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緊急用のはずが、ただの相談窓口に!?『ふしぎな110番』



「事件ですか? 事故ですか?」 

 110番、正式名称「警察通報用電話」へ電話をすると、必ず聞かれるこの質問。言うまでもなく、何かしら「緊急事態」が起こった時にかけるべき番号であり、事件、もしくは事故が起こったらからこそ、電話をしているはずだ。ところが、110番を受理する通信指令課には、3.5秒に1本電話がかかり、国民の14人に1人が110番に電話をしたことがあるという計算になる。この膨大な通報の中には、当然、どうでもいい内容の電話も数多く含まれている。

 その一番大きな要因は、どうやら携帯の普及で、いつでもどこでも電話できるようになったこと。また、不景気の世の中、無料で電話できることを得と感じ、やたらと110番に電話する人が増えたのか、人とのつながりが薄く寂しがり屋が増えてしまったのか、理由はいろいろあるようだが、“えぇっ!? こんなことで電話してくるの!?”と驚くような内容の電話が殺到している。

 『ふしぎな110番』(彩図社)は、元・警察署副署長で著者の橘哲雄氏が、警察本部の通信指令課を担当していた当時に書いていた日記を元に、少し変わったふしぎな通報110件をまとめた1冊。通報してくる人たちは、幼い子からお年寄りまで、実に幅広い。

その内容もバラエティに富んでいて、たとえば幼い女の子からの通報で「悪いお兄ちゃんがいます。ブランコを独り占めにして順番を待っても乗せてくれません」という心温まるような、困っちゃうようなものやら、「彼氏と口論になって彼が悪いのに謝らないんです。そばに彼氏がいるので叱って下さい」というハタ迷惑系男女間のもつれ。

さらには、夫婦ゲンカ中の酔っ払った男性からの電話で「通報したのにいつまでたっても警察官がこないじゃないか!」と言うので確認してみると、すでに現場に警察官は駆けつけていて、そのことを伝えると「俺の味方の警察官が来ないんだ!」と、自分勝手で意味不明なことをわめくなど、警察の人も大変だなぁと、同情したくなるような内容が次々と登場する。

 笑ってしまうような内容が多いが、110番の場合、ひょっとしたらの「最悪の事態」があるかもしれないので、警察官はどんなにくだらないことでも動かなければならない。昨今、警察官の逮捕など、ニュースになることも少なくないが、東南アジアや南米など、ワイロで物事を考えて動く世界の警察事情を見れば、しょうもない電話に誠実に対応し、現場にわざわざ出かけている日本の警察はなんだか頑張っているなぁと、上から目線で偉そうだが、考えさせられる。



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