気満々だったのだが、ルーマニアの初戦で1−1で引き分けた後、スコットランドでは3−4でセルティックが破れ、スラビアの客を呼べる対戦相手という夢は消滅し、EUの西の果てスコットランドではなく、東の果てのルーマニアに行くことになったのである。チェコのチームはルーマニアのチームとは相性がよくない印象もあって、心配していたのだが、杞憂に終わった。非優勝チーム部門に比べると対戦相手は楽ではあるのだ。

 ところで、チャンピオンズリーグの本戦出場を決めるまでのスラビアは、シーズンが始まって以来、問題が頻発していた。まず、アフリカ選手権に参加していたスラビアの守備を支える二人のアフリカ人選手が移籍してしまった。デリのほうは、チームとも移籍することで合意に達していたらしいからまだいいのだが、もう一人のヌガデウは今年は残ることで合意に達していたのに、アフリカ選手権後の休暇からプラハに戻ってくることはなく、強引に移籍してしまった。オーナーのトブルディークは、ひんぱんにツイッターでヌガデウを非難するようなコメントを出していたが、何の意味もなく、結局は選手と代理人がまとめてきた移籍を追認することになった。
 ベテランのスロバキア人選手ストフもギリシャに移籍して行ったし、スラビアだけでなくチェコ代表の中心選手にまで成長したソウチェクにも、予選まではチームに残ることで合意に達しているとは言われていたけれども、移籍のうわさは堪えなかった。状態の上がらないスパルタに見切りをつけてエジプトかどこかに逃げていたルーマニア人選手のスタンツィウの売込みを受けて獲得したのもどちらかというと不安材料だった。

 しかし、最大の問題は、チームや選手たちにはなく、中国資本に買収されて中国の代弁者トブルディークをオーナーに迎えて、チームの成績が向上したことで、勘違いして付け上がった一部のファンにあった。すでに昨シーズンから問題行動を繰り返して、リーグの規律委員会によって罰金やスタジアムの一部閉鎖などの処罰を受ける原因となっていたのだが、シーズン開幕直後の第三節エデンでのオロモウツとの試合で、持ち込んだ発炎筒を炊くのはいつものことだが、オロモウツのファンの陣取る場所に投げ込むという暴挙に出たのである。
 その結果、発炎筒の持ちこみ事態が禁止されているわけで、それを相手チームのファンを攻撃するのに使った罪はさらに重いということで、スラビアには無観客試合が命じられた。トブルディークは罰が重過ぎるとして撤回を求めたが、却下された。これまで何度も繰り返されてきたファンの問題行動を、抑えることができていないし、対策をしているように見えなかったので、当然での罰だと受け止められていた。そして、このままでは今後も無観客試合が繰り返されることになるのではないかと予測する人もいた。同じ週に、スパルタが昨年のファンの人種差別的な言動に対する処罰でヨーロッパリーグの予選でむ観客試合を強いられていたし。
 さすがにこの状態で何も手を歌ないというわけには行かなかったようで、スラビアではスタジアムを訪れる観客が守るべきルールの改定を行なって、ファンに対する締め付けをつよめる振りをした。ふりというのは、これまでもルールを守っていない連中が、厳しくなったルールを守るとも思えないからである。ただ、それに問題行動を繰り返してきた一部のファンが反発して、これまで「理想的なファン」とチームがおだててきたその一部のファンとチームの間が険悪なものになりつつあるようだ。

 どのチームにも、チームの迷惑にしかならないのに、自分たちが最高のファンだと主張するアホな連中は存在する。スラビアも以前と比べるとそういう迷惑ファンが増えていて、チーム側が弱かったころも応援してくれたからと、勘違いして甘やかした結果、手がつけられなくなってしまっている。ここらで発炎筒をスタジアムに持ち込むのを当然だと考えるような連中は、入場禁止にでもしないと、本当のサッカーファンがいなくなりそうである。
 迷惑ファンが買えるような発炎筒の販売の仕方も問題でこれは政治の怠慢だけど、チャンピオンズリーグや、ヨーロッパリーグの試合では、持ち込ませないことに成功しているのである。どうして同じような対策をとらないのか不思議でならない。トブルディークには、名前の通りトブルディー(硬い、頑固な)な対策、例えば入場ゲートのところに警察を呼んでおいて、発炎筒持ってスタジアムに来た連中は、片っ端から逮捕して発炎筒を没収するぐらいのことはしてほしいものである。

 こんなことを書いたら、昨シーズン急成長を遂げてスラビアにの中盤に欠かせない選手になったクラールがロシアに買われていくというニュースが出てきた。うーん、組み合わせを見て勝てそうにないから、選手の希望にこたえたということなのかなあ。グループステージで全敗で敗退だと、チェコがチャンピオンズリーグの予選に1チームしか出場できないランキング16位以下に落ちかねないから、1勝、もしくは2分ぐらいは期待したいのだけど……。
2019年8月29日24時45分。











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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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