2016年10月19日
彼らはどこに行ったのか3(十月十六日)
承前
12:Jan Kovařík ヤン・コヴァジーク
コバジークは、すぐに代表の主力になれると確信していたのだけど、声もかからなかった。クレイチーが出てくるまでのサイドハーフは、めぼしいのが同世代のピラシュぐらいしかいなかったと思うのだけど、全然呼ばれなかった。ヤブロネツで組んでいたラファタと一緒に使えば、いい得点源になったはずなのだが。
数の多かったスラビア育ちの選手の一人。ヤブロネツで本格的に覚醒して、現在はプルゼニュでプレーしている。今年はシーズン開始直後から調子が上がらず、プルゼニュはスイスから同世代のマルティン・ゼマンを獲得することになった。クレイチー、ピラシュ、コバジークと代表で期待のこのポジションの選手って、調子の波が激しいか、怪我が多いかどちらなんだよなあ。ピラシュなんてまだ若いのに、怪我している期間のほうが長いという意味でロシツキーの後継者になってしまったし。
13:Marcel Gecov マルツェル・ゲツォフ
バーハ、ドチカルと同じく、スラビア育ちでリベレツで本格的に活躍を始めた選手。このU21代表で最も過大評価を受けた選手で、ヨーロッパ選手権後イングランドのフラムに買われていった。やせぎすの線の細い選手で、両足なんか針金みたいだったから、これでイングランドはきついだろうと思っていたら、案の定ほとんどチャンスも与えられないままスラビアに戻ってきた。イングランドでのチェコ人選手の扱いなんてこんなもんなのだ。
スラビアでもかつてリベレツやU21代表で見せた輝きは発揮できずに、いつの間にか消えてしまって、完全に忘れられた選手になっている。もう少したくましくなって復活してくれたらと思うのだけどどうかな。現在はポーランドリーグでプレーしているらしいけれども情報はほとんど入ってこない。
15:Milan Černý ミラン・チェルニー
このU21代表にスラビア育ちの選手は多かったが、このチェルニーがほとんど唯一のスラビアで主力として活躍した選手だった。ただ、怪我が多い選手でU21の大会もぎりぎりで間に合ったのではなかったか。こいつも何度か代表に呼ばれたし、数年後には主力だぜと確信していたんだけどなあ。本人のせいばかりではないのだろうけど、実にもったいない選手である。
もう一つの問題は、スラビアの放漫経営による財政危機で、売れそうな商品だったチェルニーは、常に売却リストの一番上にあった。一度はロシア行きがほぼ決まったものの怪我で破談になり、結局本大会後にトルコへと旅立った。その後は、忘れられた選手になっていたのだが、いつの間にかチェコに戻ってきていて、現在は一部に昇格したばかりのフラデツ・クラーロベーでプレーしているようだ。うーん、かつての姿を取り戻すのは難しいのかなあ。
18:Lukáš Mareček ルカーシュ・マレチェク
マズフと同じくブルノで育った選手でアンデルレヒトに所属していた。その後、スパルタに戻ってきて、便利屋的な使われ方をしている。この選手もすでに国外でプレーしているという割には印象が薄かったなあ。あの頃はブルノから将来を嘱望された若い選手が何人も輩出されて、国外移籍を勝ち取る選手も多かったのだけど、大半はものにならないまま消えていったんだよなあ。特にカロウダ、ストシェシュティーク。こいつら今どこにいるんだろ。
FW
フォワードは、カドレツが頻繁に招集されているけれども、かつてのコレルのような絶対感も、一時期のバロシュのような爆発感も発揮できておらず、中途半端な存在で終わってしまいそうな危惧がある。はやり、このU21と同世代のネツィットと、コザークの怪我が痛すぎる。この二人が怪我なく成長していれば、コレル=ロクベンツの電柱二本柱にはかなわないにしても、破壊力抜群のツートップになったはずである。まあ試合当初から二人出ることはないだろうけど。
9:Libor Kozák リボル・コザーク
この世代の誇る電柱形フォワードの一人で、チェコの一部リーグを経験せずに国外移籍した中では例外的に成功した選手である。チェコではオパバに所属して二部リーグで得点を重ねていたが、一部に昇格することなくイタリアのラツィオに移籍した。本大会当時はまだラツィオで活躍とまでは行かなかったが、徐々に出場機会を与えられており、大きな期待を抱かせた。考えてみればコザークが、これまでのところ最後のイタリアリーグで実力を発揮したチェコ人選手ということになるのか。今年移籍したクレイチー、シク、それからユース世代からイタリアにいるヤンクトの中から一人でもコザーク並みにイタリアで活躍できると嬉しい。
