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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,13

「人魚の嘆き」VOL,13


尤も、その頃は南京の町に、折々欧人の姿を見かける時代でしたが、こういう祭りの最中に、しかも行列の人波に揉まれながら、素晴らしく眼に立つ風俗をして、くたびれた足を引き摺って、乞食の如くさまようているその男の挙動には、どうしても、不審をもたずにはいられません。

そうして猶更不思議なことには、ちょうど露台の真下へ来かかると、彼は突然歩みを止めて、例のびろうどの帽子を脱いで、恭しく楼上の貴公子に挨拶をするのです。

見ると、その男は、驢馬に曳かせた車の方を指さしながら、貴公子に向かって、何かしきりにしゃべっています。
「この車の轎(キョウ=中国語でかごの意味)の中には、南洋の水底(みなぞこ)に住む、珍しい生物が這入(はい)っています。私はあなたの噂を聞いて、遠い熱帯の浜辺から、人魚を生け捕って来た者です。」

表の騒ぎが激しいために、はっきりとは聞き取れませんが、彼は覚束ない支那語を操って、こういう意味を語っているのでした。

何となく耳慣れない、おかしな訛りのある西人の唇から、「人魚」という言葉を聞いた時、貴公子は自分の胸が、我知らずときめくように感じました。

彼は勿論、生まれてから一遍も人魚という者を見たことはありません。けれども、今図らずも南洋の旅人の口から、「人魚」という支那語が、一種独特なUmlautを以て発音されると、それに一段の神秘な色が籠っているように思われたのです。

「これ、これ、誰か表へ行って、彼処に立っている紅毛の異人を、急いで邸へ呼び入れてくれ。」
貴公子は例になくあわただしい口吻で、近侍の姣童に云いつけました。


引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊
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