スポンサードリンク 「人魚の嘆き」本文vol,24: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,24

人魚の嘆き」VOL,24



貴公子の邸は、人魚が買われてから俄かにひっそりと静かになりました。七人の妾は自分たちの綉房に入れられたきり、主人の前へ召し出される機会を失い、夜な夜な楼上楼下を騒がせた歌舞宴楽の響きも止んで、宮殿に召し使われる人々は皆溜息をつくばかりです。


「あの異人は何という忌ま忌ましい、胡乱(うろん=怪しい)な男だろう。そうして何という奇体な魔物を売りつけて行ったのだろう。今に何かしら間違いがなければいいが。」





彼等は互いに相顧みて囁き合いました。誰一人も、水甕の据えてある内房の張を明けて、人魚の傍へ近寄る者はいませんでした。





近寄る者は主人の貴公子ばかりなのです。ガラスの境界一枚を隔てて、水の中に喘(あえ)ぐ人魚と、水の外に悶える人間とは、終日、黙々と差し向いながら、一人は水の外に出られぬ運命を嘆き、一人は水の中に這入られぬ不自由を恨んで、さびしくあじきなく時を送って行くのでした。





折々、貴公子は遣る瀬無げにガラスの周囲を回って、せめては彼の女に半身なりとも、甕(かめ)の外へ肌を曝(さら)してくれるように頼みます。
しかし人魚は、貴公子が近寄れば近寄るほど、ますます固く肩を屈(こご)めて、さながら物に怖じたように水底(みなぞこ)へひれ伏してしまいます。


夜になると、彼の女の眼から落つる涙は、成る程異人の云ったように真珠色の光明を放って、暗黒な室内に蛍の如く栄々(えいえい)と輝きます。

その青白い明るい雫(しずく)が、点々とこぼれて水中を移動する時、さらでも妖姣(ようこう)な彼の女の肢体は、大空の星に包まれた嫦娥(じょうが)のように浄く気高く、夜陰の鬼火に照らされた幽霊のように凄く悽く(いたく=心に悲しみがこみあげる、の意味)呪わしく、惻々(そくそく)として貴公子の心に迫りました。


引用書籍
陳舜臣「人魚の嘆き」中央公論社刊

この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10471598
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。