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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,23

「人魚の嘆き」VOL,23


貴公子は熱心のあまり、異人の足下にひざまづいて、外套の裾を捕えながら、気が狂ったように説き立てました。すると異人は、薄気味の悪い微笑をもらして、貴公子の言葉を遮って云うのに、

「いやいや私は、むしろあなたが南京へ留まって、出来るだけ長く、哀れな人魚を愛してやることを、あなたのために臨みます。





たとえ欧羅巴の人間が、いか程美しい肌と顔とを持っていても、彼らは恐らく、この水甕の人魚以上にあなたを満足させることは出来ますまい。

この人魚には、欧羅巴人の理想とするすべての崇高と、すべての端麗とが具体化されているのです。あなたは此処に、この」生き物の姚冶(ようや)な姿に、欧羅巴人の詩と絵画との精髄をご覧になることが出来るのです。

この人魚こそは欧羅巴人の肉体が、あなたの官能を楽しませ、あなたの霊魂を酔わせ得る、『美』の絶頂を示しております。
あなたは彼の女の本国へ行っても、これ以上の美を求めることはできないでしょう。・・・・・・・・・」





その時、異人は何と思ったか、眉宇の間に悲しげな表情を浮かべて、嗟嘆するような調子になって、急に話題を転じました。


「そうして私はくれぐれも、あなたの幸福と長寿とを祈ります。私はあなたが、既に彼の女を恋していることを知っているのです。

人魚の恋を楽しむ者には早く禍が来るという、私の国の伝説を、あなたが実際に打ち破って下さることを祈るのです。

私は人魚の代償として、あなたの大切な命までも戴こうとは思いません。もしも私が、再び亜細亜の大陸を訪問する日のあった時、幸いあなたにお目にかかれたら、その折にこそ私はあなたをお連れ申して上げましょう。

・・・・・・・・・けれどもそれは、・・・・・・・・・けれどもそれは、・・・・・・・・・私はあなたがお気の毒でならないような気がします。」

云うかと思うと、異人は又も慇懃(いんぎん)な稽首の礼を施して、人魚の代わりに、山の如く積み上げた宝物の車を、以前の驢馬に曳かせながら、庭先の闇へ姿を消してしまいました。


引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊

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