2019年09月14日
人はなぜ孤独を感じるのか? 遺伝子の影響もある可能性
生涯にわたって孤独に感じる人は、環境や精神的要因だけでなく、遺伝的形質も影響を与えている可能性があると指摘する研究が、米カリフォルニア大学サンディエゴ校やヴァンダービルト大学の共同研究チームによって発表された。
研究チームは友人や家族の数が同じで、生活環境も同じ双子でも、一方は自分が社会から孤立していると感じ、一方は適切に社会との交流があると感じる、といった差異があることに注目。こうした「孤独感」に遺伝子が影響しているのではないかと推測した。
これまでに双子とその家族を対象とした研究を実施し、37〜55%の人で孤独感が遺伝子に由来している可能性があることを確認したが、対象者数が少なく、精度が低いと考え、より大規模な調査をおこなうことにした。
今回の研究は、米国立老化研究所(NIH)が1992年から50歳以上の退職者を対象に、健康状態のデータを集めている「Health and Retirement Study」から、男女1万760人分を抽出。アンケートによって調査した孤独感と、記録されている遺伝子情報との関係を分析している。
アンケートは孤独感を測定するのによく用いられる「どのくらいの頻度で自分は他者との交流がないと感じるか」「どのくらいの頻度で周囲から取り残されていると感じるか」「どのくらいの頻度で孤立していると感じるか」の3つの質問をおこなった。
婚姻経験の有無、配偶者の有無、性別、年齢などの条件は調整している。分析の結果、時々寂しくなる程度の孤独感では有意な発見はなかったが、生涯に渡って孤独を感じている人のうち、14〜27%は遺伝的形質の影響を受けている可能性があることがわかった。
また、遺伝的孤独は統合失調症や双極性障害、うつ病の発症リスクを高めている、弱い可能性も示されている。
研究チームは、ドーパミンやオキシトシンの分泌を調整している遺伝子が影響しているのではないかと考え、具体的に10個の遺伝子型と孤独感の関係を分析したものの、これらの遺伝子に対応して孤独感が生じることを示す結果は得られなかったという。
この結果を踏まえ、研究チームは、孤独感は非常に複雑な遺伝形質の影響を受けているものの、影響力の大きさでは環境要因が大きく、それを補うような形で遺伝子が影響しているのだろうとコメントしている。