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2015年09月13日

山本宣治の生と死「武器なき斗い」

戦前の労働農民党の政治家で、農村運動や労働運動に大きな影響を与えながら、ファシスト反動勢力に

暗殺された山本宣治の伝記的映画「武器なき斗い」は、全体主義者が幅をきかす現代にあって今なお

大きな示唆を与える映画である。

時は、関東大震災のあとの混乱期、反動政府は治安維持法を無理やり通そうとしていた。

普通選挙法を大衆に与える代わりに、鞭で痛めつけようという汚いやりくちである。

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そのころ、京都大学で生物学の講師をしていた山本宣治(下元勉)は、性教育の先駆者というべき大胆かつユーモア

のある講義で生徒の人気を博していたが、頭の硬い大学の上層部からは白い目で見られていた。

政府は、将来の戦争準備のため、産めよ増やせよと子供をたくさんつくることを奨励していたが、金銭的な

援助があるわけでなく、生活に逼迫するものも多かった。

宣治は、大衆相手に産児制限や避妊の講義などを行っていたが、焼け石に水で、政治を変えないとどうにも

ならないことを痛感していた。

そんなとき、ソビエトから労働運動家が来日したことを皮切りに政府は活動家たちを弾圧し拷問にかけた。

宣治は、運動に関わったことで、大学を追放されるが、農村に対する大地主の搾取を目の当たりにして

積極的に運動にかかわり、政治家として立つことを決意する。

高級料亭を営む両親は、そんな宣治の生き方を暖かく見守るのだった。

宣治は、そんな闘争のさなか、小作人のさきや、共産党員本田(中谷一郎)などと知り合い戦いに一層身を

投じてゆく。そんな宣治も家庭に帰れば3人の子供の良き父親だった。

しかし、時代は金融恐慌による不況やそのごまかしのための侵略戦争と容赦なく進んでゆく。

昭和三年、普通選挙で労農党から立候補した宣治は、右翼や内務省の激しい妨害にもかかわらず代議士に

当選する。

宣治は、国会で特高警察の拷問を激しく糾弾し、政府は苦慮する。内務省はなんとか宣治を取り込もうとするが、断固拒絶

される。しかし内務大臣は恐ろしい報復を考えていた・・・

政治的映画が得意な山本薩夫の傑作で、イデオロギーや立場を超えて面白い映画である。

宣治は、ステレオタイプの左翼ではなく、人間味あふれる政治家で時にエロい話も得意で、大衆に好かれる

要素を持っていた。そんなところが当時の反動政府は危険視したのだ。

宣治は、最後七生義団の黒田某に暗殺されるのだが、黒田はえらい人に頼まれて宣治を殺したと証言している。

依頼したのはいったい誰であろうか。後年いかついやくざ役を演じる若き日の中谷一郎が共産党の活動家を

演じているのは意外である。また共産党幹部をベテラン宇野重吉が演じている。

ラストシーンがそれまで白黒の画面がカラーに変わるところが、時代が変わったことを示唆している。

だが、戦前でも相当規模の大衆運動や民主主義を求める運動があったのに、その後戦争へと染められて

いったのだ。

余談だが、宣治の両親の経営していた料亭花やしき浮舟園は、今も宇治で営業を続けている。


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タグ:山本宣治、
posted by ハヤテ at 13:38| 政治映画
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