2019年10月13日
勝った(十月十一日)
ブルタバ川のジョフィーン宮殿で、カレル・ゴットのお別れの式典が行われた金曜日、同じプラハのスラビアの本拠地、エデンのスタジアムで、サッカーのヨーロッパ選手権の予選、イングランドとの試合が行なわれた。3月のイングランドでの試合では、相手にびびりまくって、ボールを持たれるたびにパニカジって、0−5で惨敗している。あの試合はチェコ側から見ると全くいいところのない試合だった。
おまけに、特にディフェンスの選手に怪我人が続出して、スヒー、カデジャーベク、ノバークという国外のリーグで活躍する選手たちが招集されなかった。代わりに出場したのは、チェコリーグで活躍する3人、スラビアのボジルとツォウファルは前回の代表戦でも先発していたかな。そのサイド二人にスパルタ育ちで現在プルゼニュのブラベツが、チェルーストカと組んだ。
だから、今回もチェコが勝つのは難しいかと思っていたのだが、試合前からイングランド側が勝って当然だと、チェコのことをなめているのは明らかだった。試合前日プラハに入るのがかなり遅く、予定されていたエデンのスタジアムでの練習を不要とばかりに中止した。9月の試合でコソボに3点も取られていたのも、もしかしたらと思わせてくれた。コソボ相手にはチェコも舐めてかかった結果負けてしまったし。
試合が始まってすぐはチェコが攻めていたのだけど、これは3月の試合も確かそうだった。そして、すぐにイングランドに専制された。マソプストがペナルティエリア内で、相手選手の足を蹴って倒してPKを与えてしまったのである。残念ながら、バツリークがそれを止めるなんて奇跡は起こらなかった。ただ、前半のバツリークは、これ以外ほとんど仕事がなかった。チェコが攻勢に出て、意外なことにそれが続いたのである。
先制されたのが5分ぐらいで、10分ぐらいには、ヤンクトのコーナーキックから、チェルーストカが触ったボールがブラベツのところに落ち、ブラベツが膝で決めて同点に追いついた。試合後ブラベツはきれいなゴールではなかったけど、ゴールできたのはよかったと語っていた。その前のコーナーにつながるプレーといい、イングランドの守備が不安定さを露呈していた。ヤンクトが相手のハンドを主張してPKを求めてイエローをもらったのは余計だったけど、その直後のプレーで得点できたのだから御の字だった。
前半は、完全にチェコペースで、前からの積極的な守備でイングランドにほとんど攻めさせなかった。残念ながらチェコの攻撃も、攻め込んでシュートまではいくのだけど、正確さや威力に欠けて逆転にはつながらなかった。チェコにはリードすると守りに入って、ずるずると退いてしまう悪癖があるから、この時点で逆転できていなかったのはよかったのかもしれない。
後半に入ると、イングランドがボールを持って攻める時間帯も増え、二回だったかな、中盤からゴール前へのパス一本で決定的なチャンスを作られたが、バツリークが失点を防いだ。それ以外は、イングランドのプレーに、3月の試合のときほどのスピードも切れもなく、ディフェンスの選手たちが問題なく対処していた。これだけ前から積極的に守備に行って相手に攻めさせないチェコ代表って久しぶりに見た気がする。
チェコの攻撃も惜しいシュートは何本かあったし、チャンスなのにあとちょっとでシュートに持ち込めなかったというシーンもいくつかあって、全体的には完全にチェコが押していた。押していながらあっさり失点するのもチェコ代表なのだけど、この日は、最後まで守備が破綻せず、交替で入ったアメリカから呼ばれたオンドラーシェクが、85分ぐらいに、マソプストのお膳立てで代表デビュー戦で、初ゴールを決めて逆転に成功した。いつものクルメンチークではなく、オンドラーシェクを出場させた、いやそれ以前に召集した監督の手腕に脱帽である。ブリュックネル時代のラファタを思わせる衝撃のデビューだった。
その後は慌てて攻撃に出るイングランドをチェコがいなして試合終了。直前のコピツのシュートが決まっていれば3−1だったのだけど、キーパー正面に飛んでしまった。試合終了直前に逆転に成功したおかげで、チェコが完全に守りに入る前に試合終了になったのがよかった。久しぶりにチェコ代表の試合を見て、見てよかったと思える試合だった。
イングランドに長い元代表のペトル・チェフは試合後のインタビューで、期待はずれだったイングランドチームのことをかなり批判していた。負けなしが続いたことで、適当にやっていれば勝てるなんて思い込んでたんじゃないのなんてことを言っていたかな。3月の試合では、チェコとイングランドの間には、どうしようもないぐらい大きな差があるような気がしたけど、試合に挑む姿勢一つが結果がひっくり返るぐらいの差しかなかったのだ。
この試合のプレーを続けてくれれば、ヨーロッパ選手権の出場権を獲得できるのはもちろん、本選でも結構いいところまで行けそうである。問題は、ブリュックネル退任後のチェコ代表は、好調を維持できないと言うか、いい試合をした次の試合でぼろぼろの姿をさらすこともあるので、安心はできないのだけど。
共産主義の時代にソ連の横暴に耐えたチェコの人々の心のよりどころだったカレル・ゴットとスポーツの代表の活躍のうち、ゴットがなくなった今、スポーツの代表には、今まで以上の活躍が求められる。それが、チェコ社会の分断の進展を食い止める唯一の手のような気がしてきた。
2019年10月11日25時。
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