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『All I Do』一曲目、「She Don't Care」です。
いきなりShe Doesn't Careでないのはおかしいのでは?と思いますよね。そこで、「スラングだよ、ビートルズも使っているよ」と言えたらとても英語通な感じがしてカッコいいわけです。おおー!ぜひ言ってみよう!だれかShe Doesn't Careじゃないなんて松井さん英語わかってないなーとか言っていたら、すかさず「スラングだよ、ビートルズも使ってるよ」と言おう!と待ち構えたい!「へー、で、ビートルズのなんて曲?」と訊き返されてアタマ真っ白になるというオチも付けたい!(「涙の乗車券」ですね)。
さてこのアルバム、演奏しているのは安全地帯でなく、海外の一流ミュージシャンなわけですが、クレジットをみてもほとんどわかりません。これは赤っ恥!と思って、いそいそとWikipediaなんぞを検索してみるのですが、ギターのPaul M. Jackson. Jr.さんがいきなり有名人で驚きます。もう見ないことにしようと思うくらい、わたくしわかってませんでした。そして、おそらくこの曲でキーボードを弾いている、アレンジャーにもクレジットされているChris Cameronさんも、セカンドアルバム『あこがれ』にもクレジットされているシンセのPaul Ellisさんも、聞いたことあるようなないような……?な程度でした。うーん、カーマイン・アピスとか、ニール・マーレイとか、そういうのが一流ミュージシャンっていうんじゃないの?とか思っているヘビメタ馬鹿には無縁な世界の一流ミュージシャンさんなのでしょう……(精一杯の強がり)。
左右に振られたシンセの音色から、ズトトントントン!と鋭いドラムが入り、ヘビーなギターとベースがリズムを刻みます。ハーモニクス出しまくりの、やけにカッコいいギターです。
この時点で、安全地帯とはアレンジ思想がかなり異なることが感じられます。はじめからそう思って聴くからそう聴こえるだけのことなのかもわかりませんが、バンド的なアソビが一切ありません。武沢さんはこう弾くだろうから、矢萩さんはこう重ねるだろうから、という長年苦楽を共にしてきた仲間ならではこそ可能であるような、メンバーを想定したバンド的なアレンジではなく、はじめにプロデューサーやディレクターの思想があり、そこにミュージシャンたちが自分の引き出しの中から合わせていく、というような、バンドありきの統一感でなく、アレンジ思想ありきの統一感が感じられるわけです。うーん、これは油断ならないぞ。安全地帯と似たような聴き方だと思わぬヤケドを負いそうです。ミュージシャンの名前をほとんど知らなかった時点ですでに瀕死の重傷を負っているという事実はすっかり棚に上げるとしても。
さて、するどいドラムを残し、ベースもギターも控えめに短音リフを弾きつつ、玉置さんの歌が入ります。そこで歌詞ですが……簡単にいえば、ぜんぜん気がないように見えるか、もしくはほんとうに気がない女性を嘆く歌ですね。いまいちこっちを見ていないような……実際見てないんでしょうけども(笑)、いわゆる当時の「アッシーくん」「メッシーくん」扱いされているんだけど、そうとは思わず、いや、半分気づいていながら、一縷の望みにかけているという、なんだか「こしゃくなTEL」以来のつらい恋をしている玉置さんが表現されているように思われます。
Bメロに入りまして、ギターとベースがガッガガガ!ンガッガー!(ズキュン!)といった、カタカナで書くとマヌケこの上ないけども、聴いてみると、並のボーカリストなら喰われかねないカッコよさでリズムを刻みます。しかしそこは玉置さん、「なにを なにを」と彼女の視線を追い、「知りたい」と情熱を吐き出し、鬼気迫る迫力でギターとベースに立ち向かいます。ある種の予定調和的なスリリングさがあった安全地帯と違い、ひとりひとりのミュージシャンが互いに争い、次の瞬間は誰が勝者になっているかわからないような怖さがあります。こ、これは戦いだ!まあ、玉置さんのアルバムなんですから、玉置さんを勝たせるにきまっているんで、エンジニアはその気になればギターやベースのフェーダーを下げるだけなんですけど(笑)、ギリギリまで緊張感を高めさせたようなアレンジとミックスになっています。この曲のアレンジとミックスはほんとうにカッコいいです。
さらに、同じリズム・リフでそのままサビに入るという、予想をかなり裏切る曲構成に驚かされます。シンセがオブリに入っているので、アレンジも一応は盛り上がるんですが、それでも基本線はBメロのままです。玉置さんの咆哮がサビの盛り上がりをほとんど一人で支えているという、と少し心配になる大胆な作戦に打って出ます。関ヶ原の島津撤退なみの豪胆さがないと、とてもこんなアレンジはできません。
ところで、彼女は何にふるえているんでしょうか…?それとも彼がふるえているのか?何かに夢中になっていて心をふるわせている彼女が(自分を差し置いて)一体何に夢中になっているのか知りたくて仕方がない、のか、それとも、彼女に微妙に冷たく、それとも生ぬるく扱われている自分が歯がゆくて、彼女にもっと近づきたくてしかたなくてふるえてしまっている自分の気持ちをわかってほしいよ!と言っているのか、どちらにしてもロクな将来像が描けそうもないカップルです(笑)。
