スポンサードリンク 「人魚の嘆き」本文vol,16: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,16

「人魚の嘆き」VOL,16


異人は相手が、自分の品物を買うか買わぬかということに就いて、少しも危惧を感じていないようでした。彼は貴公子の心を見抜いているような、確信のある言葉を以て語ったのです。

しかもそいいう彼の態度は、相手に何らの反感を与えなかったのみならず、むしろ止み難い憧憬の念をさえ起こさせました。貴公子は、彼の説明を聞かされているうちに、この男から必ず人魚を贖うべく、命令されているような気になりました。

自分がこの男から人魚を買うのは、予定の運命であるかのように覚えました。
「その商人の云ったことは真実だ。私はお前が、媽港の人から聞いた通りの人間だ。お前が私を捜したように、私もお前を捜していた。お前が私を信ずるように、私もお前を信じている。

私はお前の売り物を一応見分するまでもなく、お前が先(さっき)云うた代価で、今直ぐ人魚を買い取って上げる。」
貴公子のこの言葉は、彼自身ですらハッキリと意識しない内に、胸の底から込み上げて来て、思わず彼の唇に上ったのです。

そうして見る間に、約束通りの金剛石と紅宝石と孔雀と象牙とが、或いは五庫の櫃(ひつ)の中から、或いは宛囿(えんゆう)の檻の中から、庭前へ持ち運ばれて、石階の下に堆(うずたか)く積まれました。

異人は今更、貴公子の富の力に驚いたような素振りもなく、静かにそれらの宝物の数を調べた後、車上の轎(キョウ=車)の布簾を掲げて、其処に寂しく鎖(とざ)されていた、囚われの身の人魚の姿を示しました。



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊


この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10471575
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。