スポンサードリンク 「人魚の嘆き」本文vol,9/29: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年01月14日

「人魚の嘆き」本文vol,9/29

「人魚の嘆き」本文全29章 ファンブログ版 vol,9/29

「人魚の嘆き」VOL,9


「成る程、四百餘州に二人とない美人と云うのは、この児のことかな。・・・・・・」
貴公子はやおら身を起こして、眠そうな眼でじろりじろりと二人を見詰めます。そうかと思うと、直ぐに鼻先でせせら笑って、

「・・・・・・だがしかし、四百餘州という所は、己の内より餘程女がいないと見える。お前も人買いを商売にするなら、後学のために己の妾を見てやってくれ。」

かく云う主人の声に応じて、例の七人の寵姫たちは、さながら飼い馴らされた鳩のように、忽ち綉簾(しゅうれん)の隙間から、ぞろぞろと其処へ姿を現すのです。

思い思いの羅綾を纏い、思い思いの掻頭(そうとう)を翳(かざ)したおのおのの寵姫の背後には、いずれも双鬟(そうかん)の美少年が、左右に二人ずつ扈従しながら、始終柄(え)の長い絳紗(こうさ)の団扇(うちわ)で、彼らの紅瞼に微風の漣
さざなみ)を送っています。

彼らは七人の女王の如く、光り輝く嬌笑を浮かべて、貴公子の周囲に彳立(てきりつ)したまま、互いに顔を見合わせて、いつまででも黙っています。

黙っていれば黙っているほど、彼らの美貌は一際鮮やかに照りわたり、いかほど欲に眼のくらんだ人買いでも、思わず知らず恍惚とせずにはいられません。

暫く呆然として、賛嘆の瞬きを続けた後、漸く我に返った人買いは、顧みて自分の売り物の哀れさ醜さに心付くと、挨拶もそこそこに、這(ほ)う這(ほ)うの体(てい)で邸を逃げ出してしまいます。

その後ろ影を見送りながら、主人の貴公子は張り合いのない顔つきをして、がっかりしたように、再び臥(ね)転んでしまうのでした。



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10469849
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。