ネコと贅沢　ボンビーライフ

食べ物っていうのは好みの問題だから
とやかくいうのは筋違いだし、
自分で自分の首を絞める事にもなるから
批判じみたことはいいたくはないのだが、
近頃のパンの天然酵母推しが行き過ぎていて
何だこりゃ？というものまで出てきている。

先日街中に行った時、
せっかくだからとデパ地下をめぐって
人気のありそうなパン屋数件に入って買ってみた。

薪窯で焼く天然酵母のパンが売りの店で
ライ麦入りのパンとクロワッサンを買った。

まあ薪窯だから平焼きということになる。
自ずと表面の固いパンになるのは分かっていたが、
それにしても硬すぎる。

ライ麦入のパンは硬さもさることながら
酸味が強すぎて、
これは何かの酸味に似ているなぁ、と考えを巡らせてみると
思い当たるものがあった。
トマトペーストだ。
ナポリタンなどを作る際に
酸味と旨味を増すためにケチャップとともに使うアレだ。
まるでパンにたっぷりとトマトペーストを塗って食べているような
強い酸味のあるパンなのだ。

はたして天然酵母だけで
これだけの強い酸味が生まれるものであろうか。

バターを塗ってみたが
見事にバターの風味が殺された。
全くバターの味がしないのだ。
それならばとクリームチーズを塗ってみたのだが、
チーズの酸味とパンの酸味がぶつかり合って
酸味が消えたし、チーズの風味も感じなくなった。

そういったパンだと思えばいいのだろう。
とても主食向けではないので
食べ手を選ぶクセのあるパンである。

クロワッサンを買った際に店員から
「エシレバターを使ったものもありますがいかがでしょう」と言われたので
エシレバターと国産バターの両方を買ってみた。
国産バターのクロワッサンが２００円で、
これでも十分高いと思うのだが、
エシレバターのクロワッサンは３５０円もした。

現状のエシレバターの値段を考えれば
この値段も致し方ないのだろうが、
問題なのはエシレバターのクロワッサンに
バターの風味がないことだ。
国産バターのクロワッサンにもバターの風味がないから
この店の酵母はクロワッサン向きではないということになる。

消費者の多くは天然酵母のパンを有り難がるが、
天然酵母は万能ではない。
相性というものがあるから
粉の種類や副材料によって酵母を変えなければ
素材の良さを失うことになる。

しかもこの店はクロワッサンも薪窯による平焼きをしているようで
クロワッサンの持ち味であるはずの
ハラハラとした層を感じることができず、
バリバリとした硬いせんべいのようなパンになってしまっている。

国産バターもエシレバターも
どちらもバターの風味の感じないクロワッサンで、
しかもどちらも同じようにバリバリの食感。
値段の違いが全くわからなかった。

つまりこの店の店主は
パンに対する哲学が私とは違うようなのだ。