働き方改革の話題でも取り上げられることがある「副業」。言葉のイメージも何となくポジティブにどんどん変わっていますね。
では個人ではなく、会社経営で「副業」という言葉はどのような響きを持っているでしょうか
そもそもあまり会社には使わない言葉ですが、つかうとしたらやはりネガティブではないでしょうか。
「本業に目もくれず副業にかまけたあげくに破綻した」って具合ですね。
しかし現代の経営において「副業」は重要な意味を持っているようです。
それを教えてくれるのが本書『決算書で読む ヤバい本業 伸びる副業』(長谷川正人著、日本経済新聞社)
著者は『ヤバい決算書』など会計入門書で人気の証券アナリスト。有名企業が公表する決算書などから、企業の「副業」の実情に迫ります。
とくに着目するのが「セグメント情報」。
セグメント情報とは、売り上げや利益、資産や負債、キャッシュフローなどの財務情報を、事業単位などに分解した情報で、上場会社の有価証券報告書などで開示されています。
つまり、セグメント情報からは、ざっくりとその会社が手掛ける、各事業の規模、業績、投資の積極性などを知ることができるのです。
本書の分析から見えてくるのは、大企業は一般に知られる本業のほかに副業と呼べる事業が大きく発展している場合が多いこと。それどころか、本業と副業の区別がつかなくなっていることも珍しくない。
たとえば、携帯電話キャリアが「本業」と一般にはイメージされるソフトバンクが、積極的な資金調達により多様な業種の企業をM&Aで取得してバランスシートを拡大、日々ダイナミックに業態を変えている姿を資料から分析しています。
また、情報流出問題、少子化などによる需要の職掌などの局面もありながら、おなじみの「進研ゼミ」の教育産業と肩を並べるほどに介護事業を成長させ、2本柱に構えるベネッセ。
社名に示される本業が、ほぼ業務から消えている富士フイルム、日立造船などは「本業」はもはやイメージの中にしかなく、老舗としての信頼を担保するためのブランドになっています。
紹介される企業はほかに、アマゾン、楽天、フジテレビ、HIS、イオン、LINE、クックパッドなど。それぞれ、多くの人が共通してもつ本業のイメージがありますが、その実態は?。
ITをはじめとした技術発展で、企業のコア事業も激変の渦にさらされています。
「大企業病」といった言葉でも示されるように、今まで成功していた「本業」へ過度のこだわりが原因で、衰退する事例は数多く、しかもそのスパンは速くなる一方です。
本書は変化の激しい経済状況で、現代の企業経営は「副業」(と呼ぶかはともかくとして)によって、業態を日々組み変えていく必要があることを教えてくれます。
財務諸表の基本的な知識(特にキャッシュフロー計算書)は必要ですがが記述は非常にわかりやすく、PL、BSの基礎のおさらいしながら読み進めることができる良書。おすすめです。
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