2024年08月07日
大惨事とロンドン再建の象徴 ザ・モニュメント(ロンドン大火記念塔)に登る
ロンドンのビジネスの中心地である金融街、シティ。この場所に高さは約62メートル、自立構造を持つ石塔では、世界一の高さをもつ「ザ・モニュメント」が立っています。
ザモニュメント、正式にはThe Monument to the Great Fire of Londonは、1666年に発生した大惨事であるロンドン大火を語り継ぐ記念碑です。高さの62メートルは、出火場所となったパン屋からの距離と同じ高さに設定されています。
17世紀、ロンドンは産業革命による工業化の後押しにより人口が集中していました。それは都市化による矛盾の顕在化でもあり、衛生状態の悪化による伝染病、治安の悪化、そして失火や放火によるたびかさなる火事は市民を悩ませていました。
そして1666年9月2日、その矛盾が一気に噴出します。プディング・レーンのパン屋から出火し、あっという間に中心街に燃え広がったのです。
未整備だった消火設備、後手に回る行政機能も災いし、4日間燃やし続けることになります。奇跡的に死者はほとんど出ませんでしたが、街の中心部はほぼ全焼しました。
大惨事は、産業革命の時代に適合した世界最先端の都市をゼロから構想させることになりました。建築、都市工学、数学等、当時の科学の最高峰たちが、図面を引き、市に上奏しています。
科学者たちの理想主義的な都市計画は、必ずしも実現したわけではありませんが、災害対策の法整備、郊外のレンガ造りの集合住宅の整備、民間からは火災保険の仕組みも登場するなど、大火後の官民の取り組みにより、真に世界をけん引する都市を作り上げたことは間違いありません。
ロンドンの都市構想に参加した俊英の中でも、セントポール大聖堂も設計することになる科学者・建築家のクリストファー・レン、その助手で、顕微鏡の発明でも有名なロバートフックらが有名です。
記念碑であるモニュメントは、レンとフックが設計。1671年から1677年に建設されたものです
現在、モニュメントは頂上の展望台まで登ることが可能です。石塔として世界最大とはいえ、現代人の目からは建築物として決して高くない塔ではありますが、狭く長い螺旋階段を登るのは意外と一苦労
頂上からは、シティのビル群、セント・ポール大聖堂、テムズにかかるロンドン塔、タワー・ブリッジなど、ロンドンの名所を見渡すことができます。展望台では、登頂の証明書も発行されます。
塔からの眺めは大火事をきっかけにできあがった現代ロンドンの街の歴史を感じさせます。