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2024年05月27日

【ブックレビュー】「混浴」はいやらしいことなのか?魅惑の伝統文化を考察『混浴と日本史』

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混浴と日本史 (ちくま文庫)』(下川 耿史 著、筑摩書房)は、在野の研究者が、日本で独自の発展を遂げた「混浴」文化の源流に迫る一冊。

先史・古代において、人々が河川で水を浴びる際、男も女も区別はなかったことは容易に想像がつく。

つまりその意味で混浴は古来あらゆる地域にあったはずであるが、日本ではその「文化」が廃れることなく、現在でも各地の温泉地で行われることになる。

本書のユニークな論は、日本において混浴が、銭湯など入浴文化はもちろん、温泉地に多い霊廟巡り、東大寺や興福寺で貧民や僧に対して実施された「功徳湯」など慈善事業、宗教行為などにも派生したという主張だ。

著者は日本における混浴の源流のひとつを、古代の筑波山などで行われていた「歌垣」等に見ている。歌垣は、男女が河川や水田に体を浸し、歌をかわした。

むろん(?)混浴が性文化と関わるものであることも疑いえない。歌垣は、豊穣を祈る場であり、それは直接的に男女が交わる場でもあった。

そのほか道後温泉にはじまる湯女の文化は、江戸の遊郭の源流となったのだという。たいへん性的ではないか。





ただし、性的であることと、いやらしく、忌むべきものであるというのは別の話だ。

幕末、明治に来日したお雇い外国人や作家・ジャーナリストらによる混浴の評価が、「野蛮で不潔なもの」、「おおらかで素朴な美しさを持つもの」と、まっぷたつに分かれる様からも、それはうかがえる。

とはいえ、混浴は常にそこに不道徳を感じるものによる規制の対象となったのも致し方なしといったところか。

東大寺の功徳湯では、僧と尼との風紀の乱れから混浴禁止の動きがあり、江戸時代には、銭湯での混浴が禁止された。明治時代にも、行政から各地の温泉へ禁止通達があったという。

しかし、庶民は何かと理由をつけて守らない。本音と建前を分けて、なんだかんだ法律を読み替えて乗り切るのだ(この庶民の行動は混浴に限らず様々な分野で現在もみられる)。

日本の豊穣な文化を生み出した混浴。簡単に根絶やしにできるはずがないのである。

最後に、本書の出色の部分を紹介する。古事記や日本書紀にある「神産み」のエピソードである。

伊弉諾は、黄泉の国より帰り、川で禊を行った。脱いだ服からは十二神が生まれ、左右の目と鼻を洗うことで天照大御神、月読命、建速須佐之男命が生まれた。歌垣の例を再び引くまでもなく、ここに性的なアナロジーがあることは論を待たない。

つまり「日本」そのものが混浴によって生まれたのだ。なるほど!




posted by ちゃんにし at 12:00 | Comment(0) | 書評

2024年05月14日

グラスゴー出身のアールヌーヴォー作家が手掛けた『クイーンズ・クロス・チャーチ(マッキントッシュ・チャーチ)』

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水運の街、そして工業都市として発達したスコットランド第二の都市、グラスゴー。人が集まる街だけに巨大なグラスゴー大聖堂をはじめ、古くから教会も多数。

その中で、19世紀、近代化の中での信仰の場としてぜひ注目してほしい教会がグラスゴー駅からバスで15分くらいの場所にあります。

メアリーヒル通り、住宅街の突き当りに、尖塔やバラ窓をもつゴシック式の建築でありながら、小さな、赤いれんが作りで、どこか瀟洒でモダンさを感じさせる外見。

これがクイーンズ・クロス教会です。

1896年に建てられたこの教会、通称「マッキントッシュ・チャーチ」とも呼ばれています。




デザインしたのはグラスゴー出身で、19世紀から20世紀初頭のアートの潮流「アールヌーヴォー」のスコットランドにおける立役者として知られる建築家・デザイナー・画家の、チャールズ・レニー・マッキントッシュです。

建築家としての代表作にグラスゴー美術学院などがあります。またデザインしたインテリア、家具などは、レプリカを含めグラスゴーのあちこちにみられます。

そのマッキントッシュがデザインした唯一の教会がここなのです

正面のエントランスから教会の中に入ると、こちらもマッキントッシュがデザインしたというステンドグラスや講壇が見られます
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奥の礼拝堂も、マッキントッシュのデザイン作品として非常に多い椅子をはじめ、ところどころに彼がデザインした調度品があります。特徴的な天井の梁のデザインにも注目です。
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二階の回廊からも、全体をみることができます。コンパクトで何ともかわいらしい雰囲気があります。


教会ということもあり、表現は抑制的なのですが、アールヌーヴォーの、またマッキントッシュの特徴である、植物の弦のように曲がりくねって伸びる木彫のデザインが随所に見られます。ゴシックのまっすぐ天を衝くデザインとは異なる魅力。

現在は煤けて、それはそれで雰囲気を出している外観ですが、真っ赤なレンガ造りの建物が登場した時代に思いをはせてみるのも楽しいと思います。

近代の新興都市だったグラスゴーゆかりのアーティストが手掛けた教会は、信仰の場でありながら、都会的な軽やかさがマッチ。とても居心地の良い空間です。






posted by ちゃんにし at 09:38 | 未選択
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