ニュースで話題になる「倒産」。実はこの言葉にはっきりした定義はないそうです。
破産や民事再生等、法的整理の適用があれば、官報に載るなど倒産の状態であることがはっきりと示されます
しかし実際には、倒産と一般に認識される瞬間は、不渡りによる銀行取引の停止時。そしてその情報は、調査会社の現場の取材によってつかまれることが多いそうです。
本書『あの会社はこうして潰れた 日経プレミアシリーズ』(帝国データバンク情報部藤森徹著、日本経済新聞社)は、日本の企業調査会社のトップカンパニーである帝国データバンクの調査員が、有名企業・老舗企業が経営危機に陥り、倒産していく過程を描いたレポート。センセーショナルな語りではなく、しごく淡々と会社が「潰れる」さまを描写していきます。
与信サービスを本業とする調査会社だけに、その眼は客観的で冷徹。
取り上げられるのは、老舗の呉服屋、百貨店、ゲームセンターなど、経済・社会状況の変化への対応が遅れた企業、二代目社長の経営多角化や金融投資で失敗した企業、横領や着服などの社内不正で傾いた企業、自転車操業状態のファンド、取り込み詐欺など不正に図られ倒産した企業等々。
元AKB48の篠田麻里子さんをデザイナーに据えたアパレル企業「ricori」等、一時的な話題をさらった企業なども取り上げられていて興味深くよめます。
これらの例からは、倒産企業に共通する普遍的な特徴、危ない兆候などが読み取れそうです。
また、本書では、出版業界の再販制度と委託販売、呉服業界の「台風手形」、医療機関の保険診療収入等、特定業界独特のカネのまわり方、商慣習、会計処理方法が、財務情報をゆがめることがあるということが示されています。
金融機関や取引先などが危機に気づくことを遅らせるだけでなく、内部の者すら、自社自身の状況がわからないという「ゆでガエル」状況を生み出しかねないのです。こういった実情こそ、決算書だけではなく現場でつぶさに会社を見る、調査会社だからこそ得られるものなのでしょうね。
本書で紹介する倒産の事例は、会社の財務状況をより正確に知るために、また自社が調査会社や金融機関からどう見られているのかを知る上でも興味深く感じます。
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