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2021年01月14日

「人魚の嘆き」本文vol,7/29

「人魚の嘆き」本文全29章 ファンブログ版 vol,7/29

「人魚の嘆き」VOL,7


貴公子の邸へ出入りする商人どもは、常にこういう注文を受けていながら、未だ嘗て彼の称賛を博する程の、立派な品をもたらした者はいませんでした。

中にはまた、物好きな貴公子の噂を聞いて、金が欲しさに諸所方々の国々から、得体のしれないまやかし物を、はるばると売りつけに来る奸商があります。

「御前さま、これは私が西安の老舗の庫から見つけ出した、千年も前の酒でございます。何でもこれは唐の都に、張皇后がお嗜みになったという、有名な鷰脳酒(えんのうしゅ)だと申します。又この方は、同じく唐の順宗皇帝がお飲みになった、龍膏酒だそうでございます。

嘘だと思召すならば、よく酒壺の古色をご覧下さいまし。千年前の封印が、この通り立派に残っております。」
こんな具合に持ち掛けるのを、人の悪い貴公子は、黙々として聞き終わってから、さて徐に皮肉を言いました。

「いや、お前の能弁には感心するが、己を騙そうという了見なら、もう少し物識りになるがいい。その酒壺は江南の南定窯という奴で、南宋以前にはなかった代物だ。唐の名酒が宋の陶器に封じてあるのは滑稽過ぎる。」

こう言われると、商人は一言もなく、冷や汗を掻いて引き下がってしまいます。実際、陶器に限らず、衣服でも宝石でも絵画でも刀剣でも、あらゆる美術工芸に関する貴公子の鑑識は、気味の悪いくらい該博で、支那中の考古学者と骨董家とが集まっても、到底彼の足元にすら及ばないことは確かでした。

女を売りにくる輩も、うるさい程多勢あって、めいめい勝手な手前味噌を並べ立てます。




引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊
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