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『All I Do』十一曲目、「I'll Belong....」です。
Chris Cameronさんアレンジのポップバラードです。たぶんですが、このアルバムで二番三番人気くらいの有名曲でしょう。といっても、一番人気の「All I Do」がぶっちぎりすぎて、あとはマイナー曲という扱いですけども……。
さてアレンジですが……シンセがボワボワとした高い音低い音の二種類と、リンリンとしたボーカルラインに近いメロディーを奏でているやつの、計三種……ですね。これだけでもライブで再現するのはふつうには不可能ですから、フットペダルで何とかするかもう一人雇うか、もしくはどれかひとつを打ち込みにするほかありません。安全地帯みたいにシンセのほかにピアニストもいるステージならもちろん可能ですけど、そんな豪華な演奏陣を誰もが用意できるわけではないのに、さらっとこういうアレンジをしてくるから怖いです。ライブのことは後から考えりゃいいや!どうぜそのときは「All I Do」とかも演るんだろうし、シンセいっぱいあるでしょ!という非常にバブリーな思考で組み立てられたに違いありません。
そして、六土さんとは明らかに趣向の違う高音部を駆使したベースと、やたら「シュコーン!」と響くスネア(シンセパッドでしょうけども、それにしても響きすぎです。リムショットの音を加工したという可能性もなくはないですが)を伴うドラムですね。わたしの聴く限りギターは聴こえません。安全地帯とは完全に異なる傾向の音であることは、こんなアルバム終了間際にわざわざ強調して書かなくてもいいんですけども(笑)、それにしても安全地帯臭さがまるでありません。
それなのに、歌詞はどこか安全地帯っぽいのです。もちろん書いたのは同じ松井さんなんですけども、ここまでの本アルバム収録曲は安全地帯を完全に脱色したとしか思えない弾けっぷりでしたから、この曲はあえて安全地帯の色を入れようとしたのかもと思えてきます。安全地帯で「I'll Belong」なんて英語を使うことは考えにくいですから、そこだけは毛色を変えてあるんでしょうけども、わたしが言及したいのは物語の傾向なのです。安全地帯っぽい、正確には「悲しみにさよなら」っぽい、というべきでしょうか。「もう泣かなくていいんだよ」だった「悲しみにさよなら」の続きとして、「もう泣かせないからね」の段階に達したように思えます。こういう話になると、本ブログはやたらめったら石原さんの話をしてきたわけなのですが、本当に石原さんとあの後うまくいっていたら、いまごろはこういう歌が自然に作られていたんじゃないか、という、パラレルワールドの歌に聴こえてくるのです。
「I'll Belong」、ぼくはもう君のモノになることにするよ、という意味でしょうか。松井さんの真意は定かではありませんが、「I'll Belong to you」の「to you」をあえて書かなかったのは、たんに歌詞としてto youをいれるスキマがなかったからなのか、to youを言ってしまうことによって「君の」という所属先を決定することを若干ためらう心情を表現したのか……たぶん前者でしょうけども、Belongには後者の解釈を許すような、それくらい強い意味が込められているように思えます。「....」と、通常三点リーダを使うであろう箇所が四点になっているのも、非常に思わせぶりに思えてきてなりません。単にピリオドを付け加えただけかもわかりませんが、それはそれで思わせぶりです。そういう邪推をすると、この曲を結婚式で歌うのはいささか危険な気がしなくもありませんが、たぶんわたくしがアタマのおかしいことを言っているだけでしょうから、大丈夫です(笑)。
いつまでも、どこまでも、どんなときでも、きみだけとふたりで、悲しみに、さみしさにGoodbyeという非常に熱烈でやさしい愛の決意が、AMAZONSのコーラスを伴ったやさしく明るいバラードで歌われるのです。「悲しみにさよなら」のような、前後が異常なテンションで暗めの悩ましい愛を語る曲ばかりだったからこそ目立ったやさしさではありませんが、この曲もたいがいやさしいです。80年代安全地帯・玉置浩二平和な感じのラブソングランキングを作るとすれば、TOP3に入るでしょう。90年代・00年代玉置浩二ソロをランキングに入れてしまうともちろんランク外も覚悟しなくてはなりませんが(笑)。
さて、「傷ついたこころ」にふれずにいた、知りすぎていくのをおそれていた、という描写からは、とても不穏なにおいを感じます。結婚式でこの歌を歌うというひとはここの箇所をどのような心境でお歌いになるのか、非常に気になります。いや、よくわかりますよ、訊いたっていまさらどうにかなるもんじゃないですし、無駄どころか有害な結果を引き起こす可能性があるのですから、そんな結婚式前のセンシティブな時期にわざわざ波風立てなくてもいいと、わたくしもおおいに共感するところであります。どうせ大したことじゃないし(笑)。でも、もしかして大したことだったら、たとえば、かつて彼女の実家の庭から石油が噴出し、とんでもない国際利権ゴロがウロウロし始めてしまい当時まだ幼かった彼女は純真さを大いに弄ばれて傷ついた経験があり、いまその男は塀の中だがいつまた油田をねらってどんな手を使ってくるか分かったものじゃない、なんて事態が彼女の背後で動いている気配を感じるようでしたら、手ひどい後難を被る可能性だってあるのですから、思い切って訊いてみてもいいかもしれませんけども。
それにしても、同じメロディーで歌われる「その涙はいま最後のひとつぶ」「二度と泣かせない」の、凄まじさといったら!玉置さんの恋愛経歴を知っていたらありえない説得力です。ほんとうに、もう泣かせるようなことはしないんだ!もう泣かなくていいんだ!と信じてしまいそうです。「悲しみにさよなら」では、「泣かないで」と要請されていたに過ぎませんでしたが、今回はすさまじい執行力を感じます。おっと!覚えてるかい?言ったろ?もう泣かせないってね?さあおいでハニーいいものを見せてあげよう、くらいのセリフが毎晩出てきそうな勢いです。最後に半音上がった箇所なんて、ほんとうにもうさみしいことや悲しいことはぜんぶ終わりなんだ!と信じさせるやさしさと力強さに満ち溢れています。ほんとうに悲しみにGoodbyeです。よかった石原さん!と、全力で勘違いしてしまいそうです(笑)。
曲はまたサビに戻りまして、フェードアウトしていきます。大円団、めでたしめでたしのはずなんですが、これがどこかせつないのはなぜでしょうか。名曲が終わってしまうせつなさ?いや、それだったら玉置さんの曲がフェードアウトで終わるたびに感じていなくてはなりません。どこまでもふたりで、いつまでもふたりで、というのが、けっして叶わないことを、わたしたちが知ってしまっているからなのでしょう。もちろん、玉置さんの私生活とは切り離して考えてですよ(笑)。死が二人をわかつまで……どんなに願ってもこれが最長なのだと、わたしたちはすでに経験的に知ってしまっているからなのでしょう。若いころには、ことばの上でだけ知っていたけども、けっしてわかってはいなかったころに、恋人にいつまでも一緒にいようねと言っていた、あの頃をふと思い出す、そんなせつなさなのです。
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