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タグ / 美弥

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拓馬篇−6章◆ [2018/06/16 02:55]
 美弥とヤマダは銀髪の教師の部屋へ訪れた。美弥はもともと彼の部屋番号を知っており、部屋主の案内がなくとも訪問できた。ヤマダとの話し合いの場はここでも自室でもかまわないのだが、せっかくの機会なのでお邪魔させてもらう。  美弥がヤマダに自室への招待を渋った理由は他愛もないことだった。ただ彼女を困らせたかった。そのきっかけは以前、美弥は知人の喫茶店におとずれた時に、従業員に暑苦しい男子と出会ったことにある。その手引きをしたのがヤマダだという。当時、美弥はその男子の熱気に困らされた..
拓馬篇−4章◆ ★ [2018/04/08 03:21]
 美弥の姉──律子はチェーン店での遅まきの夕食を注文し終えた。美弥は姉とともに、同席者の男子と向かい合う状態で、テーブル席に着いている。  律子は初対面の少年に声をかける。 「おごってあげるけど……なにも頼まなくていいの?」 「おかまいなく……」  この男子は一向に律子と目線を合わせない。角度的には顔を合わせても、べつのところに視線をやっているように見えた。そんなふうに、男性が律子を直視できない理由はある。律子は子役上がりの女優である。成長してからは容貌にますます磨き..
拓馬篇前記−美弥11 [2017/12/19 23:59]
 電灯の明かりが必要になってくるころ、美弥たちはデイルとの雑談を切り上げた。きっかけは彼が「もう暗くなってきましたね」と帰宅をすすめたことにある。美弥と彼は同じアパートの住人だ。外が真っ暗であろうと帰宅に支障はない。彼の言葉は「じゅうぶん話し尽くした」という意思表示だと思われた。  デイルは別れ際も穏やかに姉妹と言葉を交わす。おかげで今後の交流を維持できる別れ方を果たせた。  デイル自身は美弥の視界に男性がいることを避けたいと考えている。男性である彼と接触すること自体が美..
拓馬篇前記−美弥10 [2017/12/18 23:59]
 部屋主が入れてくれた飲み物はすっかり冷めてしまった。彼は入れなおしを提案したが、そんなぜいたくな申し出は気が引ける。美弥と律子は常温のカフェオレを飲みほした。  カップを空ければ、べつの飲み物をどうか、とデイルが言ってくるかもしれない。美弥は身構えながらカップを座卓に置いた。 「おかわりはいかがです?」  やはりたずねてきた。美弥は首を横にふり、不要の身振りをする。律子も「今日は午後からたくさん飲んじゃってて」と遠慮した。デイルは「そうですか」と温厚な笑みをたたえたま..
拓馬篇前記−美弥9 [2017/12/16 23:59]
 デイルは黙りこくってしまった。その風貌はさながらロダンの考える人である。口元への手の当て方や当てる手の左右がちがっていても、美弥はそう感じた。  彼は思考整理の時間を美弥たちに頂戴した。その間、律子は手を組んだりさすったりして落ち着きがない。律子の挙動の原因は美弥にある。見かけ上は心優しい男性を、妹が糾弾したことにやきもきしているのだ。美弥は静寂が姉の動揺を煽るのではないかと思い、口を開く。 「お姉ちゃん、なにを心配してるの」 「だって、美弥が失礼なことを……」 「..
拓馬篇前記−美弥8 [2017/12/15 23:59]
 招かれた部屋は美弥の現在の住まいと変わり映えしなかった。同じ建物なのだから当然ではある。だが調度品まで同じだとは思っていなかった。美弥が引越してきた時に備え付けてあったものは、デイルの部屋にも用意されているようだ。居間のカーペットと座卓は色こそちがうが同じ。壁に設置した棚とそこにあるテレビなどは大きさも色もそっくりだ。  美弥は自室に帰ってきた感覚で座卓を囲んだ。本来の住人は台所であたたかい飲み物の用意をしている。 「インスタントですがお好きなものを選んでください」 ..
