2017年09月13日
下院総選挙2(九月十日)
承前
7 STAROSTOVÉ A NEZÁVISLÍ
七番目は、六月の時点ではキリスト教民主同盟と組んで共同の候補者名簿を作成して選挙に挑むことになっていた市長無所属連合、略してSTANである。世論調査で、二つの党が組んだ場合に必要な10パーセントを越えることができなかったことから、両方の党で見直しを求める声が高まり、結局は別々に候補者名簿を作成することになった。連合の組みかた次第では5パーセントでも議席が獲得できたのだけど、どちらかの党の名簿にもう一方が吸収されるという形になるから、嫌われたようである。
共同での候補者名簿作りが決まったときには、合同で大々的に共通の選挙用のポスターやらビデオクリップやらを作成して発表していたのだが、すべてなかったことにされた。STAN側が、即座に新しい選挙用の素材を発表していたところを見ると、最初から提携を解消することを見越していたということだろうか。
この党は、前回の選挙までは、キリスト教民主同盟から分かれたTOP09と組んでいた、正確にはTOP09の候補者名簿にSTANのメンバーが登録されていたから、今回が単独での候補擁立は初めてということになるのかもしれない。
8 Komunistická strana Čech a Moravy
続いて共産党である。ビロード革命直後は、いわゆる正常化の時代の記憶も新しく、党勢を大幅に落としていたようだが、最近、あの時代を知らない若い人たちの間にも支持を広げて、一時はチェコテレビの世論調査で、社会民主党を抜いて支持率で二位になっていたほどである。
社会民主党は、確かゼマン大統領が党首だった時期にボフミーン宣言とでも呼べるものを出して、共産党との連立はしないことを決定している。もともとは、地方議会でも適用されるはずだったこの宣言は、地方政府レベルではすでになし崩し的に連立を組んでいるので、国政の舞台で、社会民主党、共産党による連立与党が誕生するのも時間の問題かもしれない。というか、現時点では、それ以外にバビシュ首相誕生を阻止する方法はなさそうである。
この党の人たちは、国会の審議の際に、ほかの党の議員が、ビロード革命以前のチェコスロバキアの政治や政治家を罵倒するような発言をすると、必ず訂正を求める発言をする。かれこれ三十年近くたつというのに律儀なことである。
9 Strana zelených
緑の党が、チェコの国会から姿を消したのは幸せなことである。今回もこの党が議席を獲得しないことを願っておこう。議席を獲得するような事態になっても、この党と連立を組むようなことはないと信じたい。トポラーネク内閣で市民民主党と連立を組んだ緑の党は、混乱と迷惑の象徴でしかなかった。
現在プラハ市でもANOなど組んで与党の側に立っているが、連立に際しての合意を無視して好き勝手な発言を繰り返し市政に混乱を引き起こしているようだ。その緑の党を代表する迷惑人物が、ANO選出の防衛大臣ストロプニツキー氏の息子と言うあたり皮肉な話である。
とまれ、日本に緑の党が存在しない(するかもしれないけれども意識する必要がない)ことは、喜ぶべきことである。チェコからもこのドイツあたりからもたらされた病害が消えることを願ってやまない。
10 ROZUMNÍ - stop migraci a diktátu EU - peníze našim občanům, důchodcům, dětem, zdravotně postiženým...
またまた意味不明な政党名であるが、直訳して「常識ある者たち」党とでもしておこうか。後ろにつく副題?は、「難民とEUの独裁にストップ――お金は我が国の市民に、年金生活者に、子供たちに、健康に問題のある人たちに」となる。反移民、反EUで、チェコの税金はチェコ人のために使えということを主張する政党ということになろうか。
この党のホームページに上がっている各選挙区のリーダーをチェックしたが知っている人一人もいなかった。大統領候補としては、党首のペトル・ハニクという人を独自に擁立するようだけど、知らんなあ。ニュースなどでも話題に上ったことはないと思う。署名活動で必要な数を集められるのだろうか。
11 Společnost proti developerské výstavbě v Prokopském údolí
これまた何のために国政選挙に出るんだろうと言いたくなるような政党である。「プロコプ渓谷の開発に反対する会」とは、何ぞや。
プロコプ渓谷というのは、プラハ南西部にブルタバ川の支流が作った渓谷である。この谷間をプラハから西、プルゼニュのほうに向かう鉄道の路線が走っている。プラハ市内では北西にあるシャールカの渓谷と並んで、自然が残っている場所なのかな。そこにマンション建設が進められていて、それに反対する人たちが政治団体を作って選挙に出るということのようだ。
プラハ市議会議員の選挙ならともかく、国政選挙じゃあこの渓谷のことは論点にはなるまい。この党だけではないけれども、こういうのを見るとチェコにも日本と同じで金と暇があって選挙に出るのが趣味という人がいるのだろうと思えてくる。日本みたいに政見放送の時間があれば楽しそうなのだけど、チェコテレビは議席を獲得しそうな政党を優先して討論番組に招待するようだから、この党に出番はあるかな。
12 Strana svobodných občanů
自由市民党と訳しておこうか。2009年にペトル・マフという人が設立した政党で、国政選挙ではまだ当選者を出したことはないが、地方議会、市町村議会の議員は輩出しているようである。特筆すべきは2014年のEU議会の選挙で、主要政党以外では唯一議席を獲得したことだ。EU議会の選挙が軽視され投票率が20パーセントを下回るものであることを考えても、全21議席のうち1議席を獲得したというのは、政党的には快挙と言ってもいい。
この党の主張は、反EUで、チェコのEUからの脱退を主張している。ヨーロッパレベルでは、EU懐疑派の政党、略称ADDE、直接民主主義のヨーロッパ連盟に所属しているようだ。今回の選挙は投票率が20パーセント以下ということはありえないので、この自由市民党が議席を獲得するチャンスはほとんどなかろう。
9月12日23時。
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