2016年03月02日
赤ちゃんは、くすぐられると頭が良くなるって本当?
わきや足の裏に代表される「くすぐったさ」。友達や兄弟とくすぐり合って遊んだ経験は誰でもあるだろうが、脳の成長に大事な役割をしているのはご存じだろうか?
くすぐったさは快と不快が同居するフシギな感覚で、「快」はA10と呼ばれる神経系を刺激し、好き嫌いを判断する扁桃体(へんとうたい)の発達をうながす。好きなものを見て喜んだり、危ないものを避ける能力が身につく「くすぐり」は、赤ちゃんにとって遊びだけでなくトレーニングにもなっているのだ。
■笑いは好意の証
「くすぐったい」は、心地良いと感じる「快」と、イヤだと思う「不快」が同居した感覚で、メカニズムには解き明かされていない点が多い。くすぐられる=笑ってしまう、の印象が強いものの、これは皮膚に受ける刺激だけが原因ではなく、相手に対する好意の表れであり、精神的な要素が多く含まれた「感覚」なのだ。
赤ちゃんの年齢と、足の裏をくすぐられたときの反応を比較すると、
・生後2〜3ヶ月 … 足を引っ込める
・生後7〜8ヶ月 … 笑顔を見せる、手足をバタつかせる
で、足を引っ込めるのは「不快」と感じている証拠だ。ところが成長するにつれて笑顔をみせる、笑い声をあげるようになるのは「心地良い」と感じているからで、1歳以上になるとくすぐられる=笑うが定着するようになる。
くすぐられると笑ってしまうのはなぜか? 身をよじって逃げようとしながら笑い声をあげる理由は、不快と感じながらも「もっと続けて欲しい」の合図で、
・逃げようとする … 防衛本能
・笑う … くすぐりが「遊び」であることを理解している
が同時におこなわれている。とくに、相手が親や家族など親しいひとならコミュニケーションと判断し、それを楽しむようになる。もし笑わずに逃げるだけなら、くすぐっているひとを警戒している=「快」と感じていない証なので、自分がどれくらい好意的に見られているかのバロメーターとしても利用できる。
■くすぐりは、危機管理能力を発達させる
くすぐりは遊びとしてだけでなく、脳の成長にも大いに役立つ。A10と呼ばれる神経系が刺激され、感情や運動、危険を避ける能力が高まるのだ。
くすぐられて「快」と感じると、「やる気」の素であるドーパミンの分泌量が増え、A10神経系を刺激する。するとA10神経系につながっているほかの部分も刺激され、
・扁桃体(へんとうたい) … 好き嫌いを判断する
・海馬(かいば) … 記憶
・脳基底核(きていかく) … 運動
・側座核(そくざかく) … やる気や恐怖
が発達する。赤ちゃんにとって遊びに過ぎない「くすぐり」が、じつは脳のトレーニングにもなっているのだ。
なかでも重要なのは扁桃体で、ここには多くの情報が集まり、恐怖への「条件付け」がなされる部分なので、扁桃体が発達すれば危険を回避する能力も高まる。もしこの部分の働きが悪いと恐怖を感じることができなくなり、ムシでもガラスでも平気で触れてしまうようになる。条件付けが正しくおこなわれないので、頭のなかに「近寄ると危ないものリスト」が作れなくなってしまうのだ。
からだに触れられることは、乳幼児にとって自分のからだの構造を知る機会にもなるので、子どもへのスキンシップが足りないと感じているひとは、くすぐり遊びを取り入れてみると良いだろう。
・「くすぐったい」は、快と不快が同居した感覚
・くすぐられて笑うのは、相手に対する好意のあらわれ
・扁桃体や側座核などを刺激し、脳の発達をうながす
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