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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,22

「人魚の嘆き」VOL,22


いかにも彼の云う通り、人魚と彼とは、容貌のうちに相似た特質のあることを、疾(と)うから貴公子は心付いていたのでした。賛嘆の程度こそ違え、彼は人魚に魅せられたように、この異人の人相にも少なからず感興を唆(そそ)られていたのです。


その男には人魚のような、圓満と繊姸(せんけん=ほっそりとして美しい。)とがないまでも、やがて其処へ到達し得る可能性が含まれているのです。





その男は、支那の国土に住んでいる、黄色い肌と、浅い顔とを持った人間に比較して、むしろ人魚の種族に近い生き物らしく思えました。


小さな汽船で、世界中の大洋を乗り回す西洋人はともかくも、その頃まで地の表面を「時間」と等しく無限な物と信じていた東洋の人間には、千里二千里の土地を行くのが、ほとんど百年二百年の時を生きるのと同じように、無事であると考えられていたのでした。





まして亜細亜の大国に育った貴公子は、さすがに好奇心の強い性癖を持ちながら、遥かな西の空にある欧羅巴という所を、鬼か蛇の棲む蛮界のように想像して、ついぞこれまで海外へ出て見ようなどと思ったことはないのです。

然るに今、生まれて始めて、しみじみと西洋人の風貌に接し、その
郷国の模様を聴いて、どうしてその儘(まま)黙っていることが出来ましょう。





「私は西洋というところを、そんなに貴い麗しい土地だとは知らなかった。お前の国の男たちが、悉くお前のような高尚な輪郭を持ち、お前の国の女たちが、悉く人魚のような白ル(はくせき)の皮膚を持っているなら、欧羅巴は何という浄い、慕わしい天国であろう。

どうぞ私を人魚と一緒に、お前の国へ連れて行ってくれ。そうして其処に住んでいる、優越な種族の仲間入りをさせてくれ。


私は支那の国に用はないのだ。南京の貴公子として世を終るより、お前の国の賤民となって死にたいのだ。
どうぞ私の頼みを聴いて、お前の乗る船へ伴ってくれ。」



引用書籍
陳舜臣著「人魚の嘆き」中央公論社刊




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