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2016年08月26日

敗北宣言(三)(八月廿三日)



 ハンドボールに負け、チェコのテニス選手負けてしまった後、二週目に入っても連日敗戦を続け、唯一勝ったと思えるのは、こちらの時間で真夜中過ぎに始まる陸上競技を夜更かししてまで見るような愚行を避けられたことぐらいだ。見ようとしたとしても、途中で眠ってしまって気が付いたら朝だったというのが関の山だっただろう。それに、見なかったとは言え、翌朝起きてすぐ結果を知ろうとしたのだから、勝ったとも言い切れないのか。

 ともかく、あれこれ見てしまったので、個人的に注目していたチェコ人選手たちについて書いておく。
 最終日コンビチカ劇場のニュースを見損ねたのは、マウンテンバイクのレースを見ていたからだ。ロンドン・オリンピックの優勝者ヤロスラフ・クルハビーは、今シーズン怪我の影響もあって、余りいい成績を上げられていないようだったが(それでも世界選手権では二位に入っている)、成績がよくなかったのは四年前と同じだというので、連覇への期待はかなり高かった。
 レースは最初は出遅れた感があったが、すぐにロンドンでも優勝を争ったスイスのニノ・シュステルと先頭集団を形成し、そのうち二人で独走態勢に入った。このままロンドンのときのようにゴール前のスプリントでクルハビーが勝てればいいなあと思っていたら、残り二周でシュステルがスパートをかけてクルハビーは置いていかれてしまって二位に終わった。シュステルと二人で、二大会分の金と銀を分け合った形になる。

 このレースのもう一つの注目は昨年のロードレース世界選手権の優勝者スロバキアのペテル・サガンが出場したことだった。ジュニア世代ではマウンテンバイクの世界チャンピオンだったというサガンは、ツール・ド・フランスの後、一月ほどかけてマウンテンバイクの新しいテクニックなどの特訓を受けていたらしい。
 サガンは、スタート直後こそ、一気に先頭集団にジャンプアップしてさすがと思わせたものの、前輪のパンクで後退してしまった。タイヤ交換をして追い上げ始めてからも、またトラブルがあったらしい。運がなかったといえば、その通りなのだが、本職の選手たちに比べると荒っぽくて力技で障害物を乗り越えていっているようにも見えた。自転車に易しくない乗り方だったのかもしれない。

 前日の女子のレースでは、カテジナ・ナッシュが五位に入った。ノルディック・スキーの距離で冬季オリンピックにも出場したことがあってこれが五回目のオリンピックだと言っていたかな。個人の成績としては、今回の五位が最高だと言って喜んでいた。スキーのリレーでは三位だったか四位だったかに入ったことがあるという。
 このレースは、途中から、いや最後のほうだけしか見ていないので、どんな展開で五位に入ったのかはわからないのだが、終わった後のインタビューなんか聞いていると、東京オリンピックまで続けられそうな感じだった。超ベテランが活躍し続けるのはチェコの伝統でもある。NHLを見れば、ヤロミール・ヤーグルがまだまだ元気だし、今回のオリンピックには出場できなかったけど、バルセロナからロンドンまで連続出場していたシュテパーンカ・ヒルゲルトバーだってまだ現役を続けるみたいである。過去を振り返れば、やり投げのヤン・ジェレズニーも、その名のとおり40歳ぐらいまでは第一線で活躍していたはずだ。ナッシュは、三十台の半ばのはずだから、まだまだいけるだろう。
 ちなみにこの人の名字が、チェコ人女性なのに「オバー」で終わらないのは、アメリカ人と結婚してアメリカを拠点に競技活動をしているかららしい。チェコ人女性が外国人と結婚する場合、チェコ国内で結婚すると、外国語の名字にも「オバー」が付けられることになるが(最近は例外もある)、外国で結婚すると「オバー」が付かないらしい。

 このマウンテンバイクのレースのあとには、近代五種の馬術を見てしまった。近代五種というのもよくわからない競技なのだが、ロンドンオリンピックの優勝者ダビット・スボボダが二種目終えていい位置につけているというので、ついね。
 この競技は、出場者総当りの順位を決めるフェンシング、水泳、下の順位から始めるフェンシングの勝ち抜き戦(勝った分だけポイントがもらえる)経て、馬術の障害競技が行われる。普通の馬術と違うのは、自前の馬ではなく主催者が準備した馬を使うことで、しかも選手が自分たちで選ぶのではなく、抽選でどの馬に乗るのかが決められる。馬の数は出場選手数の半分で、二人の選手が同じ馬を使うことになる。
 もちろん、集められた馬の全てが同じレベルのあるわけはなく、馬の良し悪しが競技の結果に大きな影響を与える。いい馬が当たったからといって絶対に勝てるというわけではないが、悪い馬に当たったらぜったに勝てない。馬に関して最悪だったのが北京オリンピックだったらしく、スボボダも確かまったく言うことを聞かない馬が当たって、馬術での獲得ポイントがゼロだったはずだ。手に負えない馬が多すぎたという。それに対してロンドンは最高で、リオはロンドンほどではないけれども満足の行く馬が多かったと、スボボダが全てが終わった後語っていた。

 スボボダは残念ながら馬術で順位とタイムを落としてしまって、連覇を果たすことはできなかった。それでも、最後の陸上版バイアスロン、長距離走の途中で射撃をするというレースで順位を上げて九位に入った。ロンドンのあと怪我などで満足に競技ができない時期もあったことを考えると、この結果には十分満足していると言っていたスボボダの晴れがましい顔を見ていると、オリンピックの意義というものは、完全には死んでいないのだなあと思わされた。この人にも是非東京までがんばってほしい。
 ちなみにこの人には双子の弟がいて、トライアスロンの選手だったりする。兄弟二人してひとつの競技に満足できなかったらしい。

8月25日23時。


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