2017年05月10日
ステロイド治療に終止符?アトピー性皮膚炎、ワセリンが発症を予防か
保湿剤のワセリンをあらかじめ皮膚に塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性があるとする論文を理化学研究所などのグループがまとめた。
マウスによる実験だが、人でも似たしくみがある可能性があり、研究チームは「アトピー性皮膚炎になりやすいことが発症前にわかれば、予防につながるかもしれない」としている。
アトピー性皮膚炎の予防につながる画期的な研究成果を見てみよう。
□アトピー性皮膚炎はアレルギー性疾患じゃなかったの!?
アトピー性皮膚炎と言えば、強い痒みを伴う皮膚の炎症が長期にわたって続く病気だ。子どもを中心に発症して、症状は一進一退を繰り返し、大人になっても悩んでいる人が少なくない。
アトピー性皮膚炎はこれまで免疫の異常反応によるアレルギー疾患と考えられてきたが、何とその原因は、皮膚表面にいる複数の細菌が起こす感染症の可能性があると発表されたのだ。
□「黄色ブドウ球菌」と「コリネバクテリウム」のコンボ攻撃でアトピー発症
アトピー性皮膚炎を起こすモデルマウスを使った実験で、マウスの皮膚に黄色ブドウ球菌を感染させると、アトピー性皮膚炎の強い炎症を引き起こした。また、コリネバクテリウムが皮膚表面で増えると、異常な免疫反応を起こす抗体を作り出すことがわかった。
研究グループは、アトピー性皮膚炎の発症は従来の「アレルギー反応による異常な免疫反応→皮膚表面の炎症」という図式ではなく、「黄色ブドウ球菌の急増→皮膚炎+コリネバクテリウムの急増→アレルギー反応」という図式だと突き止めた(※2)。
アトピー性皮膚炎の本当の原因は、黄色ブドウ球菌の急増だというのである。
□アトピー性皮膚炎に有効なのは殺菌ではなく皮膚バリア
「この憎き黄色ブドウ球菌とコリネバクテリウムを抗生物質で殺してしまえ!」とばかりに抗生物質を使うと、皮膚のほかの有用な細菌も殺してしまい、外敵や刺激、乾燥から皮膚を守るバリア機能を壊してしまう。するとますますアトピー性皮膚炎の症状を悪化させてしまい、逆効果だ。
アトピー性皮膚炎を発症しやすくしたマウスの実験では、発症前から皮膚の保湿や保護というバリア機能の低下が確認されている。
そこで、発症前に最初の症状が出て来やすい耳の部分にワセリンを塗って保湿し続けてみたところ、皮膚のバリア機能が改善して長期にわたってアトピー性皮膚炎の発症が抑えられたのだ!
□「ワセリン」による新たなアトピー性皮膚炎治療の選択肢
皮膚に刺激のある成分を取り除いた白色ワセリンや、さらに精製度の高いプロペト、サンホワイトなどのワセリン類は、アトピー性皮膚炎の方や皮膚への刺激に敏感な赤ちゃんにも安心して使える。
ワセリンは皮膚の角質層からの水分の蒸発を抑制し、水分を保持してくれる。角質層の水分量を保ってバリア機能が維持されると、皮膚への刺激に反応して炎症を起こす細胞が皮膚に集まってこないので、マウスではアトピー性皮膚炎の発症を長期にわたって防げた。
マウスでの実験結果だとしても、こんな簡単な方法でアトピーの発症が防げるとは驚きだ。
□アトピー性皮膚炎にはステロイドではなく黄色ブドウ球菌コントロール
「アトピー性皮膚炎患者の8割以上は黄色ブドウ球菌を保持する」という研究結果もある(※4)。
アトピー性皮膚炎の治療の中心は、現在のところステロイド軟こうで皮膚の炎症を抑える対処療法が中心である。しかし、発症に大きく関わる「黄色ブドウ球菌の菌量コントロール」を目標とした新たな治療法が開発されると、辛かったアトピー性皮膚炎の治療もシンプルでより穏やかなものになっていくことだろう。
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