2018年09月24日
孤児受け入れその後(九月廿二日)
シリアの難民キャンプの孤児を50人チェコに受け入れようと提案したEU議会議員は、提案を間接的に聞いたバビシュ首相が否定的なコメントをしたのに対して、首相夫人や大統領夫人と交渉したいと言い出した。これは、チェコではハベル大統領の時代からの伝統で、大統領夫人は慈善活動に積極的にかかわることが多いからであろう。話を持ちかけられた二人は即座に拒否していたし、バビシュ氏は批判するコメントを残していた。
問題は、このやり取りがメディアを通じてなされたこと、少なくともそのような印象を与えることで、計画の実現よりも、話題になることを優先しているようにも見えた。しかも、孤児を五十人というだけで、具体的なことは何も考えていないようだったのもひどかった。根拠としてイギリスなどで同様の孤児の受け入れ計画が進んでいるというのを挙げていたが、政治家主導のプログラムなのだろうか。
この件は、バビシュ首相が断固として拒絶したことで終わったものだと思っていたら、金曜日になって、首相が民間団体にシリアの難民キャンプにいる孤児の中から50人を選別するように要請したというニュースが入ってきた。EU議員の繰り広げたキャンペーンに負けて受け入れることにしたということだろうか。朝令暮改というか、昨日のあの発言は何だったんだというのはバビシュ氏には珍しくないけれども、この決定はらしくない。
それが、ニュースを見たら完全な勘違いだったことがわかった。まず、件のキリスト教民主同盟のEU議会議員がバビシュ首相と孤児の受け入れを巡って会談をした。議員はその会談の結果を記者たちに発表し、これで孤児受け入れにめどがたったとか何とか、自分のせいかを誇るような発言をしたらしい。その後、バビシュ氏が民間の難民支援団体に支持を出したという話が広がって、受け入れることになりそうだという憶測が広がった。
これに対してバビシュ氏は記者会見で、選ばれた50人の孤児たちはチェコに受け入れるのではなく、あくまで難民キャンプで支援するのだと語った。何がしたいのかよくわからないのだが、どうも選ばれた子供たちを国際的にはチェコ政府の庇護下に置くとか言う話で、それによって子供たちを守るというのか、子供たちに特別の援助を与えるというのか、意味不明である。それにチェコの難民キャンプ支援ではよくあるのだが、学校をEUの資金で建設しようとも言っていた。
子供たちに教育の機会を与えるために学校をというのも、現在のシリアの状況に大きな責任を追うべきEUの負担でチェコが立てるというのも悪くない。ただ、最初のチェコによって救済されるはずだった50人の孤児たちはどうなるのだろう。他の子供たちと一緒にチェコ政府が建てる学校に通わせるのか。特別扱いをするのか。
孤児を救済するという目的があるのなら、現状でどのような状況にあるのか確認した上で支援の内容を考えるべきであろう。孤児院のような施設があって子供たちの面倒を見ているのなら、孤児院に対して支援をし、どこかの家族に居候して面倒を見てもらっていたり、周りの人たちが共同で面倒を見ていたりするのなら、孤児院のような施設を準備するなり、孤児の面倒を見ている人たちに支援をしたほうがよかろう。
それから、チェコに庇護された孤児たちが、他の多くの孤児、子供たちと一緒に同じ学校に通うことになった場合に、特別扱いされていることを理由にいじめにあったりしないかなんてことも考えてしまう。仮定の仮定になるけれども、孤児の面倒を見ている人たちに援助を与えた場合も、援助をもらえない人たちのやっかみ、特にチェコ政府に選ばれなかった孤児の面倒を見ている人たちのやっかみを受けることになって、ただでさえいいとは言えない難民キャンプの雰囲気悪化につながり、孤児たちの生活も悪化しかねない。すべては仮定でしかないけど。
ただそう考えると、支援する孤児たちをチェコに連れてくるというのは、隔離するという意味では悪くない。民間団体が主導して、政府が許可を与える形だったらもろ手を挙げて賛成なのだけど、政府主導というのはどうなのだろうか。地方議会と上院議員の選挙を前に、孤児の問題を政治問題化使用としているところがあるのもなんだかなあである。
例えば、キリスト教民主同盟の所属議員たちが議院報酬の一部を拠出してシリア難民の孤児を救済する基金でも設立して、現地の難民キャンプで孤児の実態を調査し、保護する孤児にある程度めどをつけ、チェコ側でも引き取って育ててくれる里親にもめどをつけた上で、政府側との交渉を行っていれば、積極的な支援は無理でも、孤児たちの入国許可を出すぐらいのことはしたのではないかとも思う。チェコで孤児院に入れるというのでは、連れて来る意味はあまりないからどこかの家庭で養育してもらう必要があるはずだ。
シリア難民の中にはチェコ人が考えるような孤児はいないという発言をしている人も、シリアの法律では外国人がシリア人の子供を養子にとることはできないことになっているから、下手に養子縁組などすると将来問題になるかもしれないなんてことを言うシリアの人もニュースに出てきたから、ちゃんと調べて準備していたら提案に至らなかった可能性もある。
いずれにしても、EU議会議員の提案は拙速というか、調査不足というか、単なる思い付きだったんじゃないかという批判は免れまい。その一方でバビシュ首相の発言も具体性のないもので口からでまかせじゃないかといいたくなるものだから、どっちもどっちというか、目くそ鼻くそというか。このままうやむやのまま孤児の受け入れは実行されずに終わるのではないかとみている。
2018年9月23日22時55分。
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