2020年04月12日
Check On Myself
価格:2,161円 |
『All I Do』八曲目、「Check On Myself」です。
前曲「All I Do」に続き、Chris Cameronさんのアレンジです。遠くからバスドラ・スネア・ハイハットがやってきて、最大音量になったところでガツガツとベースが入り、ホーン・ギター・シンセがそれぞれ勝手に弾きまくってるかのようなワチャワチャサウンドになっています。前曲がシンセだらけだったのに対して、こちらは生音が響きまくりですね。それなのに安全地帯的な整然さはまるで見当たりません。ギターが武沢さんを思わせるような短音リフと、せいぜい2~3弦で弾く鋭いクリーントーンのフレーズになっていてわたしには聴きやすいんですが、いかんせん他の楽器が安全地帯からほど遠いためその対比がやけに色濃く、やはり玉置ソロなんだと強く思わされます。
後年、玉置さんは安全地帯のメンバーを加えたソロ活動を展開していき、ツアーメンバーもほぼ安全地帯化していきます。『ニセモノ』も武沢さん除く安全地帯のメンバーでレコーディングしたにもかかわらず、矢萩さんのギター以外全部消して玉置さんが演奏するというとんでもないチャブ台返しをかましたにもかかわらず、また『ワインレッドの心』では武沢さんの代わりに安藤さと子さんが入っていただけでほぼ安全地帯が揃うようになります。ここまでくるともう玉置さんソロの意味はそんなになくなっていきますね。まあ、メンバーがソロだと遠慮してアレンジにそんなに口を出さないとかはあるかもわかりませんけど。ともかく、この時期の曲は玉置さんソロ色が全開になっている、つまり安全地帯の匂いが一番薄くなっている時期の玉置さんを楽しめる曲だというべきでしょう。
さて、この曲、check on myselfということばに意味があるのかないのか……たぶん玉置さんのホニャホニャ英語のデモテープを聴いて、松井さんが響きの近い単語を選んだだけなんでしょうけども、それを意味深な歌詞にしてしまうのが神業級に上手なんですね。最初のAメロはチャックを下ろしてナニをチェックするかのようなちょっとお茶目な物語になっています。
好きなのにへんなのさ……ナニが?あーつまりアレですか、うまく機能しないとかですか。うーむそれは深刻だ……というのがまるでギャグにならないんですよ。たぶん本当にそうなのです。赤裸々すぎて茶化しようがありません。
またベースの遠慮ないガタガタ具合(ズレているわけではありません、サウンドの形容です)とホーンのショッキングな高音フレーズが、ヤバいヤバい……ホレしっかりせい!ホラ!という気持ちをこれでもかと掻き立ててくれます。ここで、最初の遠くからやってくるドラムの演出意図がわかります。「ん?あり?これは?もしかして……あああああーヤバいヤバいヤバいいいいい!!!!」という、非常に情けなくも切実な心情の表現なんです。クリスさん、あんた日本語わかるでしょ(笑)、と、わたくしすっかり前言を翻す勢いでクリスさんに参ってしまいそうです。
チェックアウトタイムまでバラ色に直してよ、チェックメイトすむまで、チェックの媚薬飲ませて……というのも、すべてナニの不調を暗示しているというべきか明示しているというべきか、スピード感ありすぎて同情するヒマもありません(笑)。こんな曲がかつてあったでしょうか!ナニのときにナニがデンジャラスな様子を歌った曲というだけでも前代未聞ですが、その焦燥感そのままに突っ走り続けるスピードナンバーなんて、ほかには聴いたことがありません、というか誰も思いつかないでしょう。聴くほうも、目の前を何かが走り抜けていったなあ、いまのは何だったんだろう、くらいの感覚でしかないわけです。これはすごい。聴かせる気あるんですかと疑わしくなるほどです。
サビ、といえるかどうか、ともかく曲調が変わり、熱い右目・悪い右手の箇所にさしかかります。どうしてどっちも右なんだ、と一瞬思いますが、それは立ち位置もしくは座り位置・寝位置のせいでしょう。つまり彼女を右方面にとらえているのです。しかし、左目や左手はcheckに忙しく、機能回復・保全に余念がありません。現実にそんなコメディーが可能かといったら野暮になるでしょう。つまりこれは比喩で、それくらいてんてこ舞いになっているわけです。「こわれた場所」はこれまた意味深です。ズバリ、ナニのことを指しているのか、それとも気まずくなりかけたその場のことなのか……こんな調子では抱きしめかたも忘れてしまいそうなくらい、いまは走っているフリしながら実は長いピットイン中なわけです。マシンに乗り込んでハンドル握って「ブオンブオン!エンジンオーケー、130R全速だ、出口でミハエルをかわす」とかスポンサー向けの無線にブツブツ言いながら、実はバーストしたタイヤの交換中、という非常に欺瞞に満ちた光景なのです。
ここで曲が一転スローになり、「やさしくして……〇×◆……」と言葉にならないつぶやきが入ります。歌詞カードを見ると「Honey」ですが、どう聴いてもそうは聴こえません。これは、唇を吸われて声にならないとかなのでしょう、つまり、もうゴマかすのがきわめて困難になったことを意味します。
そして曲はまたAメロに戻り、またcheck on myselfです。でもチェックポイントをかわすそうです。ん?何だろう?つまり、肝心かなめのポイントをあえて通過しない、ということでしょうか。オリエンテーリングだったら失格ですが、もちろんこの場合も失格でしょう(笑)。チェックインはおまかせって、チェックアウトでなくて?あ、わかった!まだチェックインしてなかったわけだ!これからなんだけど、自分はチェックに忙しいからお任せしちゃうわけですね。それ、あんまりカッコよくないような、というか、もちろんそんな状況に至ってるのは非常にカッコ悪いんですが、事情を知らない彼女からみても違和感ある所業でしょう。武沢さん的なギターと、スネアだけのドラム、つまり低音部を抜いたサウンドでAMAZONSが「チェック……チェック……」と歌います。まるで平静を装ってエントランスを歩くかのように。しかしその平静も長くは続かず、遠慮なくベースが躍動し、ドラムもバスドラをバンバン踏みます。つまり、ヤバさは何も変わっていないのです。後奏は、シンセの素っ頓狂な効果音フレーズを交えながら、一分近くに及び、AMAZONSの「チェック!」が、危機の去っていないことを知らせるアラートのように響き続けます。どうなっちゃうわけこれ?もちろん、この後の物語など推して知るべしなんですが、描かれていません。描かなくていいのです。表現したかったのは物語の顛末ではなく、このときのアセリ具合・危機感なわけですから。
あー、かなりムリして書いたつもりですが、実はノリノリで書いたのかもしれません。松井さんの歌詞が、例によって全然違うことを意図していたということが判明したら、たんにわたしが下品な妄想でひとり盛り上がっていただけだと判明するわけですから(笑)。
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シケインなんて、かなり久しぶりに見た言葉です(笑)。130Rとかホームストレートとか、スズカを知らないとなんのことかわからないですよね。
何だかよく解らないまま、チェック!チェック!と続き、解らないから後回しにしようと次の曲に行ってました。 何て大変な状況の曲なんでしょう!場数を踏んでいても、たまにはこういう事も有るのでしょう(笑)。
ニセ無線で130Rを上手くやり過ごしたように見せても、実際にシケインで縁石乗り上げてストップしてしまったら、彼女に「フン!」と去られそうです。チェックは大事です!
それにしても、こんな曲が入ってるなんて面白いですねぇ。ソロアルバムも順に聴けば良かったです。