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2024年01月07日

ここが知りたい! デジタル遺品 デジタルの遺品・資産を開く! 託す! 隠す! 』

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死後、故人が遺した電子データを指す「デジタル遺品」という言葉をご存じですか?。

新しい概念ではあるのですが、この言葉、なんとなく心をざわざわさせるものがあるのでは。

PC、スマホを使うものなら誰しも、ハードディスクに入っている個人情報など私的なデータ、日記的なつれづれ、また心に浮かぶよしなしごとを書き付けたSNSアカウント等々について「もし自分が死んだら」と、そこはかとない不安をもつものがあると思います(このブログはどうなるだろう?)。

じつは遺された家族らも一苦労。故人のネット上でどのような行動をしていたかは把握できず、何が残っているかわからない。

放置して問題のないものならよいが、本人や家族の名誉におおいに問題のある情報がネットの海に永くたゆたい、消去することができなくなることも考えられるのです。

そして、金銭的価値のあるものは文字通りの「遺産」。

最近は、紙の通帳のないネット銀行のアカウントも増え、ネット証券やFXのアカウント内の資産、ビットコインをはじめとした仮装通貨もあります

これらは法的には当然相続されることになりますが、制度的にも技術的にも、デジタル遺産をどう見つけ、遺族が引き継ぐのか、整備されていない現状があります

そこで紹介したい一冊が

デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた―身内が亡くなったときのスマホ・パソコン・SNS・ネット証券・暗号資産等への対応や、デジタル終活がわかる本』(技術評論社)

本書はそのデジタル遺品対策の実用書。

著者は、葬儀業界の経験もあるフリーの雑誌記者古田雄介氏。相続、終活などに強い弁護士(日本デジタル終活協会代表理事)、伊勢田 篤史氏との共著です

本書ではデジタル遺品の対象物ごとに「探しかた」「しまいかた(処理のしかた)」「残し方」を解説。関連する法律を弁護士が補足していく構成

デバイス内に格納されたデータ、クラウド上のデータ、そして故人が登録した各種WEBサービスのアカウント等、デジタル遺品となりうるものをできるかぎり挙げて、相続対策を考えていきます。

SNSについても、フェイスブックの「追悼アカウント」をはじめ、Twitter、インスタグラムなど死者のアカウントに関する各社の扱いを解説。クラウドソーシング、アフィリエイトサイトの報酬の扱いにも言及する。

巻末にはチェックリストも掲載してあり便利です。

本書を読んで思うことは、当人がなくなってから遺族が行うことには限界もあり、最も大切なのは生前対策であること。

デジタル遺産のリスト作り、フォルダのアクセス権の設定等、死後に遺すもの、託すもの、放置するもの、隠すものなどに整理するための方法には目からうろこの連続です。

デジタル機器を持つ高齢者は今後確実に増えていくでしょう。デジタル遺品は量的にこれから爆発に増えるのは確実であり、また新しい技術が次々生まれる分野だけに、

各界の専門家による議論が煮詰まり、さらにどんどん知識を更新していく必要はありそう。

ということで私が死んだらこのデータは、というざわざわは、本書を読んでも、そう簡単に止むことないのですが、問題の所在を教えてくれ、対策の道筋を見極めるのに有益な一冊となっています

ぜひご一読を

アマゾンで購入




posted by ちゃんにし at 15:20 | Comment(0) | 書評

2023年12月28日

【ブックレビュー】市販薬は成分表示だけ見ればいい

今日は本の紹介。

最近買った新刊本で非常に役に立ったものを紹介します。

増補改訂版 市販薬は成分表示だけ見ればいい: 専門家が教える 最新成分から漢方まで “もっと効く”薬の選び方

という本です。



この本はいわゆる「お薬事典」

風邪や胃腸薬を始め、目薬や湿布、かゆみどめ、スキンケア、ビタミン剤に至るまで、定番の家庭常備薬の成分に注目して、どのような症状の時、何が入った薬を使えばよいのか、わかりやすく解説してあります

