2020年09月18日
中国報復開始(九月十五日)
日本のマスコミの一部でも、取り上げられたチェコのビストルチル上院議長率いる代表団の台湾訪問だが、中にはチェコという小国が巨人中国に対して反旗を翻したというような報道もあって、単に知らないだけなのか、意図的に事実を省いているのか判断に悩むところである。繰り返しになるが、チェコ政府は大統領を筆頭に依然として中国べったりで、今回の上院議長の台湾訪問は、特に大統領と政権与党の社会民主党によって激しく非難されている。ANOとバビシュ首相も批判はしているがそこまで熱心でないのは、近づく地方議会選挙に向けて反中国派の票も狙っているからだろうか。
そのビストルチル氏に対して、顔をつぶされた形になったゼマン大統領が報復に出た。上院議長は、三権のうちの立法権の長の一人ということで、大統領、首相、下院議長と共に定期的に、国家の安全保障に関する会合を行っているらしい。その四者会合に、今後はビストルチル氏を呼ばないことを決定したのである。理由としては前回の会合で台湾訪問の話題になったときに、安全保障の観点から中止にしたほうがいいということになったのにそれを無視したというものを挙げている。
ただし、ビストルチル氏は、前回の会合の際は、武漢風邪の大流行が始まったときで、それ以外の話題は出なかったし、自身、まだ同僚故クベラ氏の遺志を継いで台湾に行くことを決めていなかったから、話題にしようもなかったと反論している。これは恐らくビストルチル氏の発言のほうが正しかろう。就任当初は、まだそこまで考えられる状態にないとか言っていた記憶もあるし。
ちょっと理解に苦しむのが、与党を支持する野党の共産党で、左翼特有の口を極めた強い批判を繰り返している。マルクスレーニン主義の本場ソ連共産党の直系にあたるチェコの共産党が、ソ連と袂を分かった中国共産党を支持するのはおかしくないか? 冷戦終結で共産党同士の対立、抗争も解消されたのだろうか。
中国からの報復は、日本でもちょっと報道されているようだが、まずピアノ制作会社のペトロフに対して行われた。中国から注文を受けて制作に入っているピアノが全部キャンセルになって、数百万コルナの損失になりそうだという。規模の小さな会社にとっては大損害だが、モノがモノで大量に生産販売するものではないので、絶対的な損失額としてはそれほど大きくはない。最終的にはどこぞの大金持ちが中国に納品される予定だったピアノをすべて購入してくれることになったらしい。それが台湾の人だったらきれいに落ちが付くのだが、チェコの人だったと思う。
これはまだ、実行はされていないようだが、中国に工場をいくつか持つチェコの自動車部分会社の経営者が、中国の取引先から、取り引きの停止をほのめかされたと語っていた。中国ならやりかねないし、実行されたら会社にとっては大きな打撃になるはずである。この会社、確かオロモウツに日系企業と合弁で工場を持っているから、経営の悪化なんてことにはなってほしくないのだけどなあ。
それから、代表者が、ビストルチル氏と共に台湾に向かった企業については、中国での活動が禁止された。こちらはすでに正式に決定されチェコ政府にも通達があったようだ。中国に臣従するゼマン大統領をいただくチェコ政府は、台湾訪問当時の中国政府の脅迫的な宣言にはさすがに抗議をしたが、こちらの決定には特に異を唱えていなかったと思う。
台湾訪問に同行した企業にしてみれば、ゼマン大統領の中国訪問でも期待したほどのチェコへの投資も、チェコ企業への市場開放も進まなかった結果、別の可能性を求めて台湾に向かい、ある程度の成果を上げて帰ってきたのだから、今更中国との関係は求めないだろう。
経済と政治は別物といいながら、経済的な関係を深め、経済的な結びつきが強くなると、政治的な理由で経済関係を人質にして脅迫する中国のやり口は、詐欺としか言いようがない。経済的な面ですら約束を守ろうとしない嘘つき国家は信用するに当たらないし、まともな外交関係も結べないと思うんだけどねえ。そんな国の元首を国賓として招待して機嫌を取ったところで何ももたらさない。
安易なゼマン批判というのはあまり好きではないのだけど、この点に関してだけは、ゼマン大統領を批判している人たちにもろ手を挙げて賛成する。
2020年9月16日14時30分。
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