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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,26

「人魚の嘆き」VOL,26



「・・・・・・・・・私は今、あなたが恵んで下すった一杯の酒の力を借りて、ようよう人間の言葉を語る通力を回復しました。私の故郷は、和蘭人の話したように、ヨーロッパの地中海にあるのです。

あなたがこの後、西洋へ入らっしゃることがあるとしたら、必ず南欧の伊太利(イタリア)という、美しいうちにも殊に美しい、絵のような景色の国をお訪ねなさるでしょう。

その折もし、船に乗ってメッシナの海峡を過ぎ、ナポリの港の沖合をお通りになることがあったら、その辺こそ我れ我れ人魚の一族が、古くから棲息している処なのです。

昔は船人がその近海を航すると、世にも妙なる人魚の歌が何処からともなく響いて来て、いつの間にやら彼等を底知れぬ水の深みへ誘い入れたと申します。

私はかくもなつかしい自分の住み家を持ちながら、ちょうど去年の四月の末、暖かい春の潮に乗せられて、ついうかうかと南洋の島国まで迷うて来たのです。

そうして、とある浜辺の椰子の葉蔭に鰭を休めている際に、口惜しくも人間の獲物となって、亜細亜の国々の市場という市場に、恥ずかしい肌を曝しました。

貴公子よ、どうぞ私を憐れんで、一刻も早く私の体を、広々とした自由な海へ放して下さい。たとえ私がいかほどの神通力を具えていても、窮屈な水瓶の中に捕らわれていては、どうすることも出来ないのです。

私の命と、私の美貌とは、次第次第に衰えて行くばかりなのです。あなたが是非とも人魚の魔法をご覧になりたいと思うなら、どうぞ私を恋いしい故郷へ帰して下さい。」



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊

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