薬は病気を治癒するためのものではなく、不快な症状を抑えるためのもの。
自分が悩まされている症状をよく見極めて、それを抑える成分・処方が施された薬を選ぶべきです。

実際の商品名が入っているのがすごく使いやすいです



おなじ「風邪薬」のジャンルでも、成分はいろいろ

CMなんかで「ねむくなりにくい」「〇〇をねらいうち」みたいなコピーとして知っていても、実際どう違うのか、ということはわかりにくい

この本を読むと「ああ、あのコピーってこういうことか」と色々発見が。

また、熱や下痢など、体を治そうとしている体の働きを、やみくもに抑えることなく、ケースに分け、本当に薬が必要な場合についての考え方を教えてくれます

著者は登録販売者、監修は薬剤師。家庭薬の事なら、お医者さんより詳しいですよね。

ただし、著者さんは、ドラッグストアに常駐している薬剤師さんや登録販売者は、勉強不足の人が多いと手厳しい。。

そんな薬のプロが、宣伝的にではなく、かといって薬に関する不安をあおるのでもなく(そういう本も多いけど)、深い知見をもとにリアルに家庭薬を論じています

とはいえ、読み物としても通読できてしまうわかりやすい文章です。

そして、本書がとくに類書と異なるところは漢方についての情報が充実していること。

ドラッグストアで買える漢方を、効果とともに紹介しています

西洋医学と東洋医学の考え方の違いとか、面白いです

個人的には、病気になったら病院にいくけれど、なんとなく身体が優れない、東洋医学で言う「未病」の状態の時は、漢方を使いたいかな。

風邪気味なときは、せきとか熱とかを抑える薬より、葛根湯で体をあっためたりしています。

まだまだ知らないことがいっぱいで、もっと詳しくなりたいな、と思いました。何回も読みたいですね

一家に一冊の「市販薬は成分表示だけ見ればいい




posted by ちゃんにし at 17:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評

2023年12月19日

【ブックレビュー】売上アップの方策は営業から展示会へ?『中小企業の展示会マニュアル』







日本の中小製造業は、厳しい状況に置かれています。国内市場の縮小とアジア各国企業との価格競争のなか、販路拡大の手を打つことが急務でありながら手をこまねいている状態。

垂直統合の生産体制の象徴でもある自動車城下町などにみられる一社だけの下請企業にも危機的な状態が露になっています。

しかしいうまでもなく、新規開拓は簡単ではありません。BtoBで飛び込み営業は無理があるし、ホームページはそもそも誰もアクセスしてくれない。

昨今数多く開催されるビジネスマッチングのイベントは、会社の営業担当者だらけで、ひたすらに自社の売り込みする実りのない場になりがちです。

仮に自社製品やサービスに興味を示す人がいても、結局値引きの話しかされない……。

経営者の集まりと聞いて行ったら怪しい投資話を持ち掛ける人物だらけ……。

なんてことも

しかし実は、ほとんどの会社で、高いお金を払ってでも頼みたいことというのはあるものです。

「なんでもやります」式のアピールではなく「その困りごとを解決できます」とピンポイントで遡及できる場が必要であり、それが「展示会」なのだと主張するのが本書「中小企業の展示会マニュアル」。

本書は元エンジニアのコンサルタントである著者が、中小企業の販路拡大、新規顧客獲得の方策として展示会出展のノウハウを手ほどきします。

ブースづくりからプレゼン、POP、サンプル、ノベルティやパンフづくり、名刺交換した人へのフォローまでカバーする実用的な内容です。

著者によると、展示会に訪れるのは、ひたすらに値引きを要求する(傾向のある)購買担当ではなく、主に技術者であり、何かしらの技術的課題をもっています。

そこで本書では具体的に、「バリが出ない金属加工技術」を例にとり、キャッチコピーをどうつけるか、などアピール方法を解説していきます。

ただし、漫然と出品するだけでは結果を得ることはできないとも警告。展示会のブースづくりのプロセスは、自社の何に競争力、価値の源泉があるのか、を見つめなおす過程でもあります。

おもに技術系企業に向けた書籍ではあるのですが、すべての中小企業が「受け身」の下請け体質から脱し、自らの強みを市場に向けアピールするという、普遍的な課題解決であるように感じられます。

本書の発刊は2018年で、少し古くリアルイベントが制限されるコロナ禍以前の本ですが、現在もまだまだ有効な知見が豊富に含まれています



posted by ちゃんにし at 11:00 | Comment(0) | 書評

2023年12月05日

【ブックレビュー】起業・フリーランスでも意外と使える歴史ある団体を紹介『経営者のための商工会・商工会議所150%トコトン活用術』

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経営者のための商工会・商工会議所150%トコトン活用術 (DOBOOKS)(Amazon)






商工会議所・商工会ーー。誰しも名前を聞いたことはあるが、何をしているか知らない人が多いのではないでしょうか。

経営者の親睦団体みたいなもの?
入会すると何かいいことがあるの?
日商簿記の資格試験は関係ある?
そもそも、商工会議所と商工会は違うの?





