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2021年01月15日

「人魚の嘆き」本文vol,18

人魚の嘆き」VOL,18



「・・・・・・私は地上の人間に生まれることが、この世の中での一番幸せな運命だと思っていた。けれども大洋の水の底に、かくまで微妙な生き物の住む不思議な世界があるならば、私はむしろ人間よりも人魚の種族に堕落したい。

あの綺麗な鱗の衣(きぬ)を腰に纏うて、このような海の美女(たおやめ)と、永劫の恋を楽しみたい。この美女(たおやめ)の涼しい眸や、雪白の肌に比べると、私の座右に仕えている七人の妾たちは、そういったまあ何という醜い、卑しい姿を持っているのだろう。何という平凡な、古臭い容子をしているのだろう。」

そう云った時、人魚は何を思ったか、ゆらりと尾鰭(おびれ)を振り動かして、俯向けていた顔を擡(もた)げながら、貴公子の姿をしげしげと見守りました。

博学な貴公子の鑑識は、書画骨董や工芸品ばかりでなく、支那に古くから伝わっている観相術術にも精通していましたが、彼は今ようやく人魚の容貌を眺めて、その骨相を案ずるのに、到底自分の習い覚えた
学問の範囲では、判断することが出来ないような稀有(けう)な特長を発見しました。




彼の女は成る程、絵に画いた人魚のように、魚の下半身と人間の上半身とを持っているには違いありません。
けれどもその上半身の人間の部分、骨組みだの、肉付きだの、顔だちだの、それらの局所を一々詳細に注意すると、日常自分たちが見慣れている地上の人間の体とは、全く調子を異にしているのです。

彼が習得した観相術の知識は、其処に応用の余地がない程、彼の女の輪郭は普通の女と趣を変えているのです。たとえば彼の女の、極度に妖婉な瞳の色と形とは、彼が知っている人相学のいかなる種類にも適合しません。その瞳は、ガラス張りの器に盛られた清冽な水を透して、あたかも燐(りん)のように青く大きく輝いています。



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊


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