2018年07月17日
原因不明の病気 悪夢が繰り返される「悪夢障害」って何だ?
誰でも悪夢を見たことはあるだろうが、悪夢は大人だけのものではない。むしろ子どもに多く、6〜10歳頃が悪夢を見やすいピーク年代だという。
一般的には、成長に伴って悪夢を見る頻度は減ってくるため、特に治療が必要とされることはない。しかし、一部の人は長期間にわたって繰り返し悪夢を見る「悪夢障害」の症状を示す場合もある。
□原因不明 悪夢が繰り返される病気
悪夢は、レム睡眠時に起こる怖い夢のことを言う。誰かに追いかけられたり、高いところから落ちたりするような夢などを、誰でも一度ぐらい見た経験はあるだろう。
しかし、この悪夢をかなりの頻度で見ていて、日常生活にまで重大な障害を及ぼしている状態を「悪夢障害」という。
悪夢障害は睡眠障害の一種とされており、悪夢により目が覚めたり、眠れなくなったりして不眠となる。悪夢障害の原因は明らかになっていないが、ストレスや不規則な睡眠習慣、遺伝的要因もあると考えられている。
一方で、頻繁に悪夢をみる人の3割はうつであるという研究結果もあり、注意が必要だ。今のところ、悪夢を治す特効薬はなく、睡眠改善のアプローチが有効となることがある。
□もともと悪夢は子どもに多い
悪夢障害とまでいかなくても、子どもはよく悪夢を見る。年齢が上がるにつれてレム睡眠が増えるため、夢を見やすくなるのだが、小さな子どもは、悪夢を見ると完全に目を覚まし、夢の細部まではっきりと思い出すことができることも多いという。
しかし、悪夢を見たといっても、かなり頻繁でない限り心配することはない。ストレスを感じると悪夢が増えるが、小さな子どもの場合、刺激的な内容の映画やテレビを見た後も悪夢を見やすくなる。
もし、子どもが頻繁に悪夢を見るようであれば、親が子どもの日常を記録して、原因を特定できるかどうか調べるとよいだろう。
□子ども特有の睡眠現象 悪夢により叫んで起きる「夜驚症」
悪夢とは違うが、子どもにまれに起こる奇妙な睡眠現象に「夜驚症(やきょうしょう)」がある。まるで霊に取りつかれたような症状が見られるため、昔はしばしば悪霊の仕業とされていた。
この夜驚症は3〜8歳に最も多く起こる症状で、眠りに就いてからあまり時間がたたないうちに、極度の不安から目覚めてしまう。夜驚症の発作が起きるのはノンレム睡眠時で、目覚めているように見えるが完全に覚醒しているわけではない。子どもは悲鳴を上げて怖がり、心拍数が上昇し呼吸も速まる。
□子どもに起こる「夜驚症」 親が話しかけても反応しない
親がいることに気付いていない場合が多く、激しく転げ回ることもあるが、なだめようとしても反応しない。子どもがしゃべることもあるが、質問には答えられない。
通常、数分後に子どもは再度眠りに就く。悪夢とは異なり、子ども自身は起きた出来事を思い出せない。夜驚症の発作が続いている間、子どもは叫び声を上げ親のなだめなどにも応じないので、夜驚症は劇的である。
□夜驚症の子どもの多くに夢遊病
また、夜驚症を発症する子どもの約3分の1に「夢遊症」が見られる。これは、眠っている様子なのにベッドから起き上がって歩き回る症状で、「夢中歩行」とも呼ばれる。そして、5〜12歳の約15%が少なくとも1回は夢遊症を経験しているという。
夜驚症や夢遊症は、ほぼ全員が治療せずとも治るので、特にこれといって治療する必要はない。症状が症状だけに親たちは焦ってしまうことが多いが、これも子ども特有の睡眠現象なので、特に心配しなくてもいいことが多いのだ。
快適な睡眠が与えられる環境は、子どもの心身が問題なく成長していくために欠かせない。親と子どもが同じ寝室で寝るなどの睡眠習慣は、家族によって考え方が異なるが、子どものストレスを避けることはどんな家庭においても大切なことなのだ。