加えて、とくに若い起業家であれば、こういった「おじさん」のにおいがする集団とのつながりは避けたがる人が多いのかもしれません。なんか役所っぽいし、めんどくさそうだし。

しかし、会社経営者、あるいは個人事業主・フリーランスでも、商工会議所・商工会の存在は知っておいたほうが良いかもしれません。これが意外と(?)使えそう。そのことを知るためにおすすめするのが、商工会議所、および商工会で利用できるサービスを網羅的に解説する『経営者のための商工会・商工会議所150%トコトン活用術』(大田 一喜 著、同文舘出版)。



本書で紹介される商工会議所・商工会のサービスは多岐にわたる。中心となるのは、広範な経営相談。創業、資金繰り・融資、会計税務、労務、法務、許認可、助成金など、経営上の諸問題に相談員が対応、専門家の派遣もしてくれます。また、経営者の退職金のための共済、PL法や情報漏洩に関する保険も運営している。そして親睦団体としての会員同士の交流(いわゆる「人脈」づくり)、ビジネスマッチングもおおきなメリットといえます。

なんとなくつきまとう「役所っぽさ」の要因は、法的に定められ、経済産業省所轄の団体であることだと思われますが、それはまたメリットでもあります。役所に近いので産業政策や税制の変化をキャッチでき、助成金や政府系金融機関の融資などの窓口として、制度上組み込まれている場合もあります。年会費も1万円台から。活用すれば費用対効果は高そうです。




それにしても、商工会議所・商工会についての情報を客観的に、ここまで網羅的に取り上げた実用書は少ない。しいて類書として挙げられるのは「小さな会社のつくり方」みたいな、創業ノウハウ本ではないでしょうか。というのも、商工会・商工会議所の事業は、創業準備から、会社運営、M&Aや事業承継、廃業まで、経営一般で起こる問題をまんべんなくカヴァーしているので、同会の業務を挙げていくだけで、そのまま中小企業を営んでいくためのいろはが学べてしまいます。

本書は、商工会議所・商工会に興味がある人だけではなく、起業を検討する方、新規事業を検討する会社、徒手空拳の経営に限界を感じている経営者等々が、中小事業の経営のポイント・課題をチェックリストのように総ざらいし、見つめなおすためにもつかえそうです。そのうえで、諸課題を解決するために、両会の入会にメリットがあるのか検討してみてはいかがでしょうか。




posted by ちゃんにし at 12:00 | Comment(0) | 書評

2023年12月03日

【ブックレビュー】料理のコツが詰まった新刊おすすめ本「おつまみが晩ごはん!」

今日は、最近発刊のおすすめの本を紹介します。それは

おつまみが晩ごはん!


という本。

本書のコンセプトは、その名の通り、晩ごはんとして成立してしまうおつまみ。たしかに、夜遅く帰ってきたり、夕方に軽く食べてたりすると、作るのも食べるのも、それほどしたくない時ってあります。

そんなとき、チャチャっと作って、晩酌しながら食べ、適度におなかももつ。といったものができれば、便利だし、また愉しいものです

よく「ちょっとした材料でおいしいおつまみを作る」なんて、料理上手のたとえで使われるけど、確かにおつまみってセンスがでますよね。

素材を活かしながら、しっかりインパクトのある味をつけ、しかも変化のバリエーションが付けられるというか。そういうことができる人は尊敬しちゃいます

あと、おつまみと軽いお酒で夕食を済ませると、実はダイエットになるんですよね。もちろん、栄養バランスは考えなくてはならないけれど、炭水化物の食べ過ぎなんかも防げる。

本書は、そんなおつまみ上手になるためのレシピを多数紹介しています

ほとんどがめちゃめちゃ簡単な調理で、実用的。レンジだけで作れちゃうものも多い。レシピはここでは詳しく紹介できないものの、レンジだけで作る「レンチンマーボ豆腐」には思わずニヤリとしました。

とくに、学んだのはお魚とか野菜とかを、ちょっとしたタレであえるみたいな料理。こういうのですよ、うまい作り方を知りたいのは!

