『ビットコイン』をはじめとする仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)が、投資対象として、また決済手段としても日増しに存在感を高めています。
しかし、あたらしい「お金」である仮想通貨は旧来の制度・法律としばしば摩擦をきたす存在でもあります。
立法・行政の、暗号資産への法整備・運用は後手後手に回っている印象です。
中でも制度上、摩擦音をギシギシ立てているのが、お金ときわめて関係が深い「税制」。
仮想通貨によって得た所得を確実に捕捉し、脱税を取り締まることは、各国税務当局の大きな課題となっています
仮想通貨には税金かかるの?
ところで、みなさまはこのような素朴な疑問をもったことはありませんか。
「仮想通貨での取引に税金がかかるの?」
たとえば、所有する仮想通貨が急騰、売却により巨額の利益を得た「億り人」が話題になることは多いですが、売却して「円」などの通貨を得た時、巨額の税金がかかることはだれしも理解できます。
それを申告しなかったり、過少に申告すれば、当然、悪質な脱税となるのは当然です。
しかし、仮想通貨は、それそのものが「お金」としての機能を持ちます。決済手段としても利用されていることからもわかるように、一度も「円」などの通貨に換えられないまま、サイバー空間をぐるぐる回ります。
その場合、いつどこで、いくらの税がかかるのか、あるいはかからないのか。
税制の理解がないことで、申告すべき時点で申告しなかったり、税額の計算を誤るなどの事例が多発しているんですね。
そのように、知らず知らずのうちに違法性を問われることを防ぐため、税務申告について基本的なルールを抑えておく必要があります。そこで紹介したいのがこの本
仮想通貨の取引は物々交換?
本書は、仮想通貨の申告実務に精通する税理士が、仮想通貨取引にかかる個人・法人の税のルール、税務申告について解説する内容。解説はひじょうにわかりやすく、税制に詳しくなくても基本から学ぶことができます。
本書では、仮想通貨の税制上の位置づけについて説明していますが、最初に知っておくべきことは、そもそも仮想通貨が、日本銀行券のような「通貨」なのか否か、ということのようです。
日本の国税当局は現在、原則として仮想通貨はお金ではなく「もの」として扱っています。
ということは
仮想通貨を円などのお金で買うだけなら、単に物を買っているだけなので所得は発生しませんが、それを売って利益を得たら課税対象ということになります。
なるほど、これは当然だ。
しかし、それだけでは事は収まらないのは冒頭に申し上げた通り。仮想通貨で仮想通貨を買ったとき、仮想通貨により商品を買ったりということもある
これらはいわば「物々交換」。
物々交換で「利益」はあるのか、いつ発生するのか、どうやって「円」に換算するのか。興味が湧いてきますよね。
あるいは報酬や給料を仮想通貨でもらう場合もあるかもしれません。この場合は「現物支給」みたいなものでしょうか。
そのほか、所有する仮想通貨の価値が著しく上がった時や、海外の取引所を利用したときなどなど、個人や法人が行う仮想通貨の取引で起こる様々なケースを取り上げ、「そもそも」の部分から論点を整理、課税の有無とその根拠、所得の計算方法をみていきます。また、法人化や海外での取引等の節税対策にも触れます。
実務書とは言っても、通読が苦にならない簡潔な記述と整理された章立て。仮想通貨の税務の枠組み、全体像を大づかみするのにもってこいです。
税務を通し「仮想通貨とは?」と基礎からお勉強
そして本書の面白いところは、税務のお話を通し、仮想通貨そのものの入門書にもなっていること。
税務解説と絡めながら、ビットコインの歴史、ブロックチェーンの仕組み、「マイニング」「アルトコイン」「フォーク」など独特の用語、取引方法などなど、基本がわかります。用語索引がついているのもうれしいところです。仮想通貨に関する用語は、いわばすべて「新語」。日々新たに現れる言葉を知ることでトレンドが見えてきます。
これからますます必要となるであろう、仮想通貨の取引、税務の基礎を平易に理解できる本書は、仮想通貨の確定申告を控えているひとはもちろん、仮想通貨を持っていないがなんとなく興味がある人、さっそく投資に乗り出してみようという人に有益な知識を与えてくれます。
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