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安全地帯『安全地帯ライブ ENDLESS』十四曲目(Disc2一曲目)、「小さい秋みつけた」です。
いわずと知れた有名童謡、サトウハチロー作詞、中田喜直作曲「ちいさい秋みつけた」で、最初の発表は1955(昭和30年)のようです。玉置さんも生まれてませんね。ただ、玉置さんが生まれたのは1958年ですので、そんなに前のことでもありません。玉置さんの幼少の頃はまだ10年やそこら前の曲って感じだったでしょう。そうですね……いまの若い人(20代中盤くらい)からみた「だんご三兄弟」(1999年)くらいの古さだといえばその感覚が想像できるでしょうか。わたしら氷河期世代からみたら「おもちゃのチャチャチャ」(1963年)や「ピンポンパン体操」(1971年)、「およげたいやきくん」(1975年)くらいですね。子どもの頃にはぜんぜん古い曲なんて思った記憶がないですね。玉置さんにとっても「ちいさい秋みつけた」はそれくらい新しい曲だったのです。
大先輩のN.Noguchiさんのサイトによりますと、「ワインレッドの心」は玉置さんがこの曲のイメージをもとに作ったとのことです。さもありなん!「ワインレッドの心」は、当時あまりに売れない安全地帯が陽水さんから曲提供を受けることを玉置さんが断り、悩んで悩んで作り上げた曲なのです。こういうときに自分が信じるいい曲、好きな曲にイメージを求めることは人間の心理として起こりそうなことでしょう。
また、さまざまな音源販売サイト(もちろんAmazonとかでも)に転載されているCDジャーナルによれば、「童謡の「小さい秋みつけた」が収録。ボーカルの玉置浩二は当時`この曲を超えたい`と言っていたらしい」と記されています。あの「ワインレッドの心」をしても超えたという感覚がなかったのでしょう。その後、玉置さんは「ゆびきり」「夢のポケット」「氷点」「大きな"いちょう"の木の下で」など童謡チックな歌をリリースしていますが、「超えた」感覚はあったのでしょうか。なんとなく、まだ超えられないと思って、さらにいい曲を作りたいと思っている玉置さんであってほしいと思わされますね。
さて、そんな目標とする「ちいさい秋みつけた」を、玉置さんはアコギをもって弾き語りします(映像があるわけじゃないので、もしかしたらギタリストが横で弾いているなんてこともなきにしもあらずですが……当時会場にいた人でないとわかりませんね)。ポロン……「ぬふっ」「キャハハ(観客の笑い声)」ポロヒラリ〜(ハーモニクス)「玉置さーん」「いくよっ!」という不思議なやり取りがかわされます。
うーんこれはですね……いままで持っていたエレキギターからアコギに持ち替えてちょっと弾いてみたら、ほんの若干チューニングがズレていたんじゃないかと思います。「ありゃ」とか「まあしょうがねえな」くらいの気持ちで「ぬふっ」という声が漏れたか(あとのハーモニクスはチューニングを確かめるもの)、もしくはたんなる咳払い程度の「ぬふっ」だったのでしょう。
そして玉置さんが朗々と切々と歌い始めます。いつしか観客も一緒に……いやたぶんほかの曲も一緒に歌っているんだと思うんですが、なにせバンドサウンドだとかき消されて聴こえないのです。この曲は玉置さんのボーカルとアコギだけですので観客の歌もよく拾っています。当時の観客の皆さん、お上手ですね。
めかくし鬼さん手の鳴るほうへ……「めー」の大きさ、「ほう」の持ち上げ方、こういう一つひとつが、なんでこう歌おうと思ったんだろうと不思議なんですが、でもこう歌われるとその説得力に息をのみます。こういう誰もが知っている歌だと比較ができますからその巧さが際立ちますね。いっそ童謡メドレーを10分くらいやってほしいのですが、あっさり終わります。
このアルバムを手に取ったとき、曲目リストに「小さい秋みつけた」を発見して、え?と思いました。そういう名前の曲は知っているけども……これはほんとうにあの「ちいさい秋みつけた」なのだろうか?それともアルバムに収録されていないだけで安全地帯に「小さい秋みつけた」という曲があってこのライブアルバムに収録されているのだろうか?それは中身を聴くまでわからなかったのです。当時試聴なんてありませんでしたしね。あったのかもしれませんが、少なくともわたし個人の経験内では見たことはありませんでした。
なんと札幌にはタワーレコード日本上陸の前に、なぜかタワーレコードというレコード屋さんがすでにありました。どうも個人の方がやっていたようなのですが、その後本家タワーレコードに買収されて、めでたくタワーレコード日本一号店となったそうなのです。そうなのか!全然知らなかった!わたくし当時はちょっと幼少すぎました。わたしがタワーレコードに出入りするようになったころには、小さなビルの四階とかにあったのですが、それがある日移転してドカンと大きなフロアの、私たちがよく知るタワーレコードらしいレコード屋さんになったのです。その頃にはもちろん試聴コーナーはあったと思うのですが、移転前にはなかった気がするなあ……。ここはオサリバンの「クレア」とかを求めて買いに行ったなつかしいタワーレコードなのです。いや、もちろんメタリカのブラックアルバムとかも求めに行っているのですが、ここは雰囲気的にオサリバンだろう、などと考え、メタリカとか日本版発売前のハロウィン『ピンクバブルズ・ゴー・エイプ』などをうひょーとかいって買った事実を意図的に隠しておりました!(笑)。事実の編集失礼いたしました。
さて試聴もなしにトライ、再生開始数十分後に「ちいさい秋みつけた」だとわかったのですが、その後玉置さんとこの曲の関係を知りその後の童謡チックないくつかの作品にその面影をみて……ということは何年もかけて行ってきたのでした。情報時代というか、口コミ大公開大放言時代である現代では考えられないゆっくりした過程です。逆にいうとこれ以外の知り方吸収の仕方を知らないのでこれらをその気になれば二時間以内に経ることのできる現代には驚きです。人間の頭のほうがついていかないんじゃないのか……?だからメガデスのムステインがメタリカ時代に練習に犬を連れて行ったとかジェイムズを殴ったとか、そういうどうでもいい記事は普段からあんまり読まないことにしております。今回は特別くだらない情報を探したらまんまと目に入ったのがこれです(笑)。
わたくしこの『ENDLESS』はメタルテープTDK MA110に録音して持ちあるっていました。KENWOODのウオーキングステレオと、部屋にあったバブルコンポを行ったり来たり、一日に何周したのか……カセットテープってタフですね。CDと違って一枚目二枚目をぶっ通しで流しておけるので重宝していました。「風」が終わってしばらくしてからガシャンとオートリバースがかかりこの「小さい秋みつけた」が流れるのです。何度も何度も玉置さんの「小さい秋みつけた」を聴き、冬でも春でも夏でもすっかり秋の気分、玉置さんの表現力にかかればオールシーズン秋です。すましたお耳に口笛とモズの声がかすかにしみてくるのです。いま気づきましたが、この「すました」って耳を澄ます、つまり注意力を高くして耳に入ってくる音を漏れなく聴こうとすることですね。わたくしいままで「おすましさん」とかの冷静な様子のことかと思っていました。耳が冷静ってなんだよ。ずっとずっと勘違いしたままでした。これでは「目隠しおじさん」とか危ない歌を歌っている人を笑えません。
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