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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,12

「人魚の嘆き」VOL,12


そのとき、貴公子の視線は、一つの不思議な人影の上に注がれて、長い間熱心に、それを追いかけているようでした。

その男は、頭に天鵞絨(びろうど)の帽子を冠(かぶ)り、身に猩々日緋(しょうじょうひ)の羅紗の外套を纏い、足には真っ黒な皮の靴を穿(は)いて、一匹の驢馬にㇳも轎(かご)を曳かせて来るのです。  

そうしてせっかくの靴も帽子も外套も、長途の旅に綻びたものか、ところどころ穴が明いたり、色が褪せたりしています。

彼の前には、数十人の行燈(ひんてん)の人々が、五六間もあろうという大きい眼ざましい龍燈を担ぎながら、数十挺(てい=大きな枝状の物。の意味)の蝋燭を燃やして、えいやえいやと進んで行きますが、この龍燈の一群と、その男とは何の関係もないらしく、彼は時々立ち止まって、さもさも疲労したような溜息を洩らしつつ、往来の喧囂(けんごう)を眺めています。

初めのうちは、仮装行列の隊伍に後れた一人のように見えましたけれど、だんだん貴公子の邸へ近づくに随い、驢馬や轎車を従えている風体が、どうもそれとは受け取れません。

且その男は、ただに服装ばかりでなく、皮膚や毛髪や瞳の色まで、全く普通の人間と類を異にしているのでした。

「・・・・・・あれは多分、西洋の人種に違いあるまい。恐らく南洋の島国から漂泊してきた、阿蘭陀(オランダ)人か何かであろう。」
貴公子はそう思いました。




引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊


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