ブラスで間奏の旋律を描き、曲は二番に入ります。一番とだいたい同じ調子で進みますし、話も当然進展してませんので(笑)、まあ、これは割愛してもいいでしょう。「つまさきのしぐさ」なんて、そんなの見えてるわけないじゃん!という冷静なツッコミも野暮な、安全地帯的な松井ワールドがここにちらりと見えるのは印象的ですね。
特筆すべきはサビの終りから間奏に入る、そのアレンジです。「ハ〜ハ〜ヤッ!」という玉置さんの叫びから、シンセサックスでベースとドラムで短く、「ダダダダダダ!ダンダン!」と激しく変則的に畳みかけ、ルーズだけども速いサックスソロを挟んでこれまでのリズムをいったんリセットします。これはカッコいい!うーむ、こういうこと思いつくのは誰なんでしょう。玉置さんはあまりミュージシャンと話さなかったようですから、星さんや金子さんが主導したんでしょうけども、この二人はつとめて安全地帯の色を消そうとしたに違いないのです。
そして曲はサビを繰り返しつつ、フェードアウトしていきます。ここで気づくのですが。「She Don't Care」って、ヤマビコいれてますけど、基本的には玉置さんの声を一回だけで歌ってますよね、ここの歌詞を。普通だったらハモリとか入れそうなところなのに。これにより、玉置さんの声だけで勝負!という意気込みがおそろしく強く感じられるアレンジになっているように思えるわけです。これは……島津軍どころじゃないかもわかりません。呂布だけで勝負!なみの個人戦(周りはもちろん個人戦のつもりはありませんけど、ひとりだけ段違いに強いのでそう見える)です。
一曲目からこんなんですから、このアルバム、先が思いやられます(音楽的にはいい意味で、わたくしのアタマ的には悪い意味で)。そしてわたくし、一年も記事を書いていなかったことに気づき戦慄しておりますので(笑)、なるべくソロソロとリハビリしていきたいなーなんて思っているわけであります。
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このアルバムは忘れもしない中二(厨二病)の熱い暑い夏休みに発売されました。新年度の剣道部キャプテンに就任した頃、部活から帰って買ったばかりのカセットテープの再生ボタンを押すと、
パッ パッーーラ パッ パッ
どぅとぅたんたんたん
泣きまねに見えるよで始まる聴いたことのない感じの曲。ロンドンで撮影をされたビデオも私は買えませんでしたので、レンタルをダビングして観ました!ジュリエットのヒロインのような女性がオールアイドウのこのアルバムビデオで主人公でしょう。
シードンケアーは、イギリスの河の船の上でパフォーマンスをしてたり、ホンコンの曲では女性を捜し街中を走る姿が良かったです。
1993冬にあった日清パワーステーションで、アメリカで買ってきたばかりといわれたマーチンで、
ギター1本のシードンケアー!最高でした。半音下げていて、低音が腹まで響いてきたのを昨日のように思い出します。あと、あの頃はシャウトが物凄かった。ジャストか、どこでも御自分のタイミングで玉置さんはシャウトされるので自然児または野生人(笑)
余談ですが、そのオールアイドウのビデオの表紙のジャケットで玉置さんが口元をタートルネックで隠してるのを、たぶんですがそれから某広告写真でだいぶ似てるのを街でよく見かけました。そうです、男の悩み関連だったような(笑)
このオールアイドウのアルバムは
のちに中古CDで買ったのですが、引っ越し時になくしてしまい、今でも熱い夏休みに買ったカセットテープを聴きながらこれを書いてます。カセットテープの音もハイハットはあまり聞こえませんが、なんていうかCDやレコードとも少し違って音の良し悪しよりも持ち運びや利便性でしょうか。
失礼しますた!
『安全地帯II』はいいですよー、いや、全部いいんですけど(笑)、とくにしばらく新鮮なまま楽しめると思います。
この曲ですが、なんと的確で端的なコメントを!「ただ単に相手にされていないだけの男」とは!そうなんですよ、中学校に入ったら環境の変化についていけず、いつまでも子ども会に顔を出して内心ウザがられる中学生みたいな情けなさがあります。当時は、というか今もですかね、こんな感じの、彼氏きどりのお兄さんがわりといたものです。
おっしゃるように、アレンジのカッコよさと歌詞の情けなさが合ってないんですが、歌詞に合わせてアレンジを情けなくすると、それはもう無残な曲になります。80年代後半の、あの、情けないものもムリヤリ輝かせる明るさがこの曲を救っている……いや、歌詞をカッコよくすればいいじゃん、ですよねー。でもそうすると、単に色男の余裕ソングになりますから、玉置さんの本領である「じれったい」みたいな焦燥感はなくなっちゃうわけです。難しいですね。
更新してある!うれしい!
戦慄しないで落ち着いてください笑
このCD、ちょうどこの前注文しました!
あ!安全地帯Uも買いました!笑
おすすめありがとうございます!
この曲は、YouTubeで観てすごくカッコいいなと思ってたんです!好きな曲です!
歌詞の解説、ちょっと笑いました。
歌がカッコいいから主人公の男性もイケてる人なのかなって思ってたら、結構かわいそうっていうか、ただ単に相手にされてないだけの人なんですね。しかも2番でも話が進展してないってアホすぎる笑。でも確かに、曲のカッコよさに騙されてたけど、結局そういう歌ですよね。こうやって冷静に考えたら、意外に曲と歌詞が合ってなくないですか?笑。いや、合ってるのかな?笑
ソロと安全地帯では、歌い方やアレンジなど、区別してあるし、音楽って色々考えて作ってあるんですね。すごい!
こうやって読むと、聴くのが楽しみになります(*´︶`*)♡