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2016年11月26日

酒はしづかに(十一月廿三日)



 十月の後半から、よその町に住んでいる知り合いがオロモウツにやってくることが重なり、そうなると当然飲みに行くので、ここ一ヶ月ほどで五回という近年ではありえないペースでお酒を飲んでいる。昔は、チェコ語を勉強していたころは毎日のように飲み歩いていたし、酒量も多かったのだけど、医者に高血圧だと言われて薬を飲むようになって以来、回数も量も一気に減ってしまった。
 最近は知人がオロモウツに出てきたときぐらいしか飲みに行かないので、飲みに行く回数が少ないのは、友人知人が少ないということか。いや、オロモウツに来る友人が少ないということにしておこう。だからこそせっかく来てくれた場合には、一緒に飲みたいという気になるのだから。

 そういうお酒は、非常に楽しく、気の合う人と一緒に飲むお酒ほど美味しいものはないという話を思い知らせてくれる。「古詩十九首」あたりに、「楽しきは知己と共に飲むより楽しきはなし」とかなかったかな。ごろが悪いから、無理かなあ。(調べたら「楚辞」に「悲しきは生ながら別離するより悲しきはなく、楽しきは新たに相知るより楽しきはなし」とあった。となると酒好きの李白あたりが似たようなことを言っていないかな)
 それはともかく、楽しきお酒を飲んでいるとついつい二杯目に手が伸びてしまって、現時点では限界の三杯目を飲んでしまうことになる。普段は翌日に響くからと、一杯でやめるようにしているのだけど、楽しく大きな声で話していると喉が渇くのか、お酒が進んでしまう。今の楽しさと、次の日の苦しさを天秤にかけて、その瞬間の楽しさを選ぶのだ。ささいなことではあるけれども、大げさに言えば、その瞬間だけは刹那主義に生きているということになる。

 そんな中、ふとこれでいいのかと懐疑の念が頭をよぎることがある。何かを忘れているような、何か大切なことを忘れているような気がしてふと立ち止まる。
 
  白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ

 人口に膾炙した牧水の短歌であるが、末尾の句が「べかりけり」となっていることが多いかもしれない。

 昔、まだ馬鹿みたいにお酒を飲んでいたころ、この短歌が似合うような爺さんになりたいと思っていた。それで、自宅で一人静かにお酒を飲んだりしていたのだけど、日に日に酒量が増えていくことに気づいて、このままではだめだと、自宅で飲むのはやめたのだった。それがもう二十年以上前の話である。
 チェコに来てからチェコ語の勉強をしていたころには、一人で飲み屋に出かけてビールを飲むことは多かったけれども、それは勉強のためであって、一人静かにお酒を味わうというイメージではなかった。チェコ語の勉強をやめてからは、一人で飲みに出かける機会なんか減ってしまったし、もう十年以上一人で飲み屋に入っていないのか。時間がたつのは早いものだ。
 そして、今では、いや今でも大勢でわいわい楽しく飲む酒はおいしいと思ってしまうので、牧水の境地にはほど遠い。そもそもチェコの主食である「液体のパン」、つまりビール自体がこの歌には似合わない。辛口の日本酒とか、牧水の故郷の九州のお酒、焼酎あたりでないと、この歌を受け止めきれないような気がする。

 さて、今日も日本の方がオロモウツに来たので、チェコ人を何人か引き連れて飲み屋に出かけた。そこでビール片手に、日本人二人でチェコのビールは美味しいけど、日本のビールはまずいと言っていたら、一緒に飲んだチェコ人に、チェコでチェコの料理と一緒に飲む場合には、日本のビールはまずいかもしれないけど、日本で和食を食べるならチェコのビールより日本のビールのほうがおいしいはずだと反論されてしまった。なるほど、そう来たか。
 ビールそのもののおいしさしか考えずに、食事との組み合わせを無視していたというわけだ。我々、日本人二人、深く反省してしまった。日本のビールがおいしいと思える料理はぱっと思いつかなかったけれども、探す努力すらしていなかったのだから。

 ということは、チェコでは牧水の境地になれないなんて嘆かないで、牧水の歌をもとにチェコにふさわしい酒の歌を作ってしまえばいいのだ。なんてことを思いついてしまった。
 冒頭の「白玉の」は、一般には「歯」にかかる枕詞的な理解のされ方をしているようだが、この歌を何度も読んでいると、「秋の夜」にも、「酒」にもかかっているような、すべてにつながっているような印象を持ってしまう。
 くそ暑い夏が終わった秋の夜の涼しさを、「白玉のように歯にしみとほる」と理解するのであれば、夏があまり暑くなく、秋というものに存在感のないチェコの場合には、「白玉のように歯にしみとほる」ものは、冬、冬の寒さであろう。当然酒は適度に冷やされたビールで、「歯にしみとほる」ほどおいしいのである。「歯にしみとほる」ほど冷たいビールは飲みたくないのでこう解釈しておく。

 チェコのくそ寒い冬、飲み屋の暖かい部屋の中で、さらに暖かくなるようにみんなで楽しく話しながら、おいしいビールを飲む、これがチェコのビールの飲み方である。いや冬のビールの正しい飲みかたである。ということで、
 
  白玉の歯にしみとほる冬の麦酒みなでさわきて飲むべかりけれ  ほくすい(偽)

 うーん、うーん。無駄な文学趣味はあっても歌才はないのだと再確認する。えっ、本歌取りだって? いやいやそんな高尚な物なんかではなくて、こんなのはただの剽窃というのだよ。

 この文章、途中までは、結構うまく落とせるかと思いつつ書いていたのだけど、いつものように恥をさらして終わってしまった。23日の楽しいお酒の代償である。23日の深夜に酔っぱらった頭で書き始め、24日にアルコールの残った頭で書き終えきれず、25日の夕方にアルコールの抜けきれない頭で書き上げようとしている。たったの三杯しか飲んでいないのに、弱くなっちまったぜい。
11月25日17時。


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