ネス川河口、海岸都市として栄えたインヴァネス
中心地から北東に20キロ弱、車で30分ほどに位置するマレー湾の細長い港に、難攻不落の要塞があります
フォートジョージです。
1マイルに及ぶ壁がぐるり囲んだ堂々の構えで、ヨーロッパ屈指の堅牢な基地として知られています。
もともとこの場所には、ジョージ2世の王族の城がありました。当時、スコットランド北部(ハイランド)には、ボニー・プリンス・チャーリーの王統支持者(ジャコバイト)が多く度重なる攻撃で、徹底的に破壊されました。
1746年、政府軍とジャコバイトとの最終決戦である「カローデンの戦い」で勝利したジョージ2世。軍事的な拠点である城跡に要塞を築くことを決定、建築当時の最先端の軍事技術を投入し、1769年、ジョージ3世の治世で「フォート・ジョージ」が完成したのです。
当初設計された構造は、現在でもほぼ変わっていません。日本の「五稜郭」とも比較されることがある星型の城壁が特徴。
上空からの写真は撮れませんので、借り物です。
写真からわかるように、突き出た岬の地形そのまま壁で囲まれているかのような形状です。
主に陸路から攻めてくる敵に対抗する必要があるため、陸側の壁の外に部隊を配置し、鉄壁の守りを敷きました。その重要な陸側正門前は地面が掘り下げられ、入場するには、細い跳ね橋を渡る必要があります。
要塞としての物々しさは、今でも変わりませんが、それもそのはず。
フォート・ジョージは今でもイギリス陸軍の部隊が駐留する基地であり、レンガ造りの弾薬庫や兵舎は現役で使用されています。
18世紀の兵舎の近くを散策していると、何度も兵士たちを目にすることになります。
現役の基地であるため観光客が見学できるのは施設内のごく一部。
18世紀に建てられた兵舎が多く残されていて、その中の一つが資料館(レジメンタルミュージアム)となっており、近代から二度の世界大戦を経て、現代まで、銃、剣、弾薬、戦闘服などを展示しています。
そのほか、パン焼き工場、ビールの醸造所などとして使われた建物が公開されています
建物の屋上にもいくつか上がり、そこからマレー湾を見渡すことができます
大砲が狙いを定めるその眺望は、築造されて以来、陸だけではなく海からの敵の侵入にもしっかりと目を光らせてきたことを感じます。
さて、フォートジョージに来たら一つぜひ注目しておきたいポイントは、軍人たちが礼拝する小さなチャペル。
ステンドグラス上部に描かれる二人の天使のうち一人が「バグパイプ」を演奏しています。
昔も今も、スコットランド各地から兵役に就く軍人たちの祈りの場、心のよりどころであったことを示しています。