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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,19

「人魚の嘆き」VOL,19


どうかすると、眼球全体が水中に水の凝固した結晶体かと疑われるほど、淡藍色に澄み切っていながら、そこの方には甘い涼しい潤いを含んで、深い深い魂の奥から、絶えず「永遠」を見詰めているような、崇厳な光を潜ませています。

其処には人間のいかなる瞳よりも、幽玄にして杳遠(ようえん)な暈影(うんえい)が漂い、朗麗にして哀切な曜映がきらめいています。

それから又、彼の女の眉と鼻の形状は、一層気高い、一層異常な、「美」を構成しているように感ぜられました。それらの眉と鼻は、支那の人相学で貴ばれる新月眉とか、柳葉眉とか、伏犀鼻とか、胡羊鼻とかいう物とは、何処かしら様子が違っています。

けれども其処には習慣的な「美」を超越した、人間よりも神に近い美しさがあるのです。因習的な「圓満」を通り越した、生滅者に対する不滅の圓満があるのです。

そうして彼の女が長い項(うなじ)をものうげに動かす時、暗緑色の髪の毛は海藻のように振え悶えて、柔らかい波の底を揺らぎさまよい、或いは混沌とした雲霧の如く彼女の額に降りかかり、或いは絢爛(けんらん)な孔雀の尾の如く上方へ伸び広がります。

彼の女の持っている「圓満」は、唯に彼の女の容貌の上にあるばかりでなく、人間の形を成している肉体の総ての部分に認めることが出来ました。

頸から肩、肩から胸へ続いて行く曲線の優雅な起伏、模範的な均整を持つ両腕のしなやかさ、豊潤なようで程よく引き緊まった筋肉の、伸縮し彎屈する度毎に、魚類の敏捷と、獣類の健康と、女神の嬌態とが、奇怪極まる調和を作って、五彩の虹の交錯したような幻惑を起こさせます。

就中(なかんずく)、最も貴公子の眼を驚かし、最も貴公子の心を蕩かしたものは、実に彼の女の純白な、一点の濁りもない、皓潔無垢な皮膚の色でした。


引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊
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