現在はラツィオから移籍したイングランドのアストンビラにいるようだけど、度重なる怪我で初年度を除いてほとんど出場さえできていない。やはり、ロシツキーを見てもわかる通り、チェコ人選手はイングランドには行かないほうがいいのだ。コザークの破壊力が今の代表に戻ってくると大分変わりそうなんだけど。残念ながら、ビドラにもカドレツにも、コザークの破壊力はない。ただ怪我が治ってもネツィットと同じで一番よかった頃に戻れる保証はない。
11:Tomáš Pekhart トマーシュ・ペクハルト
なぜと言いたくなるぐらい、期待と評価の高かったスラビア育ちのフォワード。チェコリーグではそこそこ点が取れるけれども外国リーグでは……ということで、十代の頃から何度も出入りをくり返し、現在はキプロスのチームにいるが、そこでもほとんど点が取れていないようだ。A代表にも何度か呼ばれて出場しているが、アウトサイダーの弱小チーム以外の相手に決めた得点はほとんどなく、対弱小チーム用フォワードというあだ名もあった。個人的にはあんまり期待したことのない選手なので、こんなもんだろうとしか言えないのだけど。
14:Václav Kadlec ヴァーツラフ・カドレツ
本来はもう二つ下の世代に属するのだが、飛び級でこのU21代表に招集されていた選手である。カドレツについては、現在のところ、評判と期待を超えられていないと言うしかない。それなりに活躍はしているけれども、評価の高さからすると物足りない。カドレツなら以前と比べてチェコ人が活躍できなくなっていたドイツでも何とかなるだろうと思っていたのだけど、結局出戻りだったからなあ。まだまだ若いので今後に期待。
19:Jan Chramosta ヤン・フラモスタ
2011年の大会当時から一番変化のない選手。当時はムラダー・ボレスラフの期待の星だったけれども、今はボレスラフのスター選手である。「フラモ・スター」なんて書かれた応援の幕もある。実は個人的にはカドレツより期待していたんだよなあ。調子の波がありすぎるのが嫌われたのか、半年プルゼニュにレンタルされていた以外はずっとボレスラフでプレーしている。今季は好調で10節で7ゴールを挙げて現在得点王である。ただ、この選手、点が取れなくなると長いんだよ。
20:Michael Rabušic ミハル・ラブシッツ
イフラバ育ちで、ブルノに所属していたときにU21のヨーロッパ選手権を迎え、リベレツに移籍してリーグ優勝に貢献する。その後、イタリアに移籍したのだけど、イタリアリーグに積み重なったチェコ人選手の屍の一つになってしまった。タイプとしてはコザークに似ている印象が在る。ただ破壊力はコザークのほうが上だった。
イタリアから戻ってきたリベレツでも調子が上がらず、今年からイフラバでプレーしている。イフラバ自体成績が低迷しているため、ラブシッツの調子も上がらないようである。逆かな。
22:Adam Hloušek アダム・フロウシェク
ヤブロネツ育ちで大会当時はスラビアの中心選手だった。比較的早くから代表に呼ばれるようになり、中盤で使われることが多かったんじゃなかったかな。その活躍が認められてドイツに移籍したのだけど、その頃から情報があまり入ってこなくなり、代表に呼ばれることも少なくなっていった。現在はポーランドのレギア・ワルシャワで活躍中で、今季はチャンピオンズ・リーグの舞台にも立っている。
名前を聞かなくなって久しい選手も多かったので、完全に引退した選手がいるかとも思ったのだけど、さすがはここ10年ほどでは最強のU21だけあって、全員現役で、それも各地の一部リーグのチームに所属していた。ただ、怪我などの影響で全盛期の輝きを取り戻せていない選手が多いのが残念である。一度でいいから、A代表の代わりにこのU21が、ユーロやワールドカップ予選に出るのを見てみたかった。ラダやビーレクが監督やってたときのA代表よりは、はるかにまともなサッカーやってたからなあ。
監督のドバリルは、去年チェコで行われたU21のヨーロッパ選手権終了後、監督の座を引いて出身チームのスラビアに戻ってユースチームかなんかの監督をしていたのだけど、中国資本へのスラビアの身売りの後、アラブのどこかの国からオファーを受けて、そっちに行ってしまったんじゃなかったか。経験を積んでチェコの一部リーグの監督、ひいてはA代表の監督として活躍している姿を見てみたい。ただ、試合前に気持ちを盛り上げるために旧ソ連の国歌を聴くというのが、チェコ人には受けが悪そうである。
10月17日23時30分。
長くなったけど、こんなので四回というのも嫌なので。10月18日追記。
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