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ルイジアナで迎えるクリスマス

 クリスマスですね。
 この時期には、旬の企画ものが出ますが、まったく買っていません。
 でも、キャロル・キングの新譜はちょっと気になっています。

 定番のクリスマス・アルバムというものがあって、私もいくつか持っていますが、ずっと欲しいと思いながら買い逃しているものがあります。
 ベンチャーズのクリスマス・アルバムなんですが、今年も入手せずじまいでした。
 "I Feel Fine"のイントロから始まるのは、「赤鼻のトナカイ」でしたっけ?

 今回は、おそらく誰も注目していないだろうアルバムを紹介します。

 
Have a Merry South Louisiana Christmas

1. White Christmas : Van Broussard
2. It Won't Be Christmas Without You : Ronnie Melancon
3. Louisiana Christmas Day : Ryan Foret and Foret Tradition
4. Silver Bells : Kenny Cornett
5. Rockin' Around the Christmas Tree : Mike & Steve Broussard
6. All I Want For Christmas Is You : Wayne Foret
7. Jingle Bells : Fats Domino
8. Christmas Comes But Once A Year : Ronnie Melancon
9. Let It Snow : Gary T.
10. Santa Claus Is Back : Jake Chimento
11. So This Is Christmas (McCLain, Hacher) : Mike & Steve Broussard
12. I Told Santa Claus : Kenny Cornett
13. Blue Christmas : Mike & Steve Broussard
14. Rudolph The Red Nosed Reindeer : Fats Domino
15. Please Come Home For Christmas : Van Broussard
16. Jingle Bell Rock : Grace Broussard
17. I'll Be Home For Christmas : Travis Thibodaux
18. Sweet Dream Christmas (Kane, Glaze) : Kane Glaze

 ルイジアナで、現在進行のスワンプ・ポップをリリースし続けている、CSP Records制作のクリスマス・アルバムです。
 本盤は、07年にリリースされました。

 私は、当初、収録曲はこの盤のための新録かと思っていたのですが、どうやら既出の吹き込みの寄せ集めのようです。

 Wayne Foretの"All I Want For Christmas Is You"は、彼のアルバム、"Still Going Strong"からのチョイスです。
 また、Ryan Foretの"Louisiana Christmas Day"は、やはりRyanのアルバム、"She's Mine"からのものです。

 その他、ネタ元は調べ切れていませんが、VanとGraceのBroussard兄妹は、CSPではお馴染みです。
 あるいは、Van Broussardは、CSP Recordsで最も多くのアルバムをリリースしているスワンプ・ポップ・シンガーかも知れません。

 Ryan Foretもやはりお馴染みです。
 この人もベテランですが、VanやWayneに比べると若手でしょうか。

 Gary T.と息子のTravis Thibodauxが、それぞれソロでフューチャーされているのが嬉しいです。
 期待にたがわず、いい味を出しています。
 (実は今日、この親子の共演盤、"Deuce Of Hearts"(99年Jin Records)が届きました。)

 その他は初めて聴く人ばかりです……。
 一人の超大物を除いては。

 そう、もちろん、Fats Domino師匠ですね。
 師匠もCSPに録音していたとは驚きです。

 そこで少し調べたところ、どうやら、93年のキャピトルからのアルバム、"Christmas Is A Special Day"が出典のようです。
 CSP Recordsは、このアルバムを06年にジャケを替えてリイシューしていました。
 本盤のFatsの収録曲は、この"Christmas Is A Special Day"からのチョイスです。

 この人は、やはり凄いですね。
 最近作は、06年のものでしょうか。 

 私は、活きのいい現役スワンプ・ポップ・シンガーに関心があります。
 しかし、Fatsのこの90年代の録音を聴くと、その強烈な存在感に圧倒されました。

 全盛期をはるかに過ぎていますが、あるいはB.Bと同様、まだまだ晩年などではなく円熟期なのかも知れません。
 ただ、カトリーナ以降、流石に活動のニュースが伝わってこないようです。

 Ronnie Melancon
 Kenny Cornett
 Mike & Steve Broussard
 Jake Chimento
 Kane Glaze

 この5組はいずれも初めて聴きました。
 1、2曲を聴いただけで判断できませんが、一聴した感想は似ています。
 
 彼らは、おしなべて普通にうまいです。
 これは肯定ではありますが、なんとも手放しで好きとは言えず、こんな風に言ってしまうのがもどかしいです。

 言葉足らずなのが歯がゆいですが、とりあえず思いつくまま言えば、あくの強さが不足しているように感じます。
 普通にうまいし、古いスタイルの曲もそつなくやりそうです。
 でも、私は、普通にうまいより、「へたうま」のほうが好きです。

 「えぐさ」や「危険な香り」、または逆に「茫洋とした抜けた感じ」でもいいんですが、名前を残している昔のブルースやR&Bのシンガーは個性の塊でしたよね。

 例えば、本盤のFatsの"Jingle Bells"を聴きましょう。
 誰もが知る手あかのついた曲です。

 しかし、Fatsがやると、素晴らしい左手のリズム(Fatsのプレイではないかも知れませんが)、バックの軽快な手拍子を従えた、唯一無二のあのリッチな歌声に酔わされます。
 その歌いくちの隅々に、過去のヒット曲で繰り返し聴いた、あんな「くせ」やこんな「くせ」がそこかしこに見え隠れして、思わず胸キュンです。

 そんな思いのなか、初物組では、Jake Chimentoが、最も個性を感じます。
 単純にダミ声ということもありますが、それも武器ですよね。

 他では、Mike & Steve BroussardとKane Glazeが、もう少し聴いてみたいと感じさせてくれました。
 Broussardという姓が気になりますが、Van Broussardとはおそらく関係ないと思います。
 Broussardという姓は珍しいですが、実のところ、私は他にもこの姓のミュージシャンを知っています。

 ブルー・アイド・ソウル系(?)のMarc Broussard、テキサス・ロッカー系(?)のRick Broussardなどです。
 私は、勝手にフレンチ系(クリオール系?)の姓ではないかと想像しています。

 今回気になったシンガーは、ぜひ単独盤が(あれば)聴いてみたいです。

 本盤は、クリスマス・アルバムとして充分楽しめる内容です。
 そして、初めて聴いたシンガーに関心を持つとともに、何よりもFats DominoのImperial時代以降にも、大いに興味を持たせてくれたアルバムになったのでした。



Jingle Bells by Fats Domino



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