本書の優れているところは、紹介している料理をまんままねするのはもちろん、たれを作るときのオリーブオイル、ごま油などの使い方とか、おつまみ上手になる考え方、アイデアの「種」が詰まっている感じ。

アンチョビとニンニクを混ぜるとイタリア感がでる、みたいな

応用が利きそうなものが多いんです

まだ、数品しか試していないけど、何度も読み返してアイデアが生まれそうな本です。是非一読を




posted by ちゃんにし at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評

2023年04月08日

【ブックレビュー】これ1冊で大丈夫! 仮想通貨の確定申告がわかる本 小山晃弘 ホリエモンもおすすめ



『ビットコイン』をはじめとする仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)が、投資対象として、また決済手段としても日増しに存在感を高めています。

しかし、あたらしい「お金」である仮想通貨は旧来の制度・法律としばしば摩擦をきたす存在でもあります。

立法・行政の、暗号資産への法整備・運用は後手後手に回っている印象です。

中でも制度上、摩擦音をギシギシ立てているのが、お金ときわめて関係が深い「税制」。

仮想通貨によって得た所得を確実に捕捉し、脱税を取り締まることは、各国税務当局の大きな課題となっています




仮想通貨には税金かかるの?


ところで、みなさまはこのような素朴な疑問をもったことはありませんか。

「仮想通貨での取引に税金がかかるの?」

たとえば、所有する仮想通貨が急騰、売却により巨額の利益を得た「億り人」が話題になることは多いですが、売却して「円」などの通貨を得た時、巨額の税金がかかることはだれしも理解できます。

それを申告しなかったり、過少に申告すれば、当然、悪質な脱税となるのは当然です。

しかし、仮想通貨は、それそのものが「お金」としての機能を持ちます。決済手段としても利用されていることからもわかるように、一度も「円」などの通貨に換えられないまま、サイバー空間をぐるぐる回ります。

その場合、いつどこで、いくらの税がかかるのか、あるいはかからないのか。

税制の理解がないことで、申告すべき時点で申告しなかったり、税額の計算を誤るなどの事例が多発しているんですね。

そのように、知らず知らずのうちに違法性を問われることを防ぐため、税務申告について基本的なルールを抑えておく必要があります。そこで紹介したいのがこの本


仮想通貨の取引は物々交換?

本書は、仮想通貨の申告実務に精通する税理士が、仮想通貨取引にかかる個人・法人の税のルール、税務申告について解説する内容。解説はひじょうにわかりやすく、税制に詳しくなくても基本から学ぶことができます。




本書では、仮想通貨の税制上の位置づけについて説明していますが、最初に知っておくべきことは、そもそも仮想通貨が、日本銀行券のような「通貨」なのか否か、ということのようです。

日本の国税当局は現在、原則として仮想通貨はお金ではなく「もの」として扱っています。

ということは

仮想通貨を円などのお金で買うだけなら、単に物を買っているだけなので所得は発生しませんが、それを売って利益を得たら課税対象ということになります。

なるほど、これは当然だ。

しかし、それだけでは事は収まらないのは冒頭に申し上げた通り。仮想通貨で仮想通貨を買ったとき、仮想通貨により商品を買ったりということもある

これらはいわば「物々交換」。

物々交換で「利益」はあるのか、いつ発生するのか、どうやって「円」に換算するのか。興味が湧いてきますよね。

あるいは報酬や給料を仮想通貨でもらう場合もあるかもしれません。この場合は「現物支給」みたいなものでしょうか。

そのほか、所有する仮想通貨の価値が著しく上がった時や、海外の取引所を利用したときなどなど、個人や法人が行う仮想通貨の取引で起こる様々なケースを取り上げ、「そもそも」の部分から論点を整理、課税の有無とその根拠、所得の計算方法をみていきます。また、法人化や海外での取引等の節税対策にも触れます。


実務書とは言っても、通読が苦にならない簡潔な記述と整理された章立て。仮想通貨の税務の枠組み、全体像を大づかみするのにもってこいです。






税務を通し「仮想通貨とは?」と基礎からお勉強


そして本書の面白いところは、税務のお話を通し、仮想通貨そのものの入門書にもなっていること。

税務解説と絡めながら、ビットコインの歴史、ブロックチェーンの仕組み、「マイニング」「アルトコイン」「フォーク」など独特の用語、取引方法などなど、基本がわかります。用語索引がついているのもうれしいところです。仮想通貨に関する用語は、いわばすべて「新語」。日々新たに現れる言葉を知ることでトレンドが見えてきます。