拓馬篇前記−美弥7 [2017/12/14 23:00]
「あ、あの……」  美弥はぎこちなく声を出した。普段の声量に調整したつもりだが、のどがうまく開かない。スーツの男性は野良猫に夢中なままだ。  ふたたび声掛けをしようと口を動かす。だがまごついてしまって声が出ない。まるで引っ込み思案な反応だ。美弥が異性を苦手とする影響か。そうは言っても、ここまで意志疎通に難儀することはなかった。性別以外にも原因がある。 (この人……一八〇センチはある)  美弥は相手の風体を恐ろしく感じた。この男性はアスリートのように良い体格をしている。..
拓馬篇前記−美弥6 [2017/12/08 04:00]
 美弥たちは喫茶店での歓談を惜しみつつ、帰路をたどる。帰宅ルートはなるべく大通りを避けた。この土地は都会ではないので、通行人とあまりすれちがわない道は簡単に見つかった。美弥たち姉妹の警戒心がゆるむ。二人は道中、声のトーンを抑えながら雑談を交わした。  美弥はみちるがユニークな人物だと知っていたが、雇われ店員のマヨもまた愉快な人だった。マヨは美弥の印象に強く残っている。素朴ながらも個性的な女性は、律子らの想定にいなかった店の者だ。その人物が意外にもムードメーカーを担っている。..
拓馬篇前記−美弥5 [2017/12/06 23:59]
 美弥たちがいるテーブル席は四人掛けだった。それゆえ美弥と律子の席には引き続きみちるが座り、通路をはさんだ隣りのテーブルに店長とマヨが着席している。みなが一様にアイス付きのホットケーキをナイフとフォークでつついた。会話はもっぱらオーナーのみちるが仕切る。 「こういう身内だけのときはさ、マヨちゃんに作らせてもいいかもね」  美弥はその案を新人教育だと思った。仕事に不慣れな従業員に料理を作らせる。その成果物はたいてい完成度の低いものだ。端的に表現すれば、客に金銭を要求できない..
拓馬篇前記−美弥4 [2017/12/05 23:59]
「才穎高校ってね、おもしろい子が多いのよ。いま掃除してるマヨちゃんもそこの出身だし」  マヨと呼ばれた店員はモップを四角いバケツの中に浸している。マヨは手を止めた。ほほえみながら、美弥たちに向けて手を振る。明るい人のようだ。 「マヨちゃんの弟も同じ高校なのよね。その子の勧めで、マヨちゃんが今月から店に来てくれてるんだけど……あ、もしかしたら同級生?」 「美弥は、こんど二年生になります」 「じゃあ同い年ねぇ。その子はいい子よ。苦労人タイプと言ったらいいのかな、困ったこと..
拓馬篇前記−美弥3 [2017/12/04 23:59]
 美弥たち姉妹は律子の知人が所有する店へ訪れた。現在は昼の営業時間が過ぎている。準備中という名の閉店状態だ。帽子とマスクで顔を隠した律子はかまわずに店内へ入った。そうするように知人から言われたそうだ。  入店した直後に鈴の音が鳴った。その音は機械音でないと美弥は感じる。物理的に音を鳴らす道具が近くにあるのだ。振り返ればドアの戸当たりの棒部分に鈴がついている。これがこの店のインターホンだろう。  来客を察知した店員がやってくる。緑色のエプロンをかけた若い女性だ。鼻にそばかす..
拓馬篇前記−美弥2 [2017/12/02 23:52]
 律子が座卓に空のカップを置く。彼女は美弥とは別種の負の感情をまとっていた。二次被害を受けた妹を、ひたすらにあわれんでいるのだ。律子はとりわけ美弥の刺々しさを気にしている。 「このへんの人たちは、わるい人じゃないと思うけれど……」 「ちょっと田舎だからってだけじゃ、安心できない」 「でも校長さんはあの姫若先生の旦那さんでしょ。変な人は住まわせないんじゃない?」  律子のいう姫若とは恋愛ものの漫画を専門に描く作家だ。彼女の作品を原作にしたテレビドラマに律子が主演をかざっ..
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