スポンサードリンク 「人魚の嘆き」本文vol,11: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,11


「人魚の嘆き」VOL,11




上燈(しゃんてん)の晩から二三日過ぎた、或る日の夕方のことでした。貴公子は眺望のいい南面の露台に出て、榻(とう)にもたれながら、いつもの通り銀の煙管で阿片をすぱすぱと吸っていました。

ちょうど其処からは、市街の雑踏が手に取るように見おろされ、今しも一斉に明かりを入れた幾百千の燈篭は、白銀のような夕靄の中にぎらぎらと流れて、たそがれの舗面を鱗のように光らせています。

とある広小路の四つ角には、急拵えの戯台が出来て、旗を掲げ幟を翻し、けばけばしい扮装をした二人の俳優が、奏楽の音につれながら、数番の倣戯(つおーひー)を演じています。

長い間戸外の空気に遠ざかって、宮殿の奥に蟄居していた貴公子の眼には、ふと、これらの光景が、一種異様な、云わば珍しい外国の都に来たような、奇妙な感じを起させたのでありましょう、それとも又、阿片の煙に酔いしれて、途方もない幻覚を掴んだのでありましょう。

彼はいつの間にか手に持っていた煙管を置いて、露台の欄干に頬杖を突いたまま、見るとはなしに、巷の騒ぎを見つめているのです。

折柄其処へ通りかかった参々a々の群衆は、いずれもおどけた仮装行列の隊を組んで、恰も貴公子の憂愁を慰めるように、一際高く足拍子を踏み歓呼の声を放ちました。

続いて後ろから、さまざまな鳥魚の形に擬えた燈篭を翳(かざ)しながら、いわゆる行燈(ひんてん)の一団がやってきます。



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊

この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10471485
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。