これからますます必要となるであろう、仮想通貨の取引、税務の基礎を平易に理解できる本書は、仮想通貨の確定申告を控えているひとはもちろん、仮想通貨を持っていないがなんとなく興味がある人、さっそく投資に乗り出してみようという人に有益な知識を与えてくれます。
posted by ちゃんにし at 16:06 | TrackBack(0) | 書評

2022年11月27日

元AKBのアパレル企業はなぜ倒産した?事例満載の本『あの会社はこうして潰れた』

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ニュースで話題になる「倒産」。実はこの言葉にはっきりした定義はないそうです。

破産や民事再生等、法的整理の適用があれば、官報に載るなど倒産の状態であることがはっきりと示されます

しかし実際には、倒産と一般に認識される瞬間は、不渡りによる銀行取引の停止時。そしてその情報は、調査会社の現場の取材によってつかまれることが多いそうです。


本書『あの会社はこうして潰れた 日経プレミアシリーズ』(帝国データバンク情報部藤森徹著、日本経済新聞社)は、日本の企業調査会社のトップカンパニーである帝国データバンクの調査員が、有名企業・老舗企業が経営危機に陥り、倒産していく過程を描いたレポート。センセーショナルな語りではなく、しごく淡々と会社が「潰れる」さまを描写していきます。



与信サービスを本業とする調査会社だけに、その眼は客観的で冷徹。

取り上げられるのは、老舗の呉服屋、百貨店、ゲームセンターなど、経済・社会状況の変化への対応が遅れた企業、二代目社長の経営多角化や金融投資で失敗した企業、横領や着服などの社内不正で傾いた企業、自転車操業状態のファンド、取り込み詐欺など不正に図られ倒産した企業等々。

元AKB48の篠田麻里子さんをデザイナーに据えたアパレル企業「ricori」等、一時的な話題をさらった企業なども取り上げられていて興味深くよめます。

これらの例からは、倒産企業に共通する普遍的な特徴、危ない兆候などが読み取れそうです。



また、本書では、出版業界の再販制度と委託販売、呉服業界の「台風手形」、医療機関の保険診療収入等、特定業界独特のカネのまわり方、商慣習、会計処理方法が、財務情報をゆがめることがあるということが示されています。

金融機関や取引先などが危機に気づくことを遅らせるだけでなく、内部の者すら、自社自身の状況がわからないという「ゆでガエル」状況を生み出しかねないのです。こういった実情こそ、決算書だけではなく現場でつぶさに会社を見る、調査会社だからこそ得られるものなのでしょうね。

本書で紹介する倒産の事例は、会社の財務状況をより正確に知るために、また自社が調査会社や金融機関からどう見られているのかを知る上でも興味深く感じます。
posted by ちゃんにし at 10:00 | Comment(0) | 書評

2022年03月01日

【ブックレビュー】一家に一冊クロサワの教科書『人間 黒澤明の真実:その創造の秘密』

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人間 黒澤明の真実:その創造の秘密

黒澤明の研究者として知られる元テレビマンの著者が、膨大な資料と自らの原稿を再整理、彼の生涯と作品、創作手法、人間像などをクリアかつコンパクトにまとめた。

『人間 黒澤明の真実:その創造の秘密』(都築政昭著、山川出版社)は、日本の映画ファンであれば教養として持っておきたい知識を網羅した、クロサワの教科書(山川だけに?)として必携の一冊だ。







絵を愛するいじめられっ子だった少年時代、西部劇などアメリカ映画、クラシック音楽、外国小説、絵画、俳句など国内外の芸術を浴びた青年時代から、黒澤の創作の原点を探っていく。30歳を前に自死した活弁師の兄、東宝入社後助監督として仕えた山本嘉次郎など、強く影響を受けた人物も挙げる。

自身の理想の人間像が投影されていると思われる、黒澤映画の不器用でいびつながら、主体的に未来をつかみ取らんとする人物造形、『生きものの記録』『夢』で描かれる「核」への危機感など、繰り返し描かれるモチーフなどのルーツもみえてくる。





