日本の中小製造業は、厳しい状況に置かれています。国内市場の縮小とアジア各国企業との価格競争のなか、販路拡大の手を打つことが急務でありながら手をこまねいている状態。
垂直統合の生産体制の象徴でもある自動車城下町などにみられる一社だけの下請企業にも危機的な状態が露になっています。
しかしいうまでもなく、新規開拓は簡単ではありません。BtoBで飛び込み営業は無理があるし、ホームページはそもそも誰もアクセスしてくれない。
昨今数多く開催されるビジネスマッチングのイベントは、会社の営業担当者だらけで、ひたすらに自社の売り込みする実りのない場になりがちです。
仮に自社製品やサービスに興味を示す人がいても、結局値引きの話しかされない……。
経営者の集まりと聞いて行ったら怪しい投資話を持ち掛ける人物だらけ……。
なんてことも
しかし実は、ほとんどの会社で、高いお金を払ってでも頼みたいことというのはあるものです。
「なんでもやります」式のアピールではなく「その困りごとを解決できます」とピンポイントで遡及できる場が必要であり、それが「展示会」なのだと主張するのが本書「中小企業の展示会マニュアル」。
本書は元エンジニアのコンサルタントである著者が、中小企業の販路拡大、新規顧客獲得の方策として展示会出展のノウハウを手ほどきします。
ブースづくりからプレゼン、POP、サンプル、ノベルティやパンフづくり、名刺交換した人へのフォローまでカバーする実用的な内容です。
著者によると、展示会に訪れるのは、ひたすらに値引きを要求する(傾向のある)購買担当ではなく、主に技術者であり、何かしらの技術的課題をもっています。
そこで本書では具体的に、「バリが出ない金属加工技術」を例にとり、キャッチコピーをどうつけるか、などアピール方法を解説していきます。
ただし、漫然と出品するだけでは結果を得ることはできないとも警告。展示会のブースづくりのプロセスは、自社の何に競争力、価値の源泉があるのか、を見つめなおす過程でもあります。
おもに技術系企業に向けた書籍ではあるのですが、すべての中小企業が「受け身」の下請け体質から脱し、自らの強みを市場に向けアピールするという、普遍的な課題解決であるように感じられます。
本書の発刊は2018年で、少し古くリアルイベントが制限されるコロナ禍以前の本ですが、現在もまだまだ有効な知見が豊富に含まれています
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