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2021年01月14日

「人魚の嘆き」本文vol,1/29〜4/29

「人魚の嘆き」本文紹介VOL,1〜4



人魚の嘆きVOL1〜4紹介 谷崎潤一郎著、中央公論社刊


人魚の嘆きVOL,4 




人魚の嘆きVOL,4

何とかして今のうちに、現在自分の持っている「うら若さ」の消えやらぬ間(ま)に、もう一遍たるんだ生活を引き絞って、冷えかかった胸の奥に熱湯のような感情を沸騰させたい。連夜の宴楽、連日の演技に浸りながら、猶(なお)倦(う)む(=飽きる、の意味。)ことを知らなかった二、三年前の興奮した心持ちに、どうかして今一度到達したい。

などと焦っては見るのですが、 別段今日になって、彼を有頂天にさせるような、香辣(こうらつ=激しい、の意味。)な刺激もなければ斬新な方法もないのです。

もはや、歓楽の絶頂を極め、痴狂(ちきょう)の数々を経験しつくした彼に取って、もうそれ以上の変わった遊びが、この世に存在する筈はありませんでした。

そこで


貴公子は仕方なしに、自分の家の酒庫にある、珍しい酒を残らず卓上へ持ち来らせ、又町中の教坊(=寺)に、四方の国々から寄り集まった美女の内で、殊更才色のめでたい者を七人ばかり択び出させ、それを自分の妾に直して、各々七つの綉房(しゅうぼう)に住まわせました。

引用書籍
谷崎潤一郎著「人魚の嘆き」中央公論社刊




人魚の嘆きVOL,3


世ちゅう(漢字みつからず)は、こういう境遇に身を委(ゆだ)ねて、漸く総角(あげまき)の徐(と)れた頃から、いつとはなしに遊里のお酒を飲み初め、その時分の言葉で云う、窃玉偸香(せつぎょくとうこう)

(※ 偸香=とうこう。男女の密通、の意味。)の味を覚えて、二十二、三の歳までには、およそ世の中の放蕩という放蕩、贅沢という贅沢の限りをし尽くしてしまいました。

そのせいか近頃は、頭が何となくぼんやりして、何処へ行っても面白くないので、終日邸(やしき)に籠居したまま、うつらうつらと無聊(ぶりょう)な月日を送っています。

「どうだい君、この頃はめっきり元気が衰えたようだが、ちと町の方へ遊びに出たらいいじゃないか。まだ君なんぞは、道楽に飽きる年でもないようだぜ。」

悪友の誰彼(だれかれ)が、こう云って誘いに来ると、いつも貴公子は物憂げな瞳を据えて、高慢らしくせせら笑って答えるのです。

「うん、・・・・・・己(おれ)だってまだ道楽に飽きてはいない。しかし遊びに出たところで、何が面白いことがあるんだい。己にはもう、有りふれた町の女や酒の味が、すっかり鼻に着いているんだ。ほんとうに愉快なことがありさえすれば、己はいつでもお供をするが・・・・・・」



貴公子の立場から見ると、年が年中、同じような色里の女に溺れて、千篇一律の放蕩を謳歌している悪友どもの生活が、寧(むし)ろ不憫
(ふびん)に思われることさえありました。

もしも女に溺れるならば、普通以上の女でありたい。もし放蕩を謳歌するなら、常に新しい放蕩でありたい。

貴公子の心の底には、こういう欲望が燃えているのに、その欲望を満足させる恰好な目標が見当たらないので、よんどころなく彼は閑散な時を過ごしているのでした。

しかし、世ちゅうの財産は無尽蔵でも、彼の寿命は元より限りがありますから、そういつまでも美しい「うら若さ」を保つ訳には行きません。貴公子もそれを考えると、急に歓楽が欲しくなって、ぐずぐずしてはいられないような気分に襲われることがあります。



引用書籍
谷崎潤一郎「人魚の嘆き」中央公論社刊




「人魚の嘆き」VOL,2


彼の持っている夥しい資材や、秀麗な眉目や、明敏な頭脳や、それ等の特長の一つを取って比べても、南京中の青年のうちで、彼の仕合せに匹敵する者はいませんでした。

彼を相手に豪奢な遊びを競い合い、教坊の美妓を奪い合い、詩文の優劣を争う男は、誰も彼も悉く打ち負かされてしまいました。

そうして南京に有りと有らゆる、煙花城中の婦女の願いは、たとえ一と月半月なりと、あの美しい貴公子を自分の情人にすることでした。



引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊



「人魚の嘆き」VOL,1

むかしむかし、まだ愛親覚羅氏の王朝が、六月の牡丹のように栄え輝いていた時分、支那の大都の南京に孟世ちゅう(=もうせいちゅう※ 漢字見つからず。)といううら若い貴公子が住んでいました。

この貴公子の父なる人は、一と頃北京の朝廷に仕えて、乾隆の帝のおん覚えめでたく、人の羨むような手柄を著す代りには、人から排斥されるような巨万のとみ富をも拵(こしら)えて、一人息子の世ちゅうが幼い折に、この世を去ってしまいました。すると間もなく、貴公子の母なる人も父の跡を追うたので、取り残された孤児の世ちゅうは、自然と山のような金銀財宝を、独り占めする身の上となったのです。

年が若くて、金があって、おまけに由緒ある家門の誉を受け継いだ彼は、もうそれだけでも充分仕合わせな人間でした。然るに仕合わせは
それのみならず、世にも珍しい美貌と才智とが、この貴公子の顔と心とに恵まれていたのです。


引用書籍
谷崎潤一郎著「人魚の嘆き」中央公論社刊
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