創作の現場の描写は面白い。「画」作りのための民家破壊、果てしない天候待ち、度重なる予算オーバー等々、良く知られている「黒澤天皇」のエピソードのほか、信頼するライターたちと合宿し、徹底した議論で作り上げる脚本、最も楽しみにしていたという編集の情景などもリアルに描かれている。

その他、牛肉をこよなく愛した健啖家の一面、撮影中、立派な大人の俳優たちに延々「輪唱」させるという、映画『まあだだよ』を思わせる稚気あふれる宴会(三船は閉口して逃げ回ったそうだ)、親友の本多猪四郎ら(『ゴジラ』)との深い友愛のエピソードなどなどから、人間黒澤を探る。

しかし黒澤の狂気をはらむ完璧主義、ときに独善的ともいえる創作への情熱、ときには人への情愛の深さと裏返しで、たびたび確執やトラブルを生んだ。二人三脚で世界的名声を高めた三船とのすれ違い(輪唱が原因ではないだろうが)、音楽家、武満徹との編集現場での大げんか、ハリウッド大作「トラ・トラ・トラ」でのトラブルと降板などは、キャリアを追うごとに、アルコール依存と奇行、自殺未遂と痛切さを増す。

事実ベースの記述が中心であり、個別の作品の断定的解釈や、作品とパーソナルな出来事との関連付けは抑制的だ。しかし、事実を丹念に拾う仕事だからこそ、黒澤の創作のモチベーション、そして苦悩の、のっぴきならなさが感じられる。静かながら渾身の、著者の筆致が心に響く。



posted by ちゃんにし at 11:18 | Comment(0) | 書評

2022年02月24日

【ブックレビュー】ソフトバンク、Amazon、ベネッセ・・あの会社の『本業』はイメージと全く違う?『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』

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働き方改革の話題でも取り上げられることがある「副業」。言葉のイメージも何となくポジティブにどんどん変わっていますね。

では個人ではなく、会社経営で「副業」という言葉はどのような響きを持っているでしょうか

そもそもあまり会社には使わない言葉ですが、つかうとしたらやはりネガティブではないでしょうか。

「本業に目もくれず副業にかまけたあげくに破綻した」って具合ですね。

しかし現代の経営において「副業」は重要な意味を持っているようです。





それを教えてくれるのが本書『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』(長谷川正人著、日本経済新聞社)

著者は『ヤバい決算書』など会計入門書で人気の証券アナリスト。有名企業が公表する決算書などから、企業の「副業」の実情に迫ります。

とくに着目するのが「セグメント情報」。

セグメント情報とは、売り上げや利益、資産や負債、キャッシュフローなどの財務情報を、事業単位などに分解した情報で、上場会社の有価証券報告書などで開示されています。

つまり、セグメント情報からは、ざっくりとその会社が手掛ける、各事業の規模、業績、投資の積極性などを知ることができるのです。

本書の分析から見えてくるのは、大企業は一般に知られる本業のほかに副業と呼べる事業が大きく発展している場合が多いこと。それどころか、本業と副業の区別がつかなくなっていることも珍しくない。




たとえば、携帯電話キャリアが「本業」と一般にはイメージされるソフトバンクが、積極的な資金調達により多様な業種の企業をM&Aで取得してバランスシートを拡大、日々ダイナミックに業態を変えている姿を資料から分析しています。

また、情報流出問題、少子化などによる需要の職掌などの局面もありながら、おなじみの「進研ゼミ」の教育産業と肩を並べるほどに介護事業を成長させ、2本柱に構えるベネッセ。

社名に示される本業が、ほぼ業務から消えている富士フイルム、日立造船などは「本業」はもはやイメージの中にしかなく、老舗としての信頼を担保するためのブランドになっています。

紹介される企業はほかに、アマゾン、楽天、フジテレビ、HIS、イオン、LINE、クックパッドなど。それぞれ、多くの人が共通してもつ本業のイメージがありますが、その実態は?。

ITをはじめとした技術発展で、企業のコア事業も激変の渦にさらされています。

「大企業病」といった言葉でも示されるように、今まで成功していた「本業」へ過度のこだわりが原因で、衰退する事例は数多く、しかもそのスパンは速くなる一方です。

本書は変化の激しい経済状況で、現代の企業経営は「副業」(と呼ぶかはともかくとして)によって、業態を日々組み変えていく必要があることを教えてくれます。

財務諸表の基本的な知識(特にキャッシュフロー計算書)は必要ですがが記述は非常にわかりやすく、PL、BSの基礎のおさらいしながら読み進めることができる良書。おすすめです。




posted by ちゃんにし at 13:00 | Comment(0) | 書評

2022年02月02日

【ブックレビュー】『元営業部長だから知っている 不動産投資騙しの手口』は、不動産業者の言葉の「裏」を読み、リスクを知る本

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不動産会社というのはなかなか因果な商売だ。ここまで顧客から「何か騙されているのではないか」という疑いの目でみられる職業もそうはない。

それも当然と言えば当然。動く金額が大きいし、売り手と買い手のいわゆる「情報の非対称」が大きい商いだからだ。

マイホームの購入時はもちろん、これが投資用不動産となるとさらにブラックボックス。リアリティがなくなるというか、相手に情報をコントロールされている感が大きくなる。疑い深くなってしかるべきなのだ。

しかし、相手は百戦錬磨の営業担当者。

疑いの目を向けていたとしても、最終的にはさほど商品知識のないまま、うまく乗せられ、ノリで決めてる人が多い気もする。

疑い出せばきりがないし、そもそも何を疑ってよいかわからないし。話を聞いている時点で投資に色気があるのだからなおさらである。



本書『元営業部長だから知っている 不動産投資 騙しの手口』(前田浩司著、秀和システム)は、元投資用不動産の営業部長が、不動産投資の営業パーソンによる典型的な売り文句を挙げて、その言葉の裏にどのようなネガティブ情報が隠れているかを解説する。

とりあげられる売り言葉は数多い

「家賃保証により空き家リスクがない」、「自己資金ゼロでできる」、最近だと、老後2000万円問題と関連させ「年金代わり」という言葉もある。「駅近・新築」など、それ自体はよいことに違いない言葉でも、確認しておくべきことは多いという。

最近ではローンをかなり無理に組んでいる例も話題となった。本書でもローンについてはかぼちゃの馬車、スルガ銀行などの事例を紹介しながら詳しく書かれている。

条件的に組めるはずのないローンを通してしまう融資詐欺まがいのケース。また与信枠がいっぱいになり、後で自分自身の家を買えなくなる、というケースなどなど。「後は野となれ山となれ」で購入を勧めるリアルな営業担当者の姿を描写している。

不動産業には、情報の非対称を埋めるべく説明義務などの規制があるが、口頭の説明は空に消えてしまうもので「言った言わない問題」になりがち。というか「言ったもん勝ち」になりがち。契約書や約款を細かく読むのも難しい。違法であるか合法であるかグレーであるかはともかく、微妙な騙しのテクニックが入り込む余地が多数あるようだ




私もたまたま聞いたことがあって面白かったのが「当社は社員もみんな不動産投資をやっています」という言葉。

これ、古典的な投資案件の断り文句「そんなに儲かるならあなたがやればいいじゃん」というツッコミを避けるためなのだと思われるのだが、本書では、「そう言ってる会社の社員、実はやっていない人多い」と暴露をしてて笑ってしまった。正面からウソやないかい。

本書の魅力は、逆説的なのだが、紹介されるだまし文句のほとんどがありふれたものであること。

表紙がものものしいブラックなので、ディープな裏話かと思ったがそうでもない。露骨な詐欺事例も紹介されてはいるが、多くは微妙な言い回しに隠れる言葉のあやのようなもの。

変な話、営業であればそうするだろうな、というものばかり。たとえば、物件はなるべく売れ残りを押し付けようとしてくると紹介されているが、言われてみれば「ですよね」だ。

だから読み終わった時「全部、何となく知ってたもん」と言いたくなる。

しかし、実際に売り込まれたとき、しっかり言葉の裏をしらみつぶしに検討できるかというと別問題。

なんとなく疑ってるだけでは決局なにもできない

著者は業界の人でもあり、不動産投資自体を否定するわけではない。投資やるならしっかりやろうよ、このくらいは一度立ち止まって調べようよ、という穏当な物の見方を、丁寧に教えてくれる本だ。

不動産投資は、やる人はやるのだろうし、ある程度のリスクは誰もが覚悟の上。あたりまえだが失敗することもあれば成功することもある。

最初から買う気がない人ならともかく、興味がある人に必要なのは毒々しい警告ではない。不動産投資に嫌悪感を持つ人より、今の時点で興味津々の人に役に立つ一冊だろう。





posted by ちゃんにし at